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福島の障害者就労の現状とネットワークが創り出すもの

全国障害者就労支援ローカルネットワーク研修会in福島 特別収録

ここでは、8月初旬、ソーシャルスクエア内郷で開かれた「全国障害者就労支援ローカルネットワーク研修会in福島」において、全国で就労支援に関わる方々からお話頂いた内容を抜粋してお送り致します。それぞれの地域で就労支援に関わる人たちの生の声をご覧下さい。

 

福島の障害者就労の現状とネットワークが創り出すもの

鈴木康弘さん

福島就業支援ネットワーク 事務局長(福島県)

 

まず、福島県の就業の現状からお話ししたいと思います。まずは総人口ですが、福島の総人口は震災の影響もあり平成22年から比べると極端に減ってきています。福島県と同規模、人口200万人規模の栃木や群馬も同じように人口は減っていますが、福島県の減少スピードは他県の3倍くらいになっています。一方、有効求人倍率は増えていて、働きたいという意欲のある人は逆に減っている。つまり仕事量はあるけれど働きたいと思っている人は減っている、というのが現状です。

仕事はあって、働きたいという人が少ないのだから、障害者雇用は伸びると考えても良さそうですが、実際にはそうではありません。具体的に見ると、福島の場合、中小企業の雇用率が伸びていません。大手企業は伸びているものの、従業員数50~300人くらいの中小の雇用率は伸びていないんですね。社会的な支援が少なかったり、会社と家の距離が離れていたり、福祉系の人材が確保しにくい、やはり地方ならではの問題があるのだろうと思います。高齢の方も増えていますから、労働人口もこれからどんどん減っていきます。

しかし、考え方を変えれば、福島県は他県の将来モデルを作りやすいとも言えます。他県が高齢化問題で悩む頃には福島県は解決されている、そんな風に、課題先進地区としての優位性もある。働き手がいない、福祉人材も限られている、そんななかで障害者の雇用をどう考え、どう実行していくのか。悲観的になると「難しい」という答えしか出てきませんから、これを機会と考えて、これから全国が体験していくであろうことを、前もって体験できるんだと意識していければと思っています。

福祉系の事業所を個別に見ていくと、就労移行支援事業所は非常に少ないです。栃木や群馬は50カ所以上あるのに福島は20カ所しかないんですね。B型は顕著に多いのですが、A型事業所も大変少ないです。人口規模で考えると、もっと考えていかなければいけませんね。一番の問題は、法人が理事会を通して事業を決めていくというやり方。地域ニーズが汲み取れていないんですね。この地域はどんな事業所を欲しているのかと、マーケティングやリサーチをするのではなく、「ここでB型をやりたい」みたいなところでスタートしてしまう。事業所のバランスが悪いんです。

—事業所のバランスが悪い福島県

就労移行支援事業所の数を見てみると、例えば、栃木県にお住まいの方は人口2万5千人あたり1カ所くらいの割合でありますが、福島県だと8万7千人に対して1カ所です。須賀川市は人口が7万人なので、須賀川市民は市内で就労移行支援事業所を探すのは困難という計算です。A型だともっと少なくなって14万人に対して1カ所という状況です。人口が15万以上の町に行かないとA型事業所がないということですから、これで仕事に巡り会えるのか疑問です。福島県は広域だからこそ地域のニーズによって事業所が建てられるべきなのですが、とてもバランスが悪いんですね。

関係機関もまだまだ縦割りです。行政も、市町村も県もみんな別会社だという感じですし、福祉事業所の中でも考え方が違う。学校によっても違います。そんな意識の差が、最初のワーキングのなかで見つかってきました。本来、福島県はきめ細やかな対応を山ほどやっていかないといけない地域のはずです。しかしそうなっていない。問題を解決していくためには、将来的にはネットワークは必要だと思いますし、そのためにも、まずは意見交換をしていかないといけません。

事業所数が少ないので、お互いのよさを知って連携していくことがますます求められます。移行支援はアセスメントが高まれば良い事業所になっていきます。100%稼働している事業所はないわけですから、どんどん力を入れてやって下さい。事業所の認知度も高まりますし、支援度の高い方に対する就労支援にもつながります。B型事業所も「工賃アップしろと言われてるから手放せない」ではなく、どんどん送り出していく。就労を1つの選択として考えていって欲しいと思います。B型から移行支援への送り出しももちろんあっていいはずです。

—福島ならではのネットワークを

障害福祉というのは、1人ひとり違った支援が必要です。それと同じように、事業所ごとの個性を活かして、強みを活かしてつながっていかなければなりません。そういう意味では、やはり互いの長所や個性を事業者同士が理解し、連携していくことが求められます。1つの法人や事業所が作るのではなく、地域で、民間や行政の人たちと一緒に作っていくということです。

大事なのは、やはりネットワークです。しかし、顔と顔が見えるだけの関係は要りません。名刺交換だけではダメということです。それに、本音が語れないネットワークではダメですね。一緒にやっていけないと思います。個人的な悩みでも、支援の行き詰まりでも、いろいろな問題を共有して、それらの悩みが否定されずに、本音で話せるというネットワークにしていくことが大事です。あとは困ったときに頼れないネットワークもダメ。困ったときに頼れないのではネットワークを作る意味もありません。器が小さくてもいけません。「うちはこうだから」なんて考え方はダメです。違った角度の見方が面白いんです。いろいろな考え方の人がいるということが実績につながっていくんですね。

ですから全国統一のサービスというのではなく、福島ならではのネットワークというのを作らなければなりません。その意味では、上から押し付けられるものではなく、現場重視のネットワークであって欲しいと思います。現場が繋がって、これまでは依頼状を送らなければいけなかったものが電話一本で繋がって、会って話して問題を共有することが当たり前になる。そのなかで、支援が必要な人に対して多様な選択肢を提示できる。自分の行きたい環境に行ける。そんな支援体制をどう作っていくのか。それはネットワーク次第です。

これからは、事業所の人材育成ではなく、地域の人材を育てていくということを意識していかないといけません。そもそもが人が来ない状況ですから、例えば、「うちの事業所を辞めても別の事業所で働いていればいいかな」と、スキルを持った人を地域の中で保持し、育てていく。事業所の宝ではなく地域の宝物にしていくということが大事です。

ネットワークができることで官民連携が図れます。1つの事業所が自治体とやり取りするなんて構造ではなくなりますから、建設的な意見交換も可能になると思っています。そこで重要なのが、都市型モデルではなく、地方モデルからの発信。地方ならでは、福島ならではのネットワークがあると思っています。福島県や各市町村と対応しながら、地域にお住まいの障害者のためにこういう制度を作ろうとか、住民の支援のためのネットワークづくりとか、地域に根ざした支援をしていく。1つの事業所は小さくても、つながることで可能になることがたくさんあると思います。これからの就労支援はネットワークが作っていくのだと思います。

 

(終)

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NPO法人ソーシャルデザインワークスが運営する障害福祉サービス店舗。 社会と現在の自分を結ぶための広場を創造することをコンセプトに、一人でも多くの生きにくさを抱える方々の心に栄養を、その先にある活力ある人生に貢献している。