福祉の常識から外れた「本当の居場所」へ。

今回紹介するのは、オープンして間もないソーシャルスクエア熊本店のマネージャー緒方豪太。熊本で開所した思いを振り返り、これまでの職歴を辿りながら、ソーシャルスクエア熊本の魅力や、これからのあるべき姿などについて語ってもらいました。

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緒方豪太

ソーシャルスクエアという地域に開かれた現場で、障害福祉に関わるスタッフは、どのような問題意識を持ち、どのような理想を掲げて支援を行っているのか。

クルーにインタビューをして、その声を紹介していくのが「Crew’s Voice」のコーナーです。今回紹介するのは、オープンして間もないソーシャルスクエア熊本店のマネージャー緒方豪太。熊本で開所した思いを振り返り、これまでの職歴を辿りながら、ソーシャルスクエア熊本の魅力や、これからのあるべき姿などについて語ってもらいました。


熊本店がオープンしたのは今年の1月17日です。現在でだいたい4ヶ月ですが、普段から利用してくれている方が5、6人。これから利用を考えている人を合わせるともう二桁になっているので、予想していたより地域の皆さん反応がいいと感じています。関係機関の方に「スクエアを試してみようかな」と思ってもらわなければ問い合わせの数も増えませんので、問い合わせを頂いているということは、地域の皆さんに少しずつ好意的に感じてもらっているのではないかと思っています。本当にありがたいですね。

こうした自立支援のニーズは、確実に熊本にあると思っていました。熊本に居場所がないわけではないんです。例えばデイサービスやデイケアの施設などは十分にあります。ただ、そういう場所は、制度上病院を受診していないと利用することができないことになっています。実際、病院が管理しているところが少なくありません。つまり医療の場所なんです。
就労支援の施設も少なくありません。ところが、そうした方を実際に施設が受け入れてみると、就労移行にはまだちょっと早いかなという方も結構いらっしゃるわけです。私自身は、気合いで就職しろ、仕事できないなんて甘えだろと言われてきた世代ですが、乗り越えるための具体的な見通しが立てられなければ、そう自立なんてできるものではありません。

皆さん「きっかけ」さえあれば動けるんです。だから、そういうゆるい場所だけれど、行ってみようかな、やってみようかなと思える「きっかけ」を作りたいと思っていました。医療的な場所ではなく、就労支援でもない。福祉的な、日中の時間帯にまったりと過ごせるグレーゾーンの場所。それがソーシャルスクエア熊本店です。

この数ヶ月見ていて、少しずつですが、確実にサードプレイス的な居場所になりつつあるということを感じています。利用しているメンバーさんの雰囲気もとてもいいですよ。まったりソファーでうたた寝したりしているのを見ると、居心地の良さを感じもらっているのかなと嬉しくなりますね。私たちのサービスは自立訓練なので、特別なことをするわけでもなく、実際に「くつろげる居場所」でいいと思っています。

−コミュニケーションの軸

実際にこうして運営をしたり、色々な方にお話を伺うなかで、自立したいという希望を持っている人が多いだけでなく、いろいろな困りごと、生きにくさを抱えている人たちが数多くいることがわかってきました。しかもその生きにくさは一人一人違う。ですから一人一人にしっかりと向き合っていかなければなりません。自立支援や相談支援は簡単な仕事ではありません。

支援スキルだけで十分かというとそうではなく、大変な仕事だからこそ、私たちクルーの心が安定していないといけないと感じます。正直、私たちの仕事は、心の状態で支援の質が変わってしまいます。私自身もまだまだ人間が未完成なので、メンバーさんに対して失礼にならないよう、コミュニケーションには気を使っています。信頼関係がないと心を開いてくれませんし、丁寧な関わりがないと支援につながらないからです。

そのために必要なのは、コミュニケーションの軸を持つことだと個人的には思っています。福祉職に関わる人たちは知っていると思いますが、例えば「バイスティックの7原則」と呼ばれる行動規範のような軸を持つことで、できるだけ自分の心を平静に保つことを心がけています。慣れるまでは難しいかもしれませんが、軸を持つことで少しずつ楽になった気がします。

何年も前の話ですが、あまり考えずに発した一言で利用者の方を傷つけてしまった経験があります。こちらが頭を下げたことで許してもらえたこともありますが、ダメな時もありました。そうした経験を通じて、間違ったことを素直に、そして真摯にお詫びできるベースがないと支援は難しいいなと学びました。ただ、あまり考えすぎてもダメな気がしていて。だからこそ軸なんだと思います。軸があれば、深く悩まずに対応できますし。

