福祉とはメガネである

2019年1月にSOCIALSQUARE 西宮店に入社をした中島大樹へのインタビューを紹介します。事業所では、就労移行支援と自立訓練両方に関わりつつ、サービス管理責任者(サビ管)として動いています。タイトルにもある、”福祉とはメガネである”その真意とは?前職での経験を交えながら語っています。

Share on

中島大樹

ソーシャルコーディネーター/ソーシャルライター/社会福祉士/精神保健福祉士

ソーシャルスクエアという地域に開かれた現場で障害福祉に関わるクルーは、どのような問題意識を持ち、どのような理想を掲げて支援を行っているのか。その声をインタビュー記事で紹介していく「Crew’s Voice」のコーナーです。
今回紹介するのは、ソーシャルスクエア西宮店ではサービス管理責任者として、またオウンドメディア「ごちゃまぜタイムス」ではライターして記事を発信している中島大樹です。これまで福祉畑を歩んできた中島。その経歴や、そこで感じた課題が、ソーシャルスクエアでの日々に生かされているようです。

-ここから、スタート

ソーシャルデザインワークスには今年の1月から加わり、4月からは就労移行支援と自立訓練両方に関わりつつ、サービス管理責任者(サビ管)として動いています。西宮店では、今年の春にスタッフの大きな入れ替わりがありました。新しいメンバーとしての仕事の引き継ぎだけでなく、自分も「サビ管」としての新しい仕事がありましたので、ここまでは本当に大変でした。
正直なところ、一時期は、利用者さんからも「ちゃんと休んでますか?」と心配されるほどでした。でも、ここにきてようやく落ち着いてきましたし、チームワークも強くなってきました。利用者さんからも「雰囲気がすごく良くなってきた」と言われるようになっています。これからは、私個人としてやりたいと思っていたこと、取材や執筆のウェイトも増やしていきたいと思っています。

前職では、色々とやりたいことはあったんですが、大きな法人でしたので、なかなか自分のアイデアが通らないというところがあり悶々としていました。それで、自分がやっていきたいことを法人内でもしっかりと実現できるところはどこだろうと探していたところ、ソーシャルデザインワークスの求人を見つけて。法人の理念にも共感しましたし、ごちゃまぜイベントも面白そうだなと感じたんです。

−誰のための支援?

福祉の仕事に興味を持ったのは高校生の時でした。同級生に摂食障害のある女の子がいたんです。彼女はうつ病にもなってしまい、私も気にかけていたのですが、夏休みに亡くなってしまって。原因までは分からないのですが、その時、人の命ってこんなにも簡単になくなってしまうのかと考えました。それで福祉に興味を持って、精神保健福祉士という資格があることを知りました。こんな風に誰かを支援できる仕事があるのかと気づかされ、福祉の専門学校へ進んだんです。
学校を卒業して入ったのは、小さな作業所のようなところでした。精神障害の方が利用する就労継続支援B型の作業所です。組織自体はガチガチに硬い法人というわけではなかったんですが、常に作業に追われていました。

利用者さんたちは午後3時で帰るんですけど、彼らが帰った後も、納品をしないといけないということで、ひたすらスタッフがクッキーを焼かないといけないんです。精神に障害のある方の支援がしたいと思って入ったのに、実際にはクッキーばかり焼いてて。自分は何してるんだろうと思わされました。
最初は、利用者のためにやってることなんだと考えるようにしていました。けれど、本当にそうだろうかと感じるようになって。本当は、どのくらい注文を受けるのか、断るのか、スタッフがどれくらい介入すればいいのかを利用者主導で一緒に考えなければいけなかった。それなのに、支援する側が「注文が切れてしまうかもしれない」と思い込んで、注文を受けてしまっていた。そこには利用者の声が反映されていなかった気がします。


二つ目の法人にも、同じようなジレンマがありました。利用者のためにみんな頑張っているけれど、働いている人が幸せではないように感じていました。利用者のためだとは言いながら、関係ない仕事を押し付けられたり、あとは利用者に暴力を振るわれてしまうなんてこともありました。私たちは、利用者への虐待は絶対にダメだと教えられてきました。でも、実際には利用者の方から暴言を浴びせられたり、暴力を振るわれるケースもかなりありました。そういうのを目にするたび、働いている人の人権はどこに行ったんだろうと感じてしまって。私自身も利用者からの暴言があったりしました。
そういう状況になると、支援者も「自分たちには人権はないのか」とフラストレーションが溜まってしまうし、溜まれば溜まるほどそれが支援に出てきてしまうんです。最初はこっちが頑張らなくちゃと思うけれど、人間ですから、イラっとしてしまったり、言葉が荒くなったりしてしまうものですよね。

私が考えたのが、支援者の幸せでした。自分に余裕がないと、やっぱりいい支援ができないと思うからです。余裕なくてバタバタしてると利用者さんも話しかけづらい。自分が幸せで余裕がないとより良い支援はできないなと思わされました。
みんな最初は、情熱を持って支援をしたいと思っているんです。それなのに、利用者のためと頑張るにつれて自分に余裕がなくなって、良い支援をしたいと思っているのに虐待などにつながってしまう。それでは悲しいですよね。

