クルー対談 vol.3 小松×村上|そこに「熱」があるか?

今回はOPENから半年、ソーシャルスクエア郡山店の管理者・小松知寛とサービス管理責任者の村上卓哉に対談インタビュー。どのように地域に根差した福祉事業所として日々支援を行っているのか、また障害の有無を意識しない社会の実現のためにどのような地域活動を行っているのかを取材しました。

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SOCIALSQUARE 郡山店クルー対談

小松 知寛(こまつ・ともひろ)× 村上 卓哉 (むらかみ・たくや)

ソーシャルスクエアという地域に開かれた現場で障害福祉に関わるクルーは、どのような問題意識を持ち、どのような理想を掲げて支援を行っているのか。その声をインタビュー記事で紹介していく「Crew’s Voice」のコーナーです。今回はOPENから半年、ソーシャルスクエア郡山店管理者・小松知寛とサービス管理責任者の村上卓哉に対談インタビューどのように地域に根差した福祉事業所として日々支援を行っているのか、また障害の有無を意識しない社会の実現のためにどのような地域活動を行っているのかを取材しました。
村上卓哉(写真・左)・小松知寛(写真・右手)

ソーシャルスクエア 郡山店オープンからの約半年を振り返って

村上卓哉(以下・村上):
開所から半年、怒涛の半年間でしたね(笑)僕は特に入社してすぐ店舗の立ち上げだったので、筋トレみたいな時期でした。

小松知寛(以下・小松):
怒涛でしたね。みなさん本当、よく頑張ってくれたと思います(笑)郡山は就労移行支援の事業所が、ここ数年でたくさん立ち上がっている地域です。まずその中で、地域にどう認識してもらうか、認知してもらうかという課題がありました。

村上:
病院や自治体、相談支援などの関係機関など、本当に足繁く通いましたよね(笑)

小松:
ひたすら、みんなで足を使いましたね(笑)しっかり顔を合わせる事が大事だと思ったんです。まず顔を覚えてもらって、会話をして「●●さんのいる事業所なら安心して任せられるね」と思ってもらう。同じ就労移行支援でも、実態は事業所によってまったく違うと思います。スクエアの強みや特徴を伝えるために説明会や内覧会もたくさん行いましたね。

村上:
「若い職員が多くて事業所の作りやデザインも含めて従来の福祉のイメージに抵抗感がある方にはお勧めの事業所です」とお伝えすることが多かったです。あとは大手の就労支援事業所とは違って、お一人おひとりの状況や能力に合わせた個別支援が実現できているんじゃないかと感じているので、そこもポイントですね

小松:
そうですね。他の就労支援事業所だと週4〜5日、必ず来所してくださいねというような事業所があったりしますが、ソーシャルスクエア 郡山店(以下:スクエア)は来所自体もシフト制で、体調や精神面に合わせて来所できる、ご自身のペースに合わせて来所頻度も活動内容も自由に選択していただけるところが、選んで頂いている理由だと思います。

村上:
別の店舗で自立訓練(生活訓練)の支援員をやっていたクルーもいるので、「まず来所するのが目標」という段階の利用メンバーさんから、自分らしく「働く、働き続ける」ための就職活動をしたい方まで、本当に幅広い方々に合わせた個別支援ができていると感じています。

小松:
支援クルーの中で共通認識として持っているのは「週20-30時間の就労を目指す」というのが全てではないというところ。もちろん、制度の枠組みの中で評価されるのはそこだったりするんですが、それ以外のゴールも利用メンバーさんが自己選択できて到達できた先だったら、全然アリです!というような姿勢です。「就労移行支援」って、どうしてもゴールが「週20-30時間勤務の障害者雇用」みたいな形で固まってしまっている部分があると思うんですが、今はいろいろな働き方があるし、スクエアに通っている間はそういう情報にたくさん触れる事ができて、トライアンドエラーができる。そんな時間もひとつの価値なんじゃないかと思っています。

村上:
きっとゴールまで一直線じゃない、直線距離じゃない支援みたいなものが地域の皆さんにも受け入れられているところなのかな。本当の意味で一人ひとりに合わせていく余白みたいな考え方ができるのも、特色の一つです。

