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CREW's VOICE

北山対談vol.2 宮本英実さん


北山剛ゲスト対談 vol.2 宮本英実さん

ソーシャルデザインワークス代表の北山剛が、いわきで活動する中で出会った魅力的な方やキーパーソンに話を聞く対談企画「Kitayama’s talk session」。第2回目は、いわき市の地域活性プロジェクトMUSUBUの代表を務め、現在はニューヨークで活動の場を広げていらっしゃる宮本英実さん。キャリア形成と多様性のお話。国や文化を超えて見えてきたビジョンとは。


北山 ニューヨークでのご活躍、SNSなどでもよく目にしてましたよ。ニューヨークというと、本当に人種の坩堝で、世界で最も多様性が根付いた都市じゃないかと思いますが、実際に住んでみて感じることってありますか?

宮本 そうですね、多様であることが意識しなくても当たり前になっているっていう印象ですね。例えば、友だちと食事とかをすると、友人を紹介し合ったりするんですけど、生まれた場所も人種も国籍もバラバラの人たちが集まる。電車の中でも、街でも、どこでも。

北山 出自もそうですが、自分の考えや主張を普通にオープンにしている感覚がいいですね。日本ってどちらかというとアンタッチャブルな空気になってしまうし、そうでなくても中途半端な、曖昧なところで話をしゅっと閉じてしまいます。

宮本 そうなんです。本当にシンプルに「みんな違っていることが当たり前」という意識が共有されてる。ニューヨークは特に色々な人種、宗教の人たちがいますから、その多様な人たちの多様なあり方が常に日常の中にあるんです。

北山 ぼくらの言葉だと「ごちゃまぜ」の状態があるということですね。違いがあるから、自分なりに考えるきっかけにもなるし、お互い主張がしやすくなる。

宮本 はい、むしろ主張しないとそこに存在しないことになりますから。例えば日本なら髪を金色にしてそれが個性だ、なんてことが起こり得ますけど、それだけで個性だなんてことはありません。自分の考えを主張することが常に求められます。

北山 ブルックリンの町はどうですか? 住んでいて町の変化を感じることはありますか? 

宮本 そうですね、やっぱり変化のスピードは速いです。家賃の安いところには、移民やアーティストなどマイノリティとされる人たちが集まってきて、面白い場所などができると、今度はそこに商店などができて活気が出てくる。そこに不動産価値が生まれ、周りに住宅が整備され、地価が上がってくると、もともといた人は居られなくなりますから、今度はまた新しい土地に向かっていく。そんな風に町の変化のスピードがはっきりと感じられますね。

北山 宮本さんにとって、お気に入りの町ってどういう特徴がありますか?

宮本 大きな観光地っぽいところが1カ所あるような場所ではなくて、行きたい場所が複数あるような町が好きですね。おいしいカレー屋に寄って、公園に行ってカフェに行く、みたいな。町のなかに回遊が生まれるようなところが好きです。例えば、大きなショッピングモールって便利だけど、そのなかですべての用事が済んでしまうので、実はそんなに興味が湧かないんです。

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北山 なるほど、1カ所だけじゃ地域は魅力的にならないってことですよね。実は今日、スクエアの2階で、いわきで就労移行支援に関わる人たちのミーティングが行われるんですけど、それも構造は同じで、1カ所だけが突出するんじゃなく、地域全体の力を底上げしようっていうことなんです。

宮本 私もそういうのはもっとやったほうがいいと思っていて、逆に言えば、いろんな業界がそれをやらざるを得なくなってきていると思います。みんなで盛り上がらないと意味がないと思うんです。

北山 同感ですね。結局、ぼくらがなぜ事業を行うかといったら、障がいを持った方、そしてそのご家族が暮らしやすい地域を作ることなんです。だから1カ所だけがうまくいっていてもしょうがないというか。事業所というのはそれぞれ得意なことが違います。こんな障害の場合はここだなとか、こういう状態ならあそこのこういうカリキュラムが役に立つかなとか、他の事業所の取り組みを知っておかないと地域全体の底上げにならないんですよ。ぼくもあまり「一人勝ち」には魅力を感じないなあ。

