自分の力を誰かの一歩に
1995年生まれ、兵庫県神戸市出身。大学・大学院では政治哲学を専攻。メーカー勤務を経て、社会福祉法人で生活困窮者支援に携わった後、2024年4月にソーシャルデザインワークスへ入職。現在は西宮店で就労移行支援と定着支援を担当している。福祉に関心を持ったきっかけ、支援に込める想いとは。
古川 悠(ふるかわ・ゆう)
SOCIALSQUARE 西宮店 スクエアクルー
ソーシャルスクエアという地域に開かれた現場で障害福祉に関わるクルーは、どのような問題意識を持ち、どのような理想を掲げて支援を行っているのか。その声をインタビュー記事で紹介していく「Crew’s Voice」のコーナーです。
1995年生まれ、兵庫県神戸市出身。大学・大学院では政治哲学を専攻。メーカー勤務を経て、社会福祉法人で生活困窮者支援に携わった後、2024年4月にソーシャルデザインワークスへ入職。現在は西宮店で就労移行支援と定着支援を担当している。福祉に関心を持ったきっかけ、支援に込める想いとは。
※掲載内容は取材当時のものです
自分の時間の使い方
—— 編集部 -現在のお仕事内容を教えてください。
現在は、ソーシャルスクエア西宮店で就労移行支援と就労定着支援を担当しています。主に、就職や働くことを希望するご利用メンバーさんに、カリキュラムや面談を通して就職準備のサポートをするほか、就職後もその方が働き続けられるサポートなどもさせていただいています。
—— 編集部 -古川さんは前職も福祉業界で働かれていたみたいですが、どういったことをきっかけにスクエアに転職されたんでしょうか?
そうですね。確かに前職は社会福祉法人で働いていたんですが、やっていたことは事務だったんです。ですので、利用者さんと関わる機会はあまりなくて、実際「福祉の仕事」をしていたという実感はありませんでした。
自分が福祉の世界に飛び込んだ意味…を考えると、やはりこのままではいけないと思い、転職を考えるようになりました。
福祉業界の求人をネットで探していた時、スクエアを見つけて興味を持って…、
これがすごい話なんですが友人にスクエアの話をしてみたら、友人の知り合いがスクエアのクルーだったんです。
そのつながりでそのクルーとお話させてもらったり、実際にスクエアの見学もして他のスクエアクルーからお話を聞かせていただいたり…。みなさんと会話を交わしていく中で、自分のやりたいことと、スクエアの考えとがかなりマッチしてると思い、こちらに転職を決めました。
—— 編集部 -友達の友達がスクエアのクルーって…すごい巡り合わせですね(笑)さっきの話で気になったんですが、古川さんの「福祉の世界に飛び込んだ意味」というのはなんなのでしょう?
僕、もともとは一般企業で働いていたんですが、その時に世間でコロナが流行したんです。コロナ禍によりさまざま人の不安や不幸を見聞きしてると「自分はここの仕事をしていていいのかな」と自分の時間の使い方について考えるようになりました。
考えを深めていくうちに「幸せな人の幸せ度を高めるより、今苦しんでいる人が少しでも前向きになれるようなことに自分のエネルギーを使いたい」と思うようになって…、それが、僕が福祉に関心を向けたきっかけの1つになります。
—— 編集部 -お??1つ…ということは、他にもなにか理由がありそうですね。
福祉に関わる仕事をするにしても、福祉には『高齢者福祉』とか『児童福祉』とかいろいろと分野がありますよね。なので自分の時間やエネルギーを誰に使うのかを考えていたんです。その時すぐに思いついたのは、自分や自分の母と似たような人でした。
僕の母って視覚障害なんです。
障害のある人が身内にいる自分も葛藤や困難を少し経験してるからこそ「障害のある方や、その周囲方々の苦しい気持ちを少しでも軽減したい」という気持ちがあって…自分が福祉の業界に足を踏み入れたのはこの理由が一番大きかったのかもしれないと感じます。
スクエアに転職してから、障害のある方々のサポ―トをするようになり、今の自分の時間やエネルギーの使い方には結構納得していて、ここに転職できてよかったと思っています。