あとは、言葉の使い方。こうしないとダメ、こうするべき、一般的に、普通は・・・。こういう言葉はあまり使いなくないですね。例えば「ダメ」という言葉も、誰の感覚でダメなのか。立場が変われば「当たり前」なんて言葉は通用しませんし。そういうことを意識して信頼をつくりながら、ご本人の気持ちに寄り添っていくことを心がけています。
でもこれって福祉に限られた話ではないと思っていて。私はもともと営業職をしていたのですが、その時からシンプルに「関わる人の笑顔を追求したい」と思っていました。だから、本質的には変わらないと思うんです。その人の笑顔を追求すること。それに本気で臨めるかどうか。営業でも福祉でも、そこは同じなんです。

スポーツ、営業、そして福祉

営業をやっていて思ったのは「人ありき」の職だということ。例えば、誰かが契約を取ったのと同じトークを私が使っても、それで同じように契約を取れることなんてありません。なぜなら、言葉にはその人だけの思いが入っているからです。言葉が本気かどうか。本当にそう感じていなければ、相手に響かないものですよね。それは支援にも生かされている気がします。本当にそう思っているかどうか、力になりたいと思っているかどうか。メンバーさんは、そういうところをすごく敏感に感じてしまいますから、特に。

実は、学生時代は教師になりたかったんですよ。自分がやっていた野球の指導がしたいと思っていて。教員免許を持っていたので教育に関わりたいと思ってたら、結果的に教材の会社に関わっていました。その後、障害のある人たちの支援を行う会社に就職しました。スポーツをやっていた頃は、人を蹴落としてでもレギュラーを取れ、というような空気に馴染めなくて。だからどちらかというと、人のいいところをシンプルに「いいね」って褒めたりするのが好きでした。そういう教師になりたいと思っていたんです。

それは営業にも、多分今の福祉にも引き継がれているかもしれませんね。相手に喜んでもらったほうが信頼関係が築けるし、何より自分の気持ちが前向きになります。契約を取らなければ、レギュラーにならなければって自分にプレッシャーをかけると続けるのが難しくなっちゃうんです。けれど、今はそういうことがなくなりました。私の本能的な部分、人が好きだったり、人を褒めるのが好きだったり。それが生きている気がするのでとても楽です。
そういう働き方ができるのも、ソーシャルデザインワークスという法人の文化が大きいと思います。この法人は、本当に「自分らしさ」を大切にしてくれるし、自分たちのパフォーマンスが最大限に発揮できるよう、余暇にもサポートをしてくれます。だからこそ、こうして熊本で事業所を立ち上げたわけですし、長く働きたいと思っているわけですが。

自分の愛する地元で地元のために働ける。しかも、自分の性格や考えを否定せず、むしろそれを生かしながら働けるというのは、ほんと、これ以上ない環境だなと思っています。自分の心がまず満たされてこそ、支援にも力が入り、家族の充実につながるということを実感しながら働くことができています。こういう場所が全国に1つでも2つでも増えるだけで、地域が少しずつ笑顔になる。まずは熊本でしっかり貢献しながら、成功体験を生かしていきたいです。
自分らしさを大事にというのは、法人内だけでなく、もちろん福祉にも言えることです。自分だけで頑張ろう、自分だけが変わろうとしなくていい。常に環境とともにあると思うんです。まずはありのままの自分を知ること。それで「自分取扱説明書」みたいなものが作れたら、こんなことを手伝って欲しいとか、これがしたいとか、こういうことならできるってことを伝えていけばいいし、何なら私たちが代弁したっていいんです。自分はこういう環境だったらこういう力が発揮できるよって、ネガティブではなくポジティブに生きていくための環境が必要です。

そういう支援ができるのも、やっぱりこの福祉施設っぽさがまったくないソーシャルスクエアだからこそだと思うんです。この雰囲気があるから来やすいんだって人も多いはずです。実際に、何人かの方は、スクエアに入って目を丸くしていました。そういう感覚、福祉の常識から外れたところの良さを感じてもらいたいです。そういう場所だからこそ、一歩を踏み出すのに時間がかかった方たちの本当に居場所になれるのかもしれませんね。

PROFILE
緒方豪太
緒方豪太

緒方 豪太(おがた・ごうた)
SOCIALSQUARE 熊本店
理事CSO(チーフサービスオフィサー)/スクエアマネージャー

熊本県生まれ。小学生から大学生まで13年間野球部に所属。大卒後、約9年間教育関係の営業職に従事。2012年より障害福祉の業界へ転職し、就労移行支援事業所で約6年勤務。2018年4月NPO法人ソーシャルデザインワークスに入職。現在に至る。

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