医療と福祉の理想的な関係

2020年入社、ソーシャルスクエア 熊本店でサービス管理責任者として働く北野 佳奈(きたの・かな)をご紹介。美容部員や看護師を経てソーシャルデザインワークスに入社。医療分野と福祉の理想的な関係を見据えながら、日々の支援について考えていることを語ってもらいました。

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北野 佳奈(きたの・かな)

SOCIALSQUARE 熊本店 サービス管理責任者/看護師

ソーシャルスクエアという地域に開かれた現場で障害福祉に関わるクルーは、どのような問題意識を持ち、どのような理想を掲げて支援を行っているのか。その声をインタビュー記事で紹介していく「Crew’s Voice」のコーナーです。

今回は2020年入社、ソーシャルスクエア 熊本店でサービス管理責任者として働く北野 佳奈(きたの・かな)をご紹介。美容部員や看護師を経てソーシャルデザインワークスに入社。医療分野と福祉の理想的な関係を見据えながら、日々の支援について考えていることを語ってもらいました。

笑顔を追求できる

2020年3月に入社し、1年半ほどソーシャルスクエア 熊本店のサービス管理責任者として働いています。就労移行支援自立訓練どちらのメンバーさん(利用者様)も支援させていただいています。

サービス管理責任者としては一人ひとりの目標に合わせた個別支援計画の作成や、訪問看護の方や医療機関、関係機関との連携をはかりながら、メンバーさんが目標に向かっていけるようにする、というのが私の役割かなと思っています。熊本店ではメンバーさんが「行きたい」と思える環境を目指して、日々の支援を行っています。

例えば、イベント実施やスクエア内の装飾で「四季」を感じられるようにしたり、メンバーさんと一緒に「スクエア内をこうしよう、ああしよう」と話し合いをして、「自分たちの居場所を自分たちで作っている」という感覚を持ってもらうように心がけています。あとは基本的なところですが、メンバーさん同士の適度な距離感やパーソナルスペースを保つことができる配席など、物理的な環境面は気をつけています。「ここなら居られる」「ここなら落ち着いて活動できる」という声を大事に、環境整備をしています。

提供しているカリキュラムについても、今通われているメンバーさんの意見や好みを反映して行っています。今はスポーツをしたい、体を動かしたいというメンバーさんが多いので、体育館に行って運動をするようなカリキュラムをやってみたりしました。定期的にアンケートをとっているのと、3ヶ月に1回ぐらいの頻度で「スクエアサロン」という名前の話し合いの場を設けて、「スクエアでどんな活動をしたいか」などを話していただいていますね。

私には統合失調症を患っている親戚がいて、家族として苦しんだ部分もあるし、何より本人が一番苦しんでいるというのを目の当たりにしてきました。子供の頃からその親戚と一緒に過ごしてきたのに、スクエアのことを知るまで統合失調症のような病気や障害のある方に対する支援があることを全然知らなかったんです。支援してもらえるような福祉や訓練できる場所にも繋がっていなかった。本人の生きづらさは相当なものだったと思います。同じように生きづらさを抱えているのに、こういう福祉、サポートがあるんだよっていうのを知らないかたが、まだまだたくさんいるんだろうなって思うんです。

そういった意味でも、スクエアのような居場所を無くしたくない、この環境をなくしちゃいけないなと。もっとハードルを下げて、気軽に利用できるような状況にしていきたい。例えば、風邪をひいたら病院に行くように、勉強を頑張りたいと思ったら塾に行くように、就職や地域生活に助けが必要だったらスクエアのような場所に、気軽に行けるという状態が理想だなと思っています。