小松:
そのあたりの視野の広い考え方を持てている支援クルーが揃ったっていうのも良かった。最近、それが実を結んで良い結果が見えてきたケースも多くなってきましたね。

村上:
そうですね。リワーク(復職制度)としてスクエアを利用されて、無事卒業された方もいらっしゃいますし、スクエアを利用されるまで長くひきこもり状態だった方が、今は週3程度通われていたり。もちろん、ご家族の協力もあってのことですが、利用メンバーさんの人生に触れさせてもらっているんだなっていう感じがしました。ドラマが作れちゃうぐらいの。

小松:
その方は病院にも通院されていない方だったので、2〜3ヶ月体験していただいてその間にご家族と病院選びをしていただいたような形ですね。ひきこもり状態がこれ以上長く続いてしまうと、外に出ることがますます大きなハードルになってしまうので、定期的に外に出られる状態、家族以外の人とコミュニケーションをとる機会を作る、というところから始めていきました。

村上:
一見「就職や就労」というゴールからは遠く感じるかもしれませんが、このステップがないと今後の人生の選択肢がとても狭くなってしまう。そういうお話をさせて頂きながら、ご本人もよく頑張って下さいました。

小松:
長く引きこもっているという方やそのご家族が相談に来られるケースはとても多いです。ただ、ほとんどが支援やサポートからこぼれてしまう。体験を予定していただけれど、緊張や体調不良でキャンセルとなったり、天候や気温も影響します。「支援につながって環境を変える」というのはご本人にとってはストレスが高いこと。タイミングが合えば、また遊びに来て欲しいなと思っています。

談笑する村上(左)・小松(右)

そこに「熱」はあるか?

小松:
僕はずっと、従来の「障害のある方が通う施設のイメージ」に違和感があって…空間にお金がかけられていない感じとか、自分に合った施設を選ぼうにも選択肢があまりにも狭い。オシャレなものカッコいいものは他のサービスでは当たり前に考慮されているはずなのに、それがない。でも、ソーシャルスクエアではまずそこを考えられるんです。

村上:
まず、図面を引いていましたからね、小松さんは(笑)

小松:
そう(笑)大学院では建築を学んでいたし、前職も住宅の営業でした。その経験とかスキルと自分の思っていることを集大成させたのが、ソーシャルスクエア郡山店かなと思ってます。空間の作り方とか、結構こだわらせてもらいました。スクエア(郡山店)の構造は、個人が地域社会と繋がるためのグラデーションを空間で表現してみているんです。

スクエアの入り口から対角線上、一番奥にあるのが面談室でここが一番「パーソナルなエリア」です。そこから、カリキュラムなどを行う活動エリアやカウンターなど他の人と一緒に活動する「コミュニケーションエリア」、そして入口に近いスペースがスクエアライブラリー、カフェカウンターなど地域の人が出入りできる「オープンエリア」「ここは、あなたと社会とつながる広場。」というコピーどおりのスクエアになったな、と。

村上:
店舗の立ち上げです!って図面から引き始められる管理者は、他にはいないと思いました(笑)物件探しから、本当に愛が詰まった空間です。ブティックかな?とかカフェができたのかな?という地域の方もいらっしゃいますよね。

小松:
そうそう。嬉しい誤解ではあるんですが、ちゃんと障害福祉の事業所なんだよということや、スクエアのコンセプトを知ってもらいたいので、地域の方がふらっと立ち寄れるようなイベントを定期開催したりしています。今だと、スクエアライブラリーという地域の方の本の寄付で運営する、まちの図書館のような、カフェのような、各々が自由に過ごせる空間をスクエア内に設けて地域の皆さんに開放して活用してもらっています。

村上:
スクエアがオープンする前にも「椅子のワークショップ」を行ったんです。利用メンバーさんが活動の時に使う椅子を、地域の方や子供たちに作ってもらうDIYのイベントです。

