CREW's VOICE

敢えて厳しく、そして長く寄り添う。

吉田 千尋

ソーシャルスクエアいわき店 ソーシャルコーディネーター/PCインストラクター

 

ソーシャルスクエアという地域に開かれた現場で、障害福祉に関わるスタッフは、どのような問題意識を持ち、あるいはどのような理想を掲げて支援を行っているのか。クルーにインタビューをしてその声を紹介していくのが「Crew’s Voice」のコーナーです。

今回紹介するのはソーシャルスクエアいわき店で「就労移行支援」に関わるクルー、吉田千尋へのインタビュー。ソーシャルスクエアでは、大きく分けて二つの支援、「自立支援」と「就労移行支援」の二つの支援が行われ、それぞれに適したプログラムやカリキュラムが提供されています。その現場の声から、働くこと、支援すること、そして生きにくさの根源にあるものを考えます。

 

−人と向き合う仕事は、答えがない

法人に入り、就労支援の担当になって3年目になりました。改めて強く思うのは、この仕事にテンプレートはないな、ということです。この人はこういう障害だからこう対応すればいい、というのはほとんど効果がなくて。例えば、この人は統合失調症だからこうすべきだ、というわけにはいかないんです。元々の性格も経歴も、得意なことも不得意なことも人それぞれで。

ですから、答えのない仕事の連続です。これで良かったのかなあ、就職してから不安なく頑張ってるかなあ、そんなことを考える日々です。だから、大きな達成感というのはないような気がします。あるとすれば、本当に小さな変化だったり、シンプルな事務作業の達成感だったりで。常に模索が続くような仕事だと思います。

就労支援とは言っても就職して終わりではありません。そのあとは定着支援も継続します。就職した先で、上司の方のお話を伺ったり、こちらの方から「自己評価の低い方なので、できるだけ褒めてあげてください」なんて提案させて頂いたり。就職した方へ励ましも必要です。週に1度くらいのペースで定着支援面談を行いますが、そこで話をしないと自信をつけてもらえないし、ずっと不安に思っていることを喋りたい人もいますし。みなさん、不安の中で生活しているので、長く付き合うことになります。

達成感を感じにくいとさっき言いましたが、それでも、他愛のない話をしたり、子供の子離れの相談とかされたり、そういうのが意外にもうれしいんですよね。確かに、やったー、やりきった、みたいな達成感は感じにくいけど、通所してくるメンバーさんのちょっとした幸せとか変化は、小さなモチベーションとして積み重なっているかもしれませんね。

 

 

−就職で終わり、ではない支援

以前通所していた方で印象に残っている方がいます。その男性は50歳を超えていて、いわき駅周辺での就職というこだわりがあり、駅周辺で仕事を探していました。職種や企業にこだわりはなくて、就くなら介護の仕事かなあというくらいでした。通常、就労支援は2年間受けることができるのですが、その方はすでに2年が終わっていて、残りは延長された期間の1年しかなかったんです。

ただ、いわき駅周辺で介護の仕事というのがなかなか見つからなかったんですね。そこで思い切って、いわき駅の反対方向、小名浜にも目を向けてみたらということになり、大きな量販店の店舗での研修を行うことになりました。そうしたら、あっという間に実習から就労につながって、現在もそこの店舗で働いているんです。就労について明確な希望がなく、決断することも難しい方だったのでちょっと厳しい声をかけたりもしたんですが、就労と定着につながって良かったです。

本人が働きたいと思っていて、でもどこかに変なこだわりがあったりして、つまずいてしまう。そんな時は、本人の意思を尊重しながら、色々な提案をしてみます。すると、意外な形で就労や定着につながることがあるんです。ちなみにその方、初めはパソコン操作をする部署になって自信をなくしていたので、担当者の方に配置換えを提案してみました。すると、バックヤードの品出しの部署に回して頂いたことで、現在は気持ちも落ち着いて、定着支援の回数も減りました。安定してるということだと思います。

こんなふうに、就労が終わっても定着支援は続きますし、きちんと、その方が悩みや不安を解消できているのか、就職した組織の方とも色々なやり取りをします。思えば、その方は、私が法人に入る前からの利用者さんだったんですが、通所期間の長い方はどんどん数が減ってきました。それだけ就職につながっているということだと思いますし、就職して3年になるんだなあと改めて感じています。