宮本 そうですね、本当にそう思います。まずはそれぞれの個を知る。そのあとに連携がある。日本で言うと連携って「平均化される」傾向もあると思うんですけど、違いが明確に分かってないと連携なんてできませんし。だから、そういう連携のできる思考回路を持つ人たちを、どれだけ地域の中に増やしていけるかが、より地域を作るために必要なことかもしれません。

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北山 そう。つまり地域を育てていくには、人を育てていかないといけないってこと。

宮本 私も、震災後に地元であるいわきに帰ってきて活動する中で、教育って大事だなって強く思うようになりました。そう思っているときに、「Good Try Japan」という、中高生向けのキャリア教育プログラムを知って、今そのプログラムのお手伝いもさせてもらってるんです。

北山 おお、宮本さんがで教育プログラムに関わってるわけですね?

宮本 はい。アメリカに来た子どもたちと一緒に、いろんな企業を回って、そこで働いている日本人に話を聞いたり、学びの機会を提供するプログラムです。プログラムの舞台はシリコンバレーなんですが、シリコンバレーって、伝統的に失敗を良しとする場所なんです。あそこでは、みんな同じことを言わなければいけない、なんてことは絶対に起きません。何を言っても否定されないし、失敗しても「それはチャレンジの証だ、次また頑張ろう」と言ってくれる。そういう場所に身を置くという経験は、なかなか国内で積むことはできない気がします。

北山 やっぱり経験なんですよね。親になって教育に対する考えが変わって、ぼくは限られた選択肢のなかでしか選べなかったけれど、娘にはもっと多様な選択の中から選び取った経験をして欲しい。大事なのは小中学校生くらいの年ごろに突飛な経験をすることだと思っていて、でも国内にはそういう場所がありませんものね。いい経験だなあ。ぼくも小学校くらいのときにそれを感じたかったなあ。

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宮本 それに、普段学校の友だちには言えないような、こんなことをしてみたいとか、こんなことが自分の夢なんだとか、そういう話をちゃんと聞いてくれる仲間を持つってことも大きいと思います。日本だと素晴らしい才能も「お前なんてできっこない」とか「はやく進学先を決めろ」なんてことを言われちゃいますからね。そういう経験を通して「実はこれがしたかったんだ」って、心の本音の部分を語れるようになるんです。

北山 そういうのが小さい時からできるのがいいんだね。

宮本 日本って「同じであること」が当たり前とされていて、「違うことはダメ」みたいなところがありますよね。でもそれだと突出した才能もきれいに角が取れて形を整えられてしまう。だから結局最後は「大人に対する教育」も必要になってくるなと。今の子どもたちがそういう環境に慣れて大人になったときに、今よりもっとマイノリティが生きやすくなってたらいいなって。

北山 子どもが変わると親も変わるんですよね。「ごちゃまぜ」のイベントも、子どもたちだけではなく保護者もいらっしゃいます。子どもが家では見せない言動や表情を見て、親も大きな刺激を受けます。ごちゃまぜイベントでは、子どもたちは大人よりもはるかに上手に障がいのある方と接しています。人間は本来、障がいなんて気にせず交流し合っている。そのことを、子どもを通じて親も学んでいくんです。

宮本 そうですね、そういうことを地道に繰り返す中で、20年とか30年とか経ったときに、私たちには想像もできないような社会ができあがっていくんだと思います。そのためにも、私もまずはニューヨークでもっと貪欲にいろんなことを学んで、それを持って帰ってきたいですね。

北山 心強いね。その時はぜひ宮本さんをゲストに呼んで、子どもたちにも話をしてもらいたいですね。ぜひまたアメリカの話を聞かせて下さい。これからもいわきから応援しています。今後も頑張って下さい。

(聞き手・構成/小松理虔)

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代表|北山剛
代表|北山剛
NPO法人ソーシャルデザインワークス代表理事。1979年福島県いわき市生まれ。東北大学大学院情報科学研究科修了。元株式会社LITALICO創業メンバー。「諦めのない社会を創る」というビジョンを掲げ、障害のある方や生きにくさを抱える方々に向けた自立訓練・就労支援サービス事業を軸に多様なごちゃまぜの世界観を地域の方々と共創し、全国の地方都市展開を目指している。