クルー対談 vol.5 北山×大石| 偶然が重なってできたこと
上乃裏店はソーシャルスクエアの8拠点目、2024年1月にOPENしました。今回はソーシャルスクエアの運営法人ソーシャルデザインワークスの代表・北山 剛(きたやま・つよし)とソーシャルスクエア上乃裏店のスクエアクルー・大石泰山(おおいし・たいざん)に対談インタビュー。ソーシャルスクエアでは九州3ヶ所目の出店。なぜこの地に出店したのか。どのような想いで地域に根差した福祉事業所として日々支援を行っているのか。そして、これからのソーシャルスクエア上乃裏店の取り組みについて取材をしました。
SOCIALSQUARE 上乃裏店クルー対談
北山 剛(きたやま・つよし)× 大石 泰山(おおいし・たいざん)
ソーシャルスクエアという地域に開かれた現場で障害福祉に関わるクルーは、どのような問題意識を持ち、どのような理想を掲げて支援を行っているのか。その声をインタビュー記事で紹介していく「Crew’s Voice」のコーナーです。
上乃裏店はソーシャルスクエアの8拠点目、2024年1月にOPENしました。今回はソーシャルスクエアの運営法人ソーシャルデザインワークスの代表・北山 剛(きたやま・つよし)とソーシャルスクエア上乃裏店のスクエアクルー・大石泰山(おおいし・たいざん)に対談インタビュー。ソーシャルスクエアでは九州3ヶ所目の出店。なぜこの地に出店したのか。どのような想いで地域に根差した福祉事業所として日々支援を行っているのか。そして、これからのソーシャルスクエア上乃裏店の取り組みについて取材をしました。
大石泰山(写真・左)・北山 剛(写真・右)
偶然から始まった上乃裏店
—— 編集部 - 上乃裏店の出店の経緯について教えてください。
大石泰山(以下・大石):
きっかけはサテライト店舗を探していたところにあります。熊本エリアで利用したいという声が多く集まったと同時に、今ある店舗のみではご利用メンバーさんを受け入れきれなくなったことで、熊本エリアでもう1店舗出店することになりました。
しかし、物件探しの過程で結構つまずいていたといいますか…
北山剛(以下・北山):
『福祉事業所』というだけで貸主さんから断られることが多々あったんです。
中には障害のある方に対して偏った考えを持っている人もいて、悔しい気持ちになったのを覚えています。言った方々にとってはそこまでの悪意はなかったと思うのですが、熊本県はまだ障害に対する壁があることを痛感しました。
その後、どうにかこうにかテナントを探してやっと見つかったのが、今の上乃裏店です。
—— 編集部 - なんとも悔しく寂しいエピソード…。
上乃裏店はソーシャルスクエアで初めての「店舗併設型」の拠点でしたが、最初からワインショップをしようといった考えがあったわけではなかったんですね。
大石:
そうですね!ワインショップをしようって話になったのはテナントが見つかってからでした。熊本県ではすでに水前寺・上熊本と2つの拠点を運営していたことから『熊本で体験実習先や、就労経験を積めそうな環境はなかなか見つからない』という話があがっていたんです。
福祉サービスについて認知があまりされていない地域だと、その地域の企業や店舗は実習を受け入れてもらえないというケースはよくあります。熊本拠点では特にその部分が課題になっていました。
そこで
「それなら、僕たち自身が接客経験を積める場所を作ろう」
と北山さんが言ってくれたことで、店舗併設の福祉事業所として上乃裏店が誕生しました。
北山:
前のテナントが飲食店だったので、その内装を活かしてワインショップを併設してみることにしたんです。
そしたらこれが…結構上手く噛み合ったんだよね。
大石:
立地や人に恵まれましたね。人通りが多い場所なので「何してるところなんだろう」と思ってくれる人も多かったので。そんな小さな興味からソーシャルスクエアのイベントや活動を見守ってくれて、徐々に地域の皆さんに認識してもらっていったんだと思います。
また、ソーシャルスクエアの活動を知らずにワインを目的に来所いただいた方からも福祉サービスについてご説明すると「知人の娘さんがひきこもってて悩んでるみたいだから、ここについて紹介してみる」と言っていただくこともあって、
色々なつながりからソーシャルスクエアや福祉サービスについて知っていただけるようになりました。
北山:
すごい良いつながり方だ。僕自身こんな感じに「偶然起きること」って結構大事にしたいって思っているんです。
ソーシャルスクエアってどの拠点もあえて福祉っぽくない内装を心がけていて、その理由の1つには「なんかちょっとオシャレな店があるなーと思って地図調べてみたら、実は福祉事業所だった」…みたいな、なんの気もない興味や偶然から福祉に出会う、そんな偶然に期待している部分があります。
