つながりをつくれる人に

1992年生まれ。宮城県出身。東北福祉大学卒業後、総合病院にてソーシャルワーカーとして8年勤務。
病気や障害をもつ方とともに生活課題に取り組む中で、生きづらさは社会との接点で生まれていると感じ、誰もが生きていきたいと思える社会をつくりたいとソーシャルデザインワークスに入職。
彼女願う社会とは。

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渡邉 奈南(わたなべ・なな)

SOCIALSQUARE郡山店スクエアクルー

ソーシャルスクエアという地域に開かれた現場で障害福祉に関わるクルーは、どのような問題意識を持ち、どのような理想を掲げて支援を行っているのか。その声をインタビュー記事で紹介していく「Crew’s Voice」のコーナーです。

1992年生まれ。宮城県出身。東北福祉大学卒業後、総合病院にてソーシャルワーカーとして8年勤務。
病気や障害をもつ方とともに生活課題に取り組む中で、生きづらさは社会との接点で生まれていると感じ、誰もが生きていきたいと思える社会をつくりたいとソーシャルデザインワークスに入職。
彼女願う社会とは。

※掲載内容は取材当時のものです

中学時代の後悔

—— 編集部 - 2025年11月に育休から現場復帰した渡邉さん。復帰後、サービス管理責任者の研修を開始したとのこと。支援業務&育児&研修ってかなりハードなのでは?と想像したのですが、実際のところどうなのでしょう?

育児の部分は、子どもが5才と1才半なので毎日なにかが起きててカオスですね(笑)
とはいえ、仕事のほうは結構なんとかなってます。子どものお迎えの都合で勤務時間をズラしてもらったり、子どもの体調不良時は在宅勤務にさせてもらったりと、スクエアでは臨機応変に対応してもらっているので助かります。

—— 編集部 -なんとかなるのか…すごいですね。渡邉さんはスクエアで働かれる前は病院勤務だったとか。

はい!福祉系の大学を出て、病院のソーシャルワーカーとして8年勤務していました。

—— 編集部 -病院で働かれていた時とスクエアで働いていたときとの違いってありますか?

そうですねー…1番違いを感じた部分としては、フットワークの軽さとか?
スクエアにいると「こうしたらいいんじゃない?」「やってみたい!」みたいな提案とかがあるとすぐに「やってみよう!」ってチームでささっと動いていて、そこが印象的でしたね。

病院だとこうはいかないなと思います。そもそも規模が大きいし、規則などもいろいろあるので。
「できる方法を考えよう」というスクエアの風土はとてもいいところだと思っています。

—— 編集部 -なるほど、やりたいことはなんでもできるのがスクエアのいいところですか。そういえば、渡邉さんはどういったきっかけで福祉系の仕事をやりたいと思うようになったんですか?

家に祖父母が同居していたので、高齢者に興味を持つようになって、そこから福祉に関心を持ったのかと。でも、その時の興味はかなり漠然としていましたね。
高校生になって大学の進路を決める時「そんなちょっとした興味で本当に福祉の道に決めていいのかな?」と悩んでいた時、ふとあることを思い出したんです。

—— 編集部 -あること…とは?

私の同級生に自閉症の子がいて、その子のことを思い出したんです。

その子とは幼稚園と中学校が一緒でした。
幼稚園の頃に親同士が仲良かったことからよく遊ぶことがあって、その頃は自分や周りの子たちも障害についてよくわかってなかったので、その子について特別なにかを思うこともなく普通に遊んでいました。

ただ…中学生になると、周囲はその子に対しての対応が明らかに変わっていて、いじめではないんですけど、同級生がその子の障害特性をからかう感じでマネするんです。その光景にうまく言語化できないモヤモヤを感じました。でも、その時の私はただ傍観することしかできませんでした。

高校になってそのことを思い出した時、ちょっと後悔みたいなものを感じて「あの時、自分ができたことってあったんじゃないのか」と思ったんです。そういった気持ちが後押しになって、高齢者や障害に関わりのある福祉の道を選択することにしました。

その人の問題ではない

—— 編集部 -そういった想いから福祉の道を選ばれたんですね。その後ソーシャルワーカーとして病院で働かれるようになったと…スクエアとはどういったきっかけで出会ったんですか?

病院で働いている時、関係機関としてスクエアと関わる機会がありまして。
「こんなことしているところもあるんだなー」という興味からHPとかでいろいろ調べてみて

VISION 〈創っていきたい社会〉
生まれ育った街の違いが人生の格差にならず諦めない人が増えていく社会
society where we are born doesn’t create life inequalities, and more people keep trying without giving up.

 

自分の人生を変えるためにその一歩を踏み出そうとする時に、生まれ育った街のたまたま自分の身の回りにある環境(ヒトの意識や慣習、地域の常識や社会資源など)が原因で、無理だと諦めてしまう状況が少なからずある社会に私たちは目を向けています。
生きづらさを抱える当事者の中にも、身近で支えているご家族でさえも諦めている方々はたくさんいるのではないでしょうか。
私たちのような存在や活動を拡めていくことで人生における選択・挑戦の格差が減り、自分の人生の可能性を諦めない一歩を踏み出す人が増えていく社会を創っていきたいと考えています。

その時に見た、〈創っていきたい社会〉に共感したんです。

—— 編集部 -渡邉さんの心に刺さる部分があったんですね。具体的にはどのあたりがいいと思われたんでしょう。

特に刺さったのは「諦めない人が増えていく社会 」という部分ですかね。病院で働いていた当時「諦めてしまった人」「諦めさせられた人」を何人も目にしていて。

……編集部さんは、ALSという病気をご存じでしょうか?