経験から広がる可能性
—— 編集部 -福祉の現場に立ってみて、率直な感想を聞いてみたいです。
現場に立つようになり思ったのは「理想論だけでは支援はできない」ということですかね。
例えばご利用メンバーさんとの面談では、ご本人の今後についての考えをお聞きするんですが、やはりご利用メンバーさんが話される内容すべてをそのまま受け入れるのは難しいんです。
ご利用メンバーさんの今の状況をみて、
「それは、ご本人のキャパシティー範囲のものか?」
「それは、本当にご本人のためになるものか?」
「どの考えを尊重し、どこまでを支援するか?」
など——支援は現実的な視点からの判断の積み重ねだと思いました。
とはいえ…現実的な部分ばかりみてもそれはそれで、みなさん「やりたいことができない!」と悲しい感じになってしまうので。ちょっとでも可能性のあるものだったら、多少無謀と思えても、後押しする支援ができたらといいなと思っています。
—— 編集部 -できる限りご本人の考えを尊重したいですもんね。
「試してみてもらう」というきっかけや場づくりは積極的にできたらと思います。「経験を通して気づけること」ってすごく価値あるもので、経験ってその人の可能性をどこまでも広げられるはずですから…というのも、自分が経験から学びを得るタイプだからそう言っているってだけなんですけど。
—— 編集部 -そうなんですね!古川さんが気づきを得たエピソード、ぜひ聞いてみたいです。
改めてそう聞かれてるとすぐポンとエピソードが出てこないんですが…大学の頃に一人で海外旅行にいった話とかどうでしょう?
—— 編集部 -一人海外旅行!!いいですねー!どこに行かれたんですか?
スペインです。国選びは実は結構適当でした。一人で海外に行ったのは「臆病な自分を変えたい」と思ったからでした。
海外を経験をする前まで、僕は結構心配症なところがありまして…いつも何かに恐怖して、プレッシャーを抱えている感覚があったんです。でも海外に行ってみると、その感情が薄れていったんですよね。
—— 編集部 -海外の空気が古川さんの何かを変えたんですかね?
空気…というか国柄??日本では電車が時間通りに来るのが当たり前ですが、海外は時間に対してかなりルーズ。店員さんの接客だって日本と比べたら本当にラフです。
最初はその海外の「ゆるさ」にすごく驚いたんですが、だんだん“これくらいでいいんだ”って思えるようになってきて…すごく心が軽くなったんですよね。1回でも挑戦すれば足も軽くなって、そこからドイツやマレーシアとか他の国にも軽い気持ちで行けました。…海外旅行で肩の力を抜くって感覚をやっと知れたって感じですね。

自分でそういう経験をしたから、スクエアの支援とかでも「まずは、試してほしい」ってご利用メンバーさんに挑戦を促すことを意識しています。せっかく「自分を変えたい」「やりたいことを見つけたい」という想いをもってスクエアを利用していただけたのであれば、スクエアに通っている期間はいろいろとチャレンジしてもらえたらいいなと思います。
前向きになれる“きっかけ”を
—— 編集部 -古川さんがスクエアで働かれてから1年半が経過しますが、スクエアでの仕事はいかがですか?また支援の仕事をしていて印象に残っていることがあったら教えてほしいです。
ご利用メンバーさんやスクエアの支援クルーと共に「どうすればうまくいくか」と考えて、試して、また考える。そうやってサイクルしていくプロセスが割と楽しく感じています。
支援で印象に残っていることといえば——そうですね。自分が入職した当初に出会ったご利用メンバーさんの話なんですが…その方は少し精神面が崩れやすい傾向があって、※実習がなかなかうまく続けられない方だったんです。
※就労移行支援事業所が提携する一般企業で、実際の業務を体験する就業体験プログラム
でも、今では精神面も安定してきてて、就職もして、働き先の上司の方からも「すごく力になっている」ってお話を聞いたんです。
僕自身そのご利用メンバーさんの支援にすごく関わっていたってわけではないんですが、スクエアで頑張られてる姿は知っていたので、その方が現在良い傾向へと変化してる姿やお話を聞けた時、すごく嬉しかったんですよね。
自分が福祉の業界に入って、やりたかったことってこういうことだったなと。そこに少しでも関わらせてもらえてるって実感できたことにすごくやりがいを感じましたね!
—— 編集部 -スクエアに入職して、古川さんのやりたいことが叶えられていってるみたいで良かった!そんな古川さんに今後やりたいことなどを聞きたいのですが、いかがでしょう?
やりたいことは大きく変わらないかなって思います。これからも誰かのために「ちょっとでも前向きになれるようなこと」に自分の時間とエネルギーを使っていきたいです。
障害によって経験の機会が限られてきたという方々に、経験の場をつくり、対話を重ね、共に歩んでいく姿勢で支援を続けていけたらと思います。

古川 悠(ふるかわ・ゆう)
ソーシャルスクエア西宮店
スクエアクルー
1995年生まれ。兵庫県神戸市出身。大学、大学院では政治哲学を専攻。一般企業(メーカー)に入社するが、福祉の仕事に関心を持ち、その企業を退職。約2年、社会福祉法人で事務方として、生活困窮者の支援に携わる。地域を巻き込みながら、生きづらさを抱える人が生きやすくなる社会を作っていきたいと思い、2024年4月にソーシャルデザインワークスに入職。
趣味はプロ野球、本、旅行、料理など。