与える、のではなく「ひきだす」関係

2019年新卒入社・ソーシャルスクエア西宮店で就労移行支援を行うクルー(支援員)田川美那海。長崎の田舎育ち、大学ではまちづくりや地域コミュニティのフィールドワークを通じて、ひととひとがどうやって溶け合い、馴染んでいくのかを学んだ田川。日々の支援の現場でも、その感性が生かされていました。

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田川美那海(たがわ・みなみ)

SOCIALSQUARE西宮店 ソーシャルコーディネーター

ソーシャルスクエアという地域に開かれた現場で障害福祉に関わるクルーは、どのような問題意識を持ち、どのような理想を掲げて支援を行っているのか。その声をインタビュー記事で紹介していく「Crew’s Voice」のコーナーです。
今回紹介するのは、2019年新卒入社・ソーシャルスクエア西宮店で就労移行支援を行うクルー(支援員)田川美那海。長崎の田舎育ち、大学ではまちづくりや地域コミュニティのフィールドワークを通じて、ひととひとがどうやって溶け合い、馴染んでいくのかを学んだ田川。日々の支援の現場でも、その感性が生かされていました。

違和感を大切にする

西宮店で勤務を始めて約1年。社会人1年目をふりかえってみると、精神面でだいぶ鍛えられたと思います。支援員としての仕事を通じてこれまで接点のなかった、出会ったことのないような方々の人生を知って、その人の苦しみや気持ちを受け止めるための器が徐々に形成されているように感じています。現場の支援に入って間もない頃は、相談を受けてもどうしよう、なんて声をかければいいんだろうと焦っていたと思います。元々他人のことで考え込んでしまうタイプではなかったのですが、家に悩みを持ち帰ってしまった結果、しんどくなってしまうこともありました。今は相手が何に悩んでいるのか分かることが増えてきたように感じているので、そうやって自分が悩んでしまうことも少なくなりました。

仕事をしていく上で大切にしていることは、無理につくろったりせずに自然体でいることです。初めて社会人として仕事をしているので、自分の中に正解がない状態を前向きにとらえたいと思っています。疑問を感じても比較対象がないので「そういうものなのかな」と受身になりやすいのですが、ひとつひとつ何のためにやっているのか意図や意味を考え、その中で出た違和感は積極的に口にするようにしています。むしろ自分ではあまり良くないと思っていることをそのままにしておく方が苦しいですし、仕組みを考えたり整理することが好きなので、目的に対して色々な創意工夫ができる時は、仕事をしていて気持ちが上がる部分かなと思います。

今思えばこの「創意工夫」に惹かれてソーシャルデザインワークスに就職したのかもしれません。若いうちにNPOや中小企業で働いてみたいと就職活動を進めていた時に出会ったのがこの法人ですが、求人記事に記載されていた7つの行動指針を見た時に「自分のことじゃないか」という感覚がありました。そのうちの1つ「創意工夫・出来ない理由を挙げるのではなく出来る方法を考えよう!自由な発想で、まず、やってみる!」は特に自分のことだと捉えていたような気がしていて、この仕事なら自分を出せそうという意識がありました。

 

固まった心を解きほぐす

私が生まれ育ったのは、学校までスクールバスを使っても1時間半、同級生も30人くらいしかいないような長崎の田舎まちでした。大学では建築系の学部に入ったのですが、集落の成り立ちや人間関係を研究している教授の講義を聞いた時、自分が田舎育ちということもあってとても面白いと感じました。地元の将来のすがたとか、地元のために自分に何ができるかを考えたんです。

まちづくりや地域活性化についてもっと学びたいと思ったので大学院にも進学し、都会から田舎への移住者をテーマに研究をしました。わたしがフィールドワークを行った直島という瀬戸内海に浮かぶ島には、地方からの移住者が多い一方で、昔からの営みを続けている方も多いという土地柄でした。江戸時代に書かれた地図を見ながら昔の土地の使われ方について調べたり、新しく移住してきた人がどのように地域に巻き込まれていくのか、まちの人たちへのインタビューを通して研究していきました。

フィールドワークを重ねる中で身につけた相手の話を引き出す力は、私がソーシャルデザインワークスで提供できる価値の一つだと思っています。例えば利用者さんが何に悩んでいるのかわからないときや、自身の気持ちをうまく言語化できないときに、何気ない一言を聞き逃さないようにしたり、本人にとっては当たり前になってしまっていることに対して「それってすごいことじゃないですか」と気づきを促せたらなと思っています。

思えば他者の可能性を引き出したいという気持ちは幼少期から強いのですが、中学時代に行った保育園での職場体験で、原体験となるような出来事がありました。園児たちはみんなテンションがあがって騒いだり走り回ったりしていたのですが、ひとりだけぽつんと隅っこで丸まってる子がいました。どちらかというと私はその子に対して興味が湧いてしまって、どうやって楽しませようか、どうやったら笑ってくれるのかを、夢中になって考えました。その子との関わり合いの中で、笑顔になってくれる場面に立ち会えたり、帰る時に「もっと遊ぼう」と言ってもらえたことはすごく嬉しくて印象深い経験で、その時の自分には、固まっている他者の心を解きほぐしているような感覚があったんだと思います。

他者との関わりの中で、その人の気持ちがかわる瞬間をつくることは支援や地域づくりに通じるものがあり、とてもわくわくしますね。

 

「自分で決めること」に価値がある

旅が好きで「その土地のヒト・コト・モノとの偶然の出会い」を大切にしています。大学時代には休みがあれば、計画もろくに立てずに、訪れてみたいところ・見たい建築物のあるところに勢いで出掛けていたと思います。なので私の旅には失敗が付きものでした。フィールドワークをしていた直島には何度も訪れていたのですが、現地の人と話すことに夢中でフェリーの最終便を逃しかけてしまうことがありました。それを知った島の方が車で港まで送ってくれたので事なきを得たのですが、そういった失敗もアクセントになっているというか、旅の醍醐味だと思いますし、逆に他のことはきっちり行わないといけないことが多かったので、旅をすることで自分の余白づくりもできていたんじゃないかなと思います。

旅ができるならどんなかたちでもいいということはなくて、行程が決まったツアーや、もれなく観光地を訪れる計画的な旅行よりも、自分が何を見たいのか、自分は何を体験したいのかを問いながら、自由に決められる旅が理想的です。たぶん「自分で決めること」に価値を感じているんだと思います。

これは仕事でも大切にしている部分で、就職活動を進める上ではどうしても他の人の意見に流されたり、働ければ何でもいいという気持ちが湧いてしまったりすると思うのですが、やっぱり就職を目指すのであれば「自分らしく」働くことを追求していってもらいたいです。

就労移行支援はそのためのサポートをする仕事だと思っていて、本人も知らないような自分たちの気持ちに気づいていけるように、私が支援員として関わることで、固まった心を解きほぐすことをこれからも意識していきたいです。

PROFILE
田川美那海
田川美那海

田川 美那海(たがわ・みなみ)
SOCIALSQUARE 西宮店 ソーシャルコーディネーター
長崎県出身。自然に囲まれのびのびと育つ。学生時代は地域づくりについて研究をする。瀬戸内や八重山の離島でフィールドワークを行った。合唱部にも所属し、海外の合唱団と共に演奏した経験がある。旅好きで、その土地のひと・こと・ものとの偶然の出会いに喜びを感じる。趣味は歌・バスケ観戦・ハンドメイド。

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