小松:
「地域で福祉事業所を作った」という体験を持って帰って貰いたかったんですよね。そういう構想はかなり初期からあって、ねらいとしては「そういえばここの椅子作ったんだよー」という感じでスクエアのことを覚えて貰おうかなと。

オープン前に開催した「椅子のワークショップ」で作成された椅子

村上:
まず来てもらって、一緒に楽しい体験をしてもらうのが大事ですよね。

小松:
子供のうちはまだスクエアみたいな福祉事業所の役割とか、どういう場所なのかとか、なかなか理解しにくいのかもしれません。でも福祉事業所のイメージや思い出を持っていてもらうことは、とても大事なことだなと思ったんです。彼らが成長していく中で、地元にこういう施設があって、楽しく椅子作ったよなぁって思い出してもらうことで障害や福祉施設へ思いを馳せてもらえたら嬉しいなと。

村上:
ワークショップの後、子供たちがふらっとやって来て「宿題やってもいいですか?」ってスクエアの中に宿題をやりにきていました。ちょうど春休みだったのかな。おお、そう来たかと思いましたね(笑)

小松:
そんなふうに、地域の人たちが気軽に立ち寄れる場所でありたいですね。

管理者という立場からサービス面で気をつけたことは、支援クルーみんなが「熱を持ってできているか」を気をつけていました。面談やカリキュラムの提供ひとつとっても、そもそも支援する側に熱がないと、利用メンバーさんに何も伝わらないなと感じていて。僕が直接利用メンバーさんへ支援をする機会は少ないですけど、チームとしてずっと「熱」を保っていたいなと感じていますね。

村上:
全く同意見です。僕はサービス管理責任者として支援のクオリティを監督する立場にいるので、一緒に支援していきながら微妙なニュアンスを言語化して、チームとして支援の質を高めることを意識しました。
内装や見かけだけオシャレでも、肝心の「支援」がダメだったら元も子もない。悪い意味で「これでいいんだ」と思考停止するような支援をする事業所にしたくなかったんです。

小松:
幸いモチベーションが高い支援クルーばかりだったので、どんどんチームで支援力をアップ出来たのかなと思いますね。

村上:
本当にそう。支援って一人じゃできないんですよ。改めて、支援には正解がないなと思ったし、ずっと自分を疑いながら僕自身も一緒に成長できたなという気持ちが強いです。常に「これでいいのかな?」と色々な可能性を模索して、最適解を考え続けることが出来ているのかなと思います。

小松:
そういう空間づくりや雰囲気づくりが実を結んで、「就労移行支援」だからスクエアを選んで下さったわけじゃなくて、「スクエア」だから通いたいって選んで下さる方が多いのかなと思っています。

村上:
そうですね。見学や相談会にいらっしゃる方には「他の就労移行支援とは違うよね」と言って頂けることが多いです。

小松:
就労移行支援だと、会議室やオフィスっぽい感じの雰囲気の事業所がほとんどなのでそういう意味では雰囲気や空間ともに差別化が図れているのかなと。ご利用を検討されている方は、色々な事業所を見学されてスクエアにもいらっしゃることが多いですが、最終的に「スクエアがいい」と選んで頂けるというパターンが多くて、嬉しいかぎりですね。

村上:
地域のみなさんからは、「就労移行支援」サービスっていう枠組みじゃなくて、スクエアだったら何とかしてくれる!というような期待感を感じますね。

小松:
期待は裏切れないですね。(笑)
だからこそ、支援にしろ地域活動にしろ、チームで「熱」をたやさずに頑張れた半年間だったと思います。

ソーシャルスクエア 郡山店 支援クルー

違和感から感じた「使命」

小松:
前職で住宅の営業職をしていた時に知ったことなんですが、マイホームを購入する人はだいたい住宅ローンっていうのを組む場合が多いです。住宅ローンは30年とか返済期間が長いローンなので、団体信用生命保険といってローンを組んだ人が、病気やがん、もしくは死亡した場合にローンの返済金額をまかなえるだけの保険がおりますよーという制度があったりするんですね。ただ、精神障害の場合はこの保険が使えずに、住宅ローンは残ったままなんです。

村上:
え!?じゃあ、家を買ってローンを返済していたけどうつ病になりました、働けませんっていうケースはどうなるんですか?

