お互いに個性が違うからこそ、交換できる

今回は2020年入社、ソーシャルスクエア いわき店で自立訓練(生活支援)の支援員として働く加賀谷 果歩をご紹介。大学時代にコミュニティデザインを学んだ後、新卒でソーシャルデザインワークスに入職。ヒトとヒトとの繋がりをデザインしてきた加賀谷が「支援」をどのように捉えているのか、その考えや背景を語ってもらいました。

Share on

加賀谷 果歩(かがや・かほ)

SOCIALSQUARE いわき店 スクエアクルー/コミュニティデザイナー

ソーシャルスクエアという地域に開かれた現場で障害福祉に関わるクルーは、どのような問題意識を持ち、どのような理想を掲げて支援を行っているのか。その声をインタビュー記事で紹介していく「Crew’s Voice」のコーナーです。

今回は2020年入社、ソーシャルスクエア いわき店自立訓練(生活支援)の支援員として働く加賀谷 果歩をご紹介。大学時代にコミュニティデザインを学んだ後、新卒でソーシャルデザインワークスに入職。ヒトとヒトとの繋がりをデザインしてきた加賀谷が「支援」をどのように捉えているのか、その考えや背景を語ってもらいました。

※掲載内容は取材当時のものです

大事なのは「ときめき」

高校生の頃から徘徊癖がありました。仙台にある高校に通っていたんですけど、あまり一緒にいたいなと思える人がいなくて、ひとりで学校の周りとか、スピリチュアルな大仏がたくさんあるようなところを歩いて感激していました。

徘徊癖は今でもあって、散歩しようと思って外に出たら、気づけば山奥にいるみたいな。歩きながらまちを見て妄想を膨らませるのが好きで、「なんでこの辺はこういう家が多いのかな」とか考えたりしています。歩くことで運動したスッキリ感もありますし、行き当たりばったりで出会えるものがあると、今日の収穫だと喜びながら家に帰りますね。知らない感じのカレー屋を見つけたとか、あの喫茶店今度行ってみようみたいに、無駄にときめくタイプなんです。

進路選択も直感でした。最初はなりたい職業が全然見つからなくて親に勧められた看護師を目指そうと思ったのですが、看護体験で怖いと感じてしまって。そもそも自分が病院に行くだけでも緊張するのに、誰かの命を預かるとか、生まれたての赤ちゃんを抱っこするなんて私には「絶対無理!」って。

原点回帰して自分の好きなことってなんだろうなと考えた時に、ものづくり職人とか料理人とか、ケーキ屋さんだと思いました。部活をさぼって図書館でものづくりの職業について調べたり、放課後にケーキ屋さんに行って今の自分がときめくか試していたんですが、ある時廊下を歩きながら「私は左側じゃなくて右側だ!」って直感が働いたんです。仙台のまちが一望できる廊下で、左手には大都会、右手には森が広がっている中で、私は森の方に行きたいと思いました。

そこで職人になりたいと思い、東北芸術工科大学にたどり着きました。でもものづくりを志す方たちはモノへの愛がすごく溢れていることが分かって。これをつくりたい、これを表現したいという想いが当時の私にはなかったので、魂を注ぎたくなるものをなかなか決められないことに悩みました。一方でコミュニティデザイン学科は伝統文化の衰退とか人口減少といったまちのいろんな課題を扱っているので、課題解決のためのアプローチをものづくりや福祉に役立てることができると分かりました。森の近くに居たい気持ちはあったけど、何をするかまでは決めたくないと思ったから、大学に入って何をするべきなのかを考えようと思い、コミュニティデザイン学科への入学を決めました。

 

そんなことで判断していいのかって思われるかもしれないんですけど、仕事選びでもまずはホームページを見てときめくかが重要でした。例えばロゴが可愛いとか、素敵だなって思えるものをつくっている会社だったら、きっと自分と感性が合う人がいるんじゃないかって。そういうところでしか働きたくない性格なんです。地域のデザイン会社も見たし、農業×ITみたいな会社も見たのですが、最終的にはその人たちがつくっているものとかやっていることを見て、うまく言語化できないんですけどきゅんとするかどうか、その企業の人と会って自分の言葉で話せるかどうかを基準に選びました。