—— 編集部 -初めて聞いた病気です。どういった病気なんですか?

ALSというのは、神経難病の一種で全身の筋肉が衰えていく病気です。
最終的にすべての筋力が落ちてしまうので、段々と食事で飲み込むこともできなくなって、呼吸すらできなくなってしまう病なんですが…ALSって現在、治療法が見つかってないんです。

ソーシャルワーカーとしてALSの患者さんと「今後どう生きていきたいか」を一緒に考えていく中で、人工呼吸器をつけるかつけないかの選択に関わることもあったのですが、呼吸器をつけない選択をする人が思っている以上に多くいました。
一般的に、7割の人が人工呼吸器をつけない選択をしているそうです。

—— 編集部 -7割も…あの、人工呼吸器をつけないっていうことは、つまり

死に向かっていきます。その選択をされたみなさんは「家族や人に迷惑をかけてまで、生きたくない」って仰ってました。ALSの患者さんの他にも、他の病気や障害で悩まれている方の声を聞いても、
「色んな人に迷惑がかかるから」
「負担だろうから」
「こんな身体で生きていてもなにもできない」
と諦める声がたくさんありました。

そんな諦めの声を聞くたびに、これはその人だけの問題ではないんじゃないかと思うようになって。
環境が、社会が、その人にとって、生きていたいと思えるものなのか?と考えることが増えて。
今の社会に違和感を持ち始めていた時「社会に働きかけ、変えていく」という想いをもったスクエアを見つけ、転職を決めました。

—— 編集部 - 今の社会を変えたいという強い想いで働く環境を変えられたんですね。

スクエアは地域との交流も多く、人とのつながりをよく感じられそうな印象があったので。ここだったら今よりもっとたくさんの人や社会にとっての「希望」を見出せるんじゃないかと思ったんです。

実際スクエアで働いてみたら、ごちゃまぜ活動などの地域活動でたくさんの方々と交流する機会が本当に多くて。ここでなら自分が願う社会を目指せると思いました。

 

「誰もが人として尊重されて、人とのつながりを実感できる社会」

—— 編集部 - 渡邉さんの場合、前職とスクエアのお仕事の内容はかなり似ているかな?という印象があるのですが、支援をされる際にここが前の時とは違うってことはありますか?

前職も今もやっていることはソーシャルワークだと思っているので、特に考え方は変わっていませんね。
「その人にあった環境を見つける、つくっていく」
という考えをモットーに日々みなさんの支援をさせていただいてます。

人の生きづらさはその人自身の問題ではなく、環境や社会との摩擦から生まれると私は捉えています。だからこそ「社会に適応するために人が変わる」のではなく「その人が持つ力を発揮できる環境」を探したり、調整したり、必要なら新しくつくったりすることが大切だと思っていますね。

—— 編集部 - 環境をつくる際、気を付けていることってありますか?

「今この人はどんな状況にあるのか」を丁寧に汲み取ることを心がけています。
特にスクエアに初めて来る方の中には、長く引きこもられたり、社会との接点がほとんどない人もいらっしゃるので、インテーク(介護や福祉の現場において、支援を必要とする相談者と支援担当者が初めて顔合わせをして行う面接)での声かけの仕方や言葉の選び方、雰囲気づくりとか、…できる限りその人が安心できる環境をつくれるようにと努めてます。まずは、私が目の前のこの人とつながりたいという姿勢でお話を聴きます。

—— 編集部 - 初めての場所って結構緊張しますもんね…

そうなんですよ。また、スクエアを初めて見学される方の中には
「相談窓口に行ったけど、冷たい対応をされた」
「そういった相談は別の窓口と言われ突き返された」
と傷つかれた状態でこちらに来訪される方もいらっしゃいますので、

自分の関わり方次第で、その人が社会や人に対して不信感を強めてしまう可能性があるという緊張感を持って、より丁寧にかかわることを意識しています。

—— 編集部 - 言葉選びや伝え方って本当に大事ですね。渡邉さんのお話を聞いていると、現代社会の冷たさみたいなものを感じ始めてきました。

今の社会の仕組みでは、病気や障害があることで人や社会から孤立してしまうことがあると思います。
そういった社会を少しでも変えられるように、私はスクエアで、人と人、人と仕事、人と社会…さまざまなものをつなげられる存在になれたらと思っています。そのために、まず私がスクエアにきてくれた人とつながることを大切にしています。

いずれ、誰にとっても諦めのない、生きていきたいと思える社会になったらいいなぁ、と。
「誰もが人として尊重されて、人とのつながりを実感できる社会」それが私が実現したいと思っている社会です。

PROFILE
渡邉 奈南
渡邉 奈南

渡邉 奈南(わたなべ・なな)
SOCIALSQUARE 郡山店 
スクエアクルー /社会福祉士

1992年生まれ。宮城県出身。東北福祉大学卒業後、総合病院にてソーシャルワーカーとして8年勤務。
病気や障害をもつ方とともに生活課題に取り組む中で、生きづらさは社会との接点で生まれていると感じ、
誰もが生きていきたいと思える社会をつくりたいとソーシャルデザインワークスに入職。
人そして社会のウェルビーイングを目指し、日々奮闘中。

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