福祉や障害が身近にない人ほど、福祉サービスについて知らない人も多いし、興味を持たれにくいものなんですよね。でも、偶然少しでも福祉に触れることさえできたら、いつかの自分や家族・知人を救う手立てにもなるかもしれないので。偶然が本当に起きたらいいなと思って拠点の立地や内装にはこだわっています。
実際「カフェだと思って入ってみたら、福祉事業所だったんですね!」って間違えて来所される方も結構いらっしゃいます。間違って入っちゃったって話も、友人や家族にしてみると面白いし「あそこって福祉事業所なんだ」ってちょっと頭の片隅にいれてくれるだけでもいいなって思うんです。
大石:
上乃裏店の場合は、ワインを購入されたお客様からも「あそこにいるのはお客さんですか?」ってご利用メンバーさんをお客様だと間違われることもよくあるので、度々「実はここでは福祉サービスもしていて…」とご説明させていただいています。
そこから広がるお話もあるので、良い偶然は起こり続けていますね。
上乃裏店は、地域の方々からは福祉事業所という側面よりも、ワインショップとして注目されていることも多いので「福祉事業もしているワインショップ」って認識されてる感じはします。そのおかげで地域・商店街のイベントにも「ワインショップ」のソーシャルスクエアとして、頻繁に呼ばれるようになりました。
ワインショップと地域との融合
—— 編集部 - ワインショップを通じて地域とのつながりも深まっているようですね。具体的にはどのような活動をされているのでしょうか?
大石:
例えば、ワインショップをご利用していただいたお客様がアルゼンチンタンゴをしている方で、上乃裏店でワークショップを開いてくれたり、レンタルスペースとしてご利用していただいたりしました。
地域の方々にとって、ここが単なるワインショップ以上の場所になっていることが嬉しいです。
地域の皆さんでスクエアのことを話題にしていただけたのか、市役所や病院に相談に行けない・行きにくいという方が、ご自身の障害に関する悩みを相談しにスクエアに訪れてきたこともあって、地域の皆さんとのつながりを感じましたね。
初めはサテライト店として探していた拠点でしたが、九州拠点の中で一番ご利用メンバーさんの増加率が高いのは上乃裏店なんです。これは思わぬ結果でした。
—— 編集部 - それはすごい!!今回のお話を聞くとかなり偶然の力が働いている感じがしますが、北山さんは上乃裏店が今のようになると予想はしていましたか?
北山:
綿密に計画して結果を得たというより、こうなったらいいなと思ったことが本当に全部上手くいったって感じですね。
たまたま、立地の良いテナントが見つかって
たまたま、そこが元々飲食店だったから、お店をやってみて
たまたま、そんなスクエアを必要としてくれる人がたくさんいた
これって狙いたいと思ってもなかなかできないことです。でも、上乃裏店はそのたまたまにすごく恵まれて、それをしっかり掴み取る実力があったんだと思います。
1周年を迎えて
—— 編集部 - 上乃裏店は2025年1月で1周年を迎えました。上乃裏店としての今後の展望など聞きたいです。
大石:
この1年間、地域の方々と関わる機会がたくさんあったことで、少しずつソーシャルスクエアはこの地に根差したものになっていると思います。
しかし現状に満足せず、もっとたくさんの方にスクエアを知ってもらえるよう、これからも地域のみなさんとのつながりを築くことは積極的に行っていきたいと思います。
先程少し話に出ていましたが、上乃裏店はワインショップのほか、レンタルスペースなども始めました。スクエアが閉まっている時間や曜日に、地域のみなさんでこの場所を活用していってもらえたらと思い始めた活動です。
北山:
レンタルスペースを使った人に「実はここっていつもは福祉事業所なんだ。」って知ってもらえるし、福祉に関わらないような方々にも間接的に福祉を知ってもらえる機会が増えるのはいいよね。
まだまだこの社会は福祉に対して閉鎖的なところがあり、壁は厚いと言わざるを得ない状況だと感じています。その壁を薄くするためには、自分達スクエアだけが動いてもあまり意味はありません。
たくさんの力が必要になります。
スクエアの支援クルーやご利用メンバーさんだけでなく、地域の方や学生さんにも運営に関わってもらい、誰もがつながりを築ける場をつくることを目指していきたいですね。
ソーシャルスクエア上乃裏店
店舗併設型の自立訓練(生活訓練)・就労移行支援であなたが社会と「もっと」つながる!1人1人のペースに合わせた活動ができます自分の居場所が欲しい、生活リズムを整えたい、コミュニケーションを学びたいなど、様々な想いを持った方々が利用されています。併設のワインショップを活用した新しいスクエアでは、社会に出るための第一歩をここからゆっくり歩むことができます。