法人も法人で「利用者のために」と理念に掲げるけれど、そこだけに光が当たり続けると、スタッフがないがしろにされてしまう。それではやっぱり利用者のためにはなりませんよね。利用者を守りたいと思えばこそ、スタッフの幸せを追求しなければいけないのではないか、と考えるようになりました。

-余暇の演出

仕事している時間だけじゃなく、それ以外の時間に対する支援も大事だと思います。前の職場では、親睦会はありましたが、なかなか親睦を図れていない面がありました。親睦会で会費を取られているから参加する、という人が多かったですし、大きな法人で職員も100人以上いたので、顔も名前もほとんどわからない。せっかく色々な職種の人がいるのに親睦につながらないんです。これではいい支援にもつながらないと感じました。

ソーシャルデザインワークスでは「ビジョンミーティング」と言って、理念の共有を図ったり、個人個人の思いを確認しあうミーティングがあります。それだけじゃなく、その後にも催しがあって。前回は、サイコロを振った目の数だけ電車の駅を進んで、その駅のお店でお酒を飲むなんていう企画があって楽しかったんです。

(visionMTG後の交流会の様子)

福祉の質を上げるには、スタッフ同士のコミュニケーションも大事な鍵だと思います。今、私が個人的に力を入れているのが「Thanksカード」です。もともと法人内のコミュニケーションツールとしてあったもので、助けられた人や、感謝を伝えたい人にメッセージを書いて渡すカードなんですが、それを活用したいと思っています。文字とか手紙とかが好きなんですよ。ちょっとした行政書類を送る時も一筆書いたりしていますし、利用者の親御さんにも手紙を書いて渡したりしています。口頭だと残らないけれど、形に残るものとして感謝を伝えることには大きな意味があると思うんです。サンキュー、ありがとうという言葉も、やっぱり形に残したいですよね。

今回、西宮店として新しい求人を出しました。そこにも書いているのですが、働いているスタッフが幸せになることが大事だと思います。そして、個々の幸せと同じくらいチームの幸せも大事にしたい。チームの幸せを考えることが個人にも還元される、そんなチームワークを作っていきたいですね。

(個人のロッカーに「Thanksカード」入れが設けられている)

ちなみに、私は以前から取材や執筆に興味があって、色々な人に話を聞いたり活動を取材したりして、それをブログで発信してたんです。ようやく仕事も落ち着いてきたので、今後は自分の活動も続けていきたいと思っています。ごちゃまぜタイムスでも記事を書きました。それを増やしていくというのが、今の個人としてのやりたいことですね。

-次のごちゃまぜ

西宮でもごちゃまぜイベントは盛り上げていきたいと思います。今こうして就労支援をしていますが、障害のある人たちと関わったことがないのに、今日から障害者があなたの会社に行きますよ、教育して下さいと言われても、ほとんどの人は困ってしまうと思うんです。関わったことがないわけですから。だからこそ、小さいときから自然に入っていくことが大事だと思っています。大人になっていきなり「これからは多様性だ!」と言っても、やっぱり受け入れられないですよ。だからちいさな子どもたちに、ごちゃまぜを体験してもらいたいと思っています。
西宮店は店舗がガラス張りなこともあって、あそこなんの場所?みたいに気にしてくださっている方が結構多いように思っています。なので、もっとスクエアに自由に出入りできたり、場所貸しをしてみたり、カフェにしちゃうとか、これまで福祉や障害とは全く関係のなかった人たちが自由に出入りできて、知らないうちに障害と関わっている、そんな場所になれたらいいですね。
もう一つ、大事なことは、差別はいけない、多様性が大事だと言っても、自分が常に正しいわけではないし、自分だってどこかで誰かを差別してしまうかもしれない。そういうことを頭に入れておきながら人と接することを忘れずにいたいと思っています。どこでどう差別につながるか、わからないのが現代だと思うので。
常々、福祉ってメガネになればいいと思っているんです。メガネって、今では当たり前のものですけど、メガネがなかったらほとんど目が見えないわけですから、近眼や乱視もまた障害のはずです。障害として意識しなくなってるだけなんです。技術やサービスが向上して、メガネみたいに、もっとおしゃれなものができる。そういうことを繰り返していく先に、福祉を意識しなくてもいい社会がある気がします。

PROFILE
中島大樹
中島大樹

中島 大樹(なかじま・だいき)

ソーシャルライター/社会福祉士/精神保健福祉士
1985年生まれ。兵庫県西宮市出身。西宮市で生まれ育った生粋の宮っ子。神戸医療福祉専門学校卒業後に高齢・障害・貧困・生活保護など様々な分野の福祉現場での経験を持つ。「福祉をもっと当たり前に、福祉をメガネに」をモットーに情報発信や取材活動も行っている。アルムナイ(社外プロジェクトメンバー)として参画。

クルーページを見る
Share on