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厳しさを持って接することが、就労や自立につながる

全国障害者就労支援ローカルネットワーク研修会in福島 特別収録

ここでは、8月初旬、ソーシャルスクエア内郷で開かれた「全国障害者就労支援ローカルネットワーク研修会in福島」において、全国で就労支援に関わる方々からお話頂いた内容を抜粋してお送り致します。それぞれの地域で就労支援に関わる人たちの生の声をご覧下さい。

 

厳しさを持って接することが、就労や自立につながる

河野 聡子さん

NPO法人福祉親愛会(愛媛県)

 

私はもともとは県の職員をしていました。精神障害者の支援、家族会の支援などを長くやっていたのですが、そのご縁で精神保健福祉士の資格を取りまして、それで県の職員を辞めてこの世界に入ってきました。ちょうど、関わりのあった家族会の人たちが、精神障害者の職業訓練施設を作ろうということになったんです。県内にはB型の事業所はすでに数多くあるので、もうはじめからA型をやってくれという話で、それで私たちはA型事業所でもあるお弁当の事業をスタートさせました。

その時に考えたのが、障がいを持っていたとしても、ちゃんとお金を稼いで一人前に暮らしていきたいという人たちの思いです。障がいがあるからお金は安くていいんだということではないんですね。時給は愛媛県の最低賃金ですが、時給696円をお支払いをしています。事業で儲けたお金だけでそのお給料を払えるようになるには3年かかりましたが、とにかくお弁当を作るという事業を通じてエンパワメントを目指すということをやってきました。

お弁当づくりというのは、汗をかいていく仕事です。夏場は地獄ですよ。特に揚げ物をつくるフライヤーの前は灼熱地獄です。でも、利用者には「とにかく毎日来なさい」と言っています。精神障害と聞くと、週3日からでいいよとか、辛い時は休んでも良いよとか、割と甘くなってしまうんですね。でも、うちは厳しくやってます。毎日来て、規則正しい生活をすることで、よく睡眠できるようになるし、食べられるようになるんですね。眠る、食べる、働く、というサイクルの中に入れていくことが何より大事ですし、それが仕事をするということの基本なんだと思います。

―仕事の特性や、弱点を見極める

事例を少し紹介したいと思います。まず、精神障害をお持ちのAさん。25歳のときに病気になっていて、それ以前に就労経験のある方です。真面目な方なので、ずっと前から職業訓練されていて、一生懸命チャレンジするんだけど、なぜか途中で辞めるということが多かったんですね。うちに来る前にも、A型の事業所を転々とされるような方でした。最初の1年は、すぐに休みがちになっていました。一度「辞めたい」と言った時は、1ケ月前に退職願を出すのが社会では常識だと伝えると、3週間くらい経った時でしょうか、気が変わって「頑張ります」と言うんですね。

なぜか彼は定期的にそういう不安定な時期がやってくる。傾向を調べると、障害者年金をもらう直前になると不安定になるということがわかってきました。奇数月はお金が厳しくなるのでそれで不安定になるんですね。そして、そういうことを繰り返しつつ少しずつ定着するようになって、休むのも減ってきました。それでお父さんからの提案もあって「一人暮らししよう」ということになったんですね。それからは元気になりましたね。非常に仕事のできる方なので、うちを卒業していくとなると惜しい気持ちはありますが、もう社会に出したほうがいいなと思っている1人です。

私たちの事業所には知的障害の方もいらっしゃいます。次の事例は、知的障害のある女性の利用者です。20代のときに仕事の経験はあったものの、それから仕事をずっとしておらず、40歳になってから職業訓練に行った方なのですが、かなり仕事から離れているのでA型からやってみたらどうだということで、うちに来た女性です。知的障害では典型的ですが、やはり計算が苦手。数を数えるのは30以上になるとわからなくなってしまいます。漢字も苦手で、でも、自宅で家事はしているし、お食事を作ったりもしていたので、うちでは野菜などのカットをしてもらったり、洗い物も得意で、素早く正確にやってくれます。

この方のトレーニングは、得意なもので働いてもらうということが第一です。切りもの、洗いものを中心にやって頂いていてます。逆に苦手な仕事も、例えば、お弁当づくりではお弁当のトレイにアルミホイルを置くという仕事があるんですが、数えていくうちに数がわからなくなってしまうのを防ぐために、お弁当をトレイに載せて、縦に何個、横に何個、というように、彼女が数えられる範囲の数量で並べておいておく。それだけで仕事の精度が変わって来るんですね。

それから、彼女は時間に対する概念がゆるいので、会社にも一番遅く来るし、お昼休みもいつまでも誰かとおしゃべりしていたりするんです。そこで、時間を意識するということは徹底してやってもらっています。彼女は結婚したい、自立したいという思いが強くて、それが目標としてあるので、それが原動力になっているんでしょうね。今では、健常者でも大変だと言われる職場に就職をして、今も辞めずにその仕事を続けています。

―毎日のリズムをつくり、日常を積み上げていく

精神障害の人たちと付き合ってみて、正直、今までは精神障害の人を特別扱いしてたなと反省しています。知的障害のトレーニングでは、業務を分解したり単純にして積み上げていくのですが、それと同じだなと。そしてそれを毎日続けていくということです。どんなに優秀な人材でも、やはり突然休まれたりすると仕事になりません。ですから、とりあえずでも「毎日来る」ということを評価するようにしてきました。精神障害者は体力が落ちているので、とにかく身体を動かすことが重要です。そして体力をつけてもらう。その基本にあるのは、毎日続けること、リズムを整えること。それによって、働くことへの体力、気力や意欲を養ってもらわなければなりません。

もちろん、働くモチベーションも大事です。その意味では支援計画がとても重要になってきます。何を目標に頑張るのか、その目標がないと頑張れません。そして頑張ったらご褒美がある。それもいいんじゃないかと思います。おかげさまで営業が落ち着いてきたので、今年初めて勤勉手当ということで、ボーナスを出すことができるようになってきました。それもモチベーションの1つになればと思います。

そしてもう1つ。A型事業所は一般の人たちと同じ水準の給料を渡します。ですから、「自分の行動を一般の職場に照らし合わせること」を忘れてはいけません。例えば、いきなり「明日墓参りなので会社休みます」なんて人がいるんだけれど、普通の職場で「明日墓参りで休みます」なんて言ったら「何を考えてんだ」ということになります。一般の職場に就職を希望するのなら、そこでのやり方を意識しなければ働くことはできません。そうした厳しさを持って、皆さんの就労につなげていければと思っています。

 

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NPO法人ソーシャルデザインワークスが運営する障害福祉サービス店舗。 社会と現在の自分を結ぶための広場を創造することをコンセプトに、一人でも多くの生きにくさを抱える方々の心に栄養を、その先にある活力ある人生に貢献している。