前の職場で一緒だった、熊本店の緒方陽子さんの紹介で法人(NPO法人ソーシャルデザインワークス)のことやソーシャルスクエアのことを知りました。
でもその頃は、准看護師から看護師への国家試験に挑戦している最中で、最初はお話を聞いても正直に言うとあまり福祉に興味が持てなかったんですね。でも何度か陽子さんとお話をしているうちに、統合失調症の親戚のこともあって、看護師以外のかたちで生きづらさや生きにくさを抱えているかたに「何ができるのかなぁ」という気持ちになってきました。同時に、そんな中途半端な気持ちで転職してはダメなんじゃないかなという気持ちもあって、葛藤していました。

ちょうどその頃、発達障害のお子さんがいるママ友から「カナちゃんが、スクエアのような場所をもっと大きくして広めてくれたら、うちの子が大人になった時に安心だなぁ」という声をもらって…その時に法人の理念とかビジョンである「20年後の社会を変えていく」ということと一致していて、すごく心を打たれたんですよね。

そのママ友に「そんなに生きにくいの?」と尋ねると、「どうしても偏見の目だったり、育て方が悪いんじゃないかと厳しい言葉をいただいたりしてしまう。母親からみれば全然普通だし、人と得意不得意が少し違うだけなのになぁ、と心が折れそうな時もあるよ」と答えが帰ってきて。何ができるかわからないけど、とモヤモヤしてた気持ちが、こういう生きにくさを感じている人たちの「居場所づくり」をしたいなぁと輪郭を帯びたような感じがしたんです。

実際に入社してみて、すごく働きやすさとやりがいを感じました。「私向いてないのかな」とか「間違った支援をしてしまったんじゃないか」と悩むこともありましたが、利用者さん一人ひとりに向き合って、メンバーさんの笑顔を追求できる職場にたどり着けたのは、すごく良かったなと思っています。

医療と福祉の理想的な関係

医療の分野で働いていた時は、主治医の明確な指示や治療方針があったので、それに従って様々なケアをしていくという形でした。最初はスクエアでの支援も、それにとらわれすぎて医療視点でメンバーさんを見すぎてしまうという癖があったように思います。

でも今では、医療の知識があることでメンバーさんの主治医や医療機関の方との連携がしやすい部分もあるんだなと感じています。正直、看護師として働いていた時には、ほとんど「福祉」について知らなくて「福祉って何をするところなんだろう?」と思っていました。特に障害者福祉についてはイメージがなくて、高齢者とか介護とかのイメージが強かったです。

この間、医療機関の方に「スクエアって何をしているの?」と聞かれることがありました。「メンバーさんが夢や目標に近づけるように、支援する場所ですよ」というだけでは抽象的すぎるので、そういった支援をする時にやはり体調が大事になってくると思うので、その部分は医療機関の方や主治医と連携をして、メンバーさんがポジティブで良い状態を保てるように環境を整えています、というお話をするとわかっていただけた感じがありました。

逆に、医療機関の方々は病院外でのメンバーさんの様子をご存知ないので「こういった部分に注意してみて欲しい、観察して欲しい」というような要望もいただくことがあって、そういう連携を行う時に正しい医療の知識があることは良かったなと思えた部分でしたね。

看護師をしていた時には、検診(健康管理)や整形病棟、産婦人科などさまざまな科で働いていましたが、いまひとつ「福祉」っていうと、高齢者とか介護のイメージが強かったので障害福祉にイメージを持つことはなかったです。医療と地続きの感じがなくて、それぞれ切り離されたイメージでした。入院中の患者さんの状態は把握しているけれど、退院した後どのように過ごしているか意識することは少なかったように思います。

今は、スクエアに通っているメンバーさんには主治医がいらっしゃるケースがほとんどなので、メンバーさんが病院に「言えていること」「言えていないこと」っていうのがあるなと感じています。例えば、恋人との関係がうまくいかなかったり、メンバーさんが落ち込むような出来事があった結果OD(オーバードーズ・多量服薬)をしてしまったり、リストカットなどの自傷行為につながっていたりという行動に繋がっているケース。病院の診察時間は限られているので、行動に対する対処や治療はできても、「落ち込むような出来事」の分析や気持ちの寄り添いは病院だけではなかなかできません。なので病院の先生に直接言いにくいこと、言いづらいことも私たちクルーが橋渡し役になって連携していきたい。一緒に通院に同行したり、医療機関の方々とのコミュニケーションを通して、メンバーさんの思っていることをきちんと代弁していくことで医療と福祉の役割分担ができていくと思うんです。メンバーさんが真ん中にいて、その周りに医療、福祉、家族、地域が支えているようなイメージです。