小松:
ローン自体は何も変わらず、減額もされません。満額払い続けなければいけないんですよ。
そういう現状を知って、例えばローンがある状態で就労移行支援などの支援を経て障害者雇用で仕事に就きましたという場合、どうしても現状では賃金が一般水準より低くなってしまう。これだと住宅ローンを返済しながらはきつい。僕は、病気や障害があっても「稼ぎたい人はしっかり稼げる」就労も支援できる就労移行支援をしていきたいなと感じています。

村上:
障害があるといいうだけで、その人のスキルやポテンシャルを考慮されずに就労せざるを得ない環境、というのは乱暴ですよね。

小松:
そう。うつ病や統合失調症などの精神障害は、誰でもなりうる可能性があります。がんやその他の病気と何ら違いがない。賃金の面でも業種の面でも、あまりにも就労の選択肢が少ないと感じています。だから余計に病気や障害を隠して働くしかない。それで企業や周囲から配慮をもらえず、また調子を崩す…といった悪循環にも繋がってしまいます。

村上:
僕ら就労移行支援をやっている側も、もっと幅広い就職の支援ができるべきだし、それが実現できたらもっと多くの方に選んでもらえる気がしますね。

小松:
そうですね。「障害」というだけで、働きかたの幅もひとまとめにされてしまう様な現状は、課題として残念だと思っています。将来的に幅広い就職の支援ができるような事業所にしていきたいです。

村上:
僕は就労継続支援A型で支援員をやってきた経験から、対価を意識しながら実践的に訓練できる環境を整えていきたいなと思っています。実際に、軽作業や内職的な仕事で時給800円程度をまかなおうと思うと、かなりの個数を限られた時間で作らなければならない。スピード感やクオリティ面で企業から求められることを実際に感じてもらうことも大切だと思っています。

小松:
そうですね。就労移行支援に通っているメリットとして「安心して挑戦できる」っていうのがあると思うんですけど、職場という環境に不慣れなままだったり、自分の特性がわからないまま社会に出てしまうと、そこでうけるダメージはすごく直接的ですよね。それでメンタルや体調を崩してしまう。失敗が失敗のままトラウマになってしまうのはもったいないです。

業務中の小松

村上:
支援を受けながらであれば、僕たちがフォローできたり、たとえ失敗しても「うまくいかない方法だった」と次に活かす事ができる。それは障害のあるなし関係なく、働き続けるためにも必要なスキルだと思いますね。さっきの話じゃないですけど、僕たちも企業と協力して障害の有無にかかわらず、「働きかた」の幅を広げるアプローチができるんじゃないかな。

小松:
そうなんです。僕たちも次の半年間に向けて、よりパワーアップしていきたいですね。

村上:
開設から今までは、スクエアを認知してもらうための種まきの時期だったと思っています。
次の半年間は、すでに出てきた実績をもっと発展させていきたいですね。他の事業所と違って、スクエアの強みは「変わっている」ところだな思っています。異業種から転職してきた支援クルーがたくさんいて年齢層も若め、事業所自体も特徴的だし、就職実績としても革新的な事ができたら、ますます「スクエア」っぽいのかなと。

小松:
うんうん。そういう自由で新しい試みが、利用メンバーさんのためになって、地域の方々のためになってという状況が理想ですよね。いい意味で「目立って」いたいなと。社会的、地域的に求められている役割をちゃんとまっとうしつつ、それ以外の面でも地域への働きかけやイベント、つながりづくり、まだまだチャレンジしていきたいですね。

    

ソーシャルスクエア 郡山店
働きたい。その思いをカタチにします
郡山店はSOCIALSQUAREの5拠点目、福島県内としては3拠点目として2021年10月にオープン。就労移行支援の単独事業所として、働きたいという思いに寄り添いご利用される方々の、のばしたいことや好きなことに取り組める「セレクトワーク」の時間を中心に、それぞれのニーズに合わせた支援をご提供いたします。また実習や工賃業務など就職に近い環境で実践しながら、就職を目指していけます。

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