”かまだは せんたくしを ていじした”

ソーシャルスクエア秋田山王店のスクエアクルー鎌田 淳平をご紹介。大学時代は臨床心理学を専攻。2019年から精神科病院のソーシャルワーカーとして働く。2023年にソーシャルデザインワークスへ入職した。相談のプロである彼にとっての支援とは。

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鎌田 淳平(かまだ・じゅんぺい)

SOCIALSQUARE 秋田山王店スクエアクルー・精神保健福祉士

ソーシャルスクエアという地域に開かれた現場で障害福祉に関わるクルーは、どのような問題意識を持ち、どのような理想を掲げて支援を行っているのか。その声をインタビュー記事で紹介していく「Crew’s Voice」のコーナーです。

ソーシャルスクエア秋田山王店のスクエアクルー鎌田 淳平をご紹介。大学時代は臨床心理学を専攻。2019年から精神科病院のソーシャルワーカーとして働く。2023年にソーシャルデザインワークスへ入職した。相談のプロである彼にとっての支援とは。

※掲載内容は取材当時のものです

癒し系

—— 編集部 - 前職では精神科病院でソーシャルワーカーをしていたとのことでしたが、スクエアに転職されたのはどういった経緯があったのでしょうか。

ソーシャルワーカーの仕事に不満はなかったんです。ただ、患者さんに対してアプローチする範囲の狭さは気になっていました。

ソーシャルワーカーは患者さんの入院