業種にこだわりはなかったんですけど、一般的な就職活動サイトがすごく苦手で。みんなスーツ着て、うんうんって頷いて、こういう就職活動は違うんじゃないかと思って調べていくうちに、自分は志があってメッセージがしっかりしているベンチャー企業に興味があることに気づきました。でもそういった会社は新卒の募集をしていることが少なくて、新卒を受け入れようとしてくれる企業に入りたいなと思っていたところ、今の法人に出会いました。

この法人に面接をしに来た時に、初めて楽しいと思ったんですよ。それまで就職活動嫌だな、面接嫌だなって思っていたんですけど、すごい私の話を聞いてくれるし、自分の言葉で話せたんですよね。こういう面接官がいる職場なら大丈夫そうだなって。

変化と成長の1年

法人に入り立ての頃は自分に余裕がなさすぎて、ときめくことができていませんでした。覚えることもいっぱいあったし、そういった感覚を重視できなくなっていました。大学時代はアイデアがぽんぽん湧き出てくるタイプだったのに、全然アイデア出しすることができていないなって。

利用者の方々と同じような悩みを抱えているんですよね。コミュニケーションの取り方だったり、自分のことを褒めてあげられなかったり、理想が高くて「自分できてないな」って思ってしまったり。自分と同じだなって思うんですけど、新卒で法人に入って社会経験が少ないし、福祉を学んでいないから助言があまりできなくて。悩み相談を受けても「確かにどうやって乗り越えるんだろう...私もそうなんだけど!」みたいな葛藤を1年くらい繰り返していました。

私は自立訓練(生活訓練)を担当しているのですが、良くも悪くも自立訓練と就労移行支援の活動場所がはっきり別れているので、自立訓練のメンバーの方々から「就労移行支援の方々が怖い」という声を聞くことがあります。就労移行支援の方々が集中して作業に取り組んでいる横で、自立訓練の方々はボードゲームやテレビゲームをするんですよ。コミュニケーションがうまくなりたいという方もいるから盛り上がってもらいたいと思いつつ、静かに作業している人たちに対して気を遣ってしまいそうだなって。仕事を始めたばかりの頃は「こんなにうるさくしていいの!?」と驚きつつ、怒られないか不安でそわそわしていたんですけど、お互いの存在を気にしながら過ごすことも大切だよなと今では思っています。実際に家とか職場でも静かにしたい人と盛り上がりたい人がいて、お互いに気を遣いながら、どう配慮し合えるのかをSOCIALSQUAREで学べるんじゃないかなって。他のクルーにももやもやしていることを相談しながら、そういった解釈ができるようになりました。

自分を褒められるようになったのも大きな変化です。支援員としてメンバーの方々には「大丈夫ですよ」「今日はこれを頑張りましたね」といったポジティブな発言をするようにしているのですが、自分のアドバイスや提案が全部自分に返ってくるようになりました。仕事が終わって家に帰る車の中で「私めっちゃ頑張った!」って言っちゃうんですよ。いつの間にかそんなことを言うようになっていて、自分変わってるなって気づきました。

すごい勉強になるし、成長もしているのでこの法人に入ってよかったと思っていますけど、ときめきを取り戻したのは1年経って仕事を覚えてきた頃でした。今は時間があればときめいた方に歩いて行くし、やりたいことをやりたいなと思えるくらいの余裕が出てきています。

「スクエア掲示板プロジェクト」って呼んでるんですけど、事業所前に掲示板をつくってメンバーや地域の方々に向けた情報発信を企んでいます。「あの建物は何だろう」って思っている方もいるかもしれないですし、私が大学で学んできたコミュニティデザインを活かしながら、SOCIALSQUAREとまちが繋がるきっかけづくりをしていきたいです。

顔が浮かぶ関係性のデザイン

大学の卒業研究では地域の大学生とお年寄りを繋がるきっかけづくりをしていました。私が所属していたコミュニティデザイン学科では地域に入って活動することが多いんですけど、家にあげてご飯をご馳走してくれる方がいたり、歳の差のある友人ができたりするんですよね。私はたまたま近所の方たちと繋がっていろんな学びがあったのですが、一方で他の学科の子たちはそういった繋がりがないことが気になっていました。

大学までは歩いて通っていたんですけど、ある時ちらっと目の端にとんでもないものが映った気がして振り返ったら、住居と住居の間でおばちゃんが仰向けになって倒れていたんです。「やばい!」と思ってすぐに助けに行ったもののひとりでは起き上がらせることができなくて、近くにいた大学生に助けてもらってやっと家の中まで運ぶことができました。その方は認知症のある方みたいなんですけど、娘さんがいない時間は家にひとりでいることが多いみたいで、私は毎日その家の前を通っていたのにそのおばあちゃんの存在を知らなくて、もし私が道を歩いていなかったらどうなっていたんだろうってもやもやしてしまって。

私は学生生活の中で地域のお年寄りと繋がって良いことがたくさんあったし、お年寄りの方々もまちづくりやデザインのことを大学生から教えてもらってお互いに良いことがあったよねと話をしていました。大学生は期間限定の住人だから興味を持たれないことが多いけど、地域のお年寄りと、4年間限定だけどそこにいる若者が一緒に繋がるような、「お互いを認識できる仕組み」があれば、災害時の助け合いや日頃の見守りだけではなくて、お互いの得意や趣味を活かし合うことができるんじゃないかと思いました。

そこで私が実際に取り組んだことは、いろんな学科の学生たちを地域のお年寄りと繋げる活動です。例えば普段は絵を描いている美術コースの子と一緒におばあちゃんの家に遊びに行って、「ひとり暮らしで果物なんてむかないよね」なんて言いながら柿を食べたり、たまたま茶道の先生をしている方がいたので、お茶の点て方を教わったり。反対に大学生はボランティアのお手伝いをしたり、スマホの使い方を教えたりしました。そういったことを何度か続けていくうちに、お互いに個性が違うからこそ交換できるものがあることが分かってきて。学生には若い力があって、デザインや芸術のことを教えられるし、お年寄りは地域にずっと住んでいたからこそ分かることを学生たちに伝えられる。目には見えないけれど、そういったやりとりが生まれることで「自分が必要とされている感覚」がお互いに芽生えて、特にひとり暮らしのお年寄りにとってはその感覚がとても大事であることが分かったんです。そうは言ってもそもそも出会うきっかけがないよねという話になったので、公民館で一緒に料理をして一緒にご飯を食べる「お茶の間食堂」という活動をしていました。

地域との繋がりが少ないのはSOCIALSQUAREのメンバーの方々も同じです。家から出たことが少ない方もいますし、どこかに接点を持っていないとまちに興味を持つことって難しいんです。家族が行っているあそことか、習い事で行っていたあそことか、思い出や繋がりから興味を持つと思うんですけど、そういったことが圧倒的に少ないように感じます。

コロナウイルスの影響で、私自身もSOCIALSQUAREと地域の繋がりをあまり意識できていないですし、メンバーと地域の方々が交流している姿もほとんど見たことがないんですけど、SOCIALSQUARE以外の居場所をつくることと、私自身が地域の活動をしたいということは、ダイレクトに繋がっている感覚があります。

自立訓練の利用期間である2年が過ぎた後に、就労移行支援を利用するのは難しそうだけど、居場所は絶対にあった方がいいんじゃないか、誰か話せる人が居た方がいいんじゃなかと思う利用者の方がいるんですけど、卒業するまでに「あの人となら話せる!」という人が一人でも思い浮かぶようになっていたらいいなと思っています。「あのおばあちゃんと話したことあるな」とか「SOCIALSQUAREの近所にあの人いたな」みたいな顔が浮かぶ関係性をつくっていきたいんですよね。

自立訓練を担当していて「自立」ってなんだろうってすごく考えます。今のところしっくり来ているのが「人を頼れるようになること」という考え方で、人はひとりで生きてはいなくて、誰かに頼っていますよね。私の卒業研究と似ているんですけど、みんな苦手なことがあって、できることが違うからこそ依存し合っている。そういう依存し合える関係性をつくることを、これからは大事にしていきたいなって思っています。

PROFILE
加賀谷 果歩
加賀谷 果歩

加賀谷 果歩(かがや・かほ)
SOCIALSQUARE いわき店 スクエアクルー / コミュニティデザイナー

1998年生まれ。宮城県仙台市出身。東北芸術工科大学デザイン工学部コミュニティデザイン学科卒業。
大学4年間を山形県で過ごし、まちづくりや社会教育を実践的に学ぶ。
2020年4月より、ソーシャルデザインワークスに入職。

クルーページを見る
Share on