そういう関係性の中で、ちょっとしたことでも、アドバイスを仰げたりスクエアでの過ごし方についてポジティブに情報交換ができる状態が理想だと思っています。それにはスクエアを利用する前から積極的に医療機関の方と顔をつないでおくことが大事になってくるのかなと思います。

熊本店で実施された「医療のあれこれ相談」カリキュラムの様子

オンとオフ、そしてチームワーク

今の職場(スクエア)へ転職の決め手になった理由が2つあって、まず働き方の部分で「子供や夫と過ごす、家族の時間がきちんと取れる職場」というところ。もうひとつが「自分で企画してアイディアを出してチャレンジできる環境」という部分でした。今までの仕事では家族の時間が取れずに、土日祝日も仕事ということが多かったので自分の子供たちが何か訴えているのを、ちゃんと聞いてあげたいなと思っていて。仕事と家庭のバランスが取れるところが、とても理想的でした。

実際に働いてみて感じたのは、チームワークがとても良い環境だなと思っています。クルーみんなが得意、不得意な部分を補い合いながら、日々仕事ができています。どうしても気持ちに負荷がかかりやすい職種ではあると思うので、チームで上手く息抜きをしながらお仕事できている感じですね。世代関係なく、みんなで和気あいあいできるような環境がすごく良いなと。自分で工夫してチャレンジしていくにしても、1人ではやっぱり限界があるし色々な視点を取り入れながら仕事ができたほうがいいなと思っていて、そういう面でもチームワークや風通しがいい組織っていうのは強みだと思いますね。

やりがいという部分では、やっぱりメンバーさんの笑った顔を見られることですね。まったく笑顔がなかったメンバーさんが笑うようになった、週に1日スクエアに来られるか来られないかぐらいだったメンバーさんが毎日来所してくださるようになったり、そういうポジティブな変化を間近で見られるのが一番のやりがいだなと思いました。医療は答えがあって、治療方針のような大きな道筋に沿ってケアをすることが正解でした。でも福祉はそうじゃなかった。最初は戸惑うこともあったけれど、最終的にメンバーさんが笑顔になってくれている、これが正解だと思うようになりました。

どうしても支援の外にいる方々からは、メンバーさんの一つひとつのステップが些細で小さいものに思われがちで「何もしていないんじゃないか」と見られてしまうのかもしれないんですが、そのメンバーさんにとっては、とてもとても大きな一歩なんだよって、声を大にして言いたいですね。

今後は熊本エリアに店舗が増える予定で、クルーも増えていく過渡期になっていくと思います。複数の店舗で連携しながら役割分担をしていきたいなという気持ちがあります。メンバーさんが元気になってもっと活動的になりたい、外に出たいという時には複数のスクエアを行き来したりしてみるというのも面白いんじゃないかな。新しい店舗については、まだ決まっていないことも多くてこれから忙しくなるなという感じなんです。でも、どんどん熊本の福祉を盛り上げていける予感がするので、今からわくわくしています。

 

 

PROFILE
北野 佳奈
北野 佳奈

北野 佳奈(きたの・かな)
SOCIALSQUARE 水前寺店
アシスタントマネージャー / サービス管理責任者 / 看護師

1980年生まれ。美容部員として5年、准看護師として9年勤務する。准看護師として勤務する傍ら、専門性を高めるため看護専門学校に進学し看護師の資格を取得。その後、NPO法人ソーシャルデザインワークスと出会い、理念に共感し2020年3月入職。

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