 

 

−「障害者」という言葉の垣根

就労が決まった人が増えるほど、企業の方との関わりも増しますが、「障害者って言っても普通だね」とか、「普通に働けるんだね」というような声を頂くことがよくあります。そこで思うのは、「障害者」という言葉が、何か高い垣根のようなものを作っているんじゃないか、ということです。多くの人が、「障害者」という言葉を使った途端、何か特別なことをしなければならないと思ってしまうんじゃないでしょうか。

例えば、障害者と言わずに、この人はこんな苦手なことがあるからサポートしてもらえますか? といえば普通に伝わるのに、「障害者なんです」と言った途端「どうすればわからない」という反応になってしまう。多分、教育の段階で、健常者と障害者のクラスが分けられてしまうということが背景にあると思っています。だから、どうしていいか分からない。大変なんじゃないか、という思いを引きずってしまうのかもしれません。

やっぱり「障害者」という括りが良くないんじゃないかと感じます。だって、例えば「近眼」の人は障害者じゃない。目が見えにくいという障害を持っているのに、こちらは障害者とは思われない。けれど、車椅子がついていたり、呼吸器がついていたり、ちょっとだけ見た目が違うからと言って「障害者」だと言われてしまう。そして、コミュニケーションのハードルを上げてしまうんですね。

 

 

結局、分けてしまっていることが問題なんだと思います。たまたま、制度上保護を受けるために規定されただけの「障害」が、健常者と障害者にはっきりと分けて、垣根を高くしてしまう。そして、企業に対し「雇用せよ」とやってしまう。本来は、人を雇った結果、たまたまた障害がある人がいて、それに対して補助金が出るというのなら理解できるのですが、罰則を設けて「なんとなく決まりだから採用しないといけない」という義務感を植え付けてしまっている気がします。

そもそも、企業の働き方がまだまだ多様なものになっていない、ということもあると思います。例えば、みんながみんな9時5時で働かなくてもいいし、午前中だけとか、午後は早めにとか、やれる時間でやれる仕事をするというような多様な雇用体系が根付いている会社であれば、障害の有無に関係なくみんなが働きやすくなるはずです。障害者だけが優遇されるというのではなく、みんなが働きやすくなる。そこまでできて「雇用の多様化」なんだと思いますね。

 

 

−自分から「声を発する」ことの大切さ

その意味で、障害のある方が100%守られればいいというわけではないと思います。自分たちでも声を発していかないといけないし、社会にルールに合わせなければいけないことも多くあります。それは障害の有無に関係がありません。人付き合いが苦手な人もいるし、社会に出れば、話したくない人とも話さなければいけない時もあれば、知らない人から電話がかかってきても、ちゃんと電話応対しないといけない。障害者だからと周囲が先回りしてしまうことで、社会の障害の方が温存されてしまうようなことも多いと思います。

だから、改善を求められるのは障害のある人だって同じです。だって就職したい、社会に出たいと思っているのは、ここに通ってくる人たちなわけですから。自立支援では「調子が悪かったら休憩してもいいですよ」と声をかけるような局面でも、就労移行支援では「普通の会社だったら30分休ませろと言っても休ませてもらえませんよね?」と言って、厳しく対応することもよくあります。

やっぱりここ(ソーシャルスクエア)は訓練の場なので、訓練しないと意味がないと思うんです。ここで少し厳しい体験をしておけば、就職した職場が楽に感じられるはずなんですね。ですから、就労はできて当たりまえ。そのあとの継続に目を向けて、敢えて厳しく、そして長く寄り添えるようなクルーになれればと思っていますけど、きっとメンバーさんからは吉田は厳しい人だと思われてるかもしれませんね。

 

 

profile 吉田 千尋 Chihiro YOSHIDA

PCインストラクターとして塾や小学校で教え、その後、ネットワークコールセンターや職業訓練校でオフィスソフトやビジネスマナーの講習をしていたが、福祉の世界へ。

SOCIALSQUARE
SOCIALSQUARE
NPO法人ソーシャルデザインワークスが運営する障害福祉サービス店舗。 社会と現在の自分を結ぶための広場を創造することをコンセプトに、一人でも多くの生きにくさを抱える方々の心に栄養を、その先にある活力ある人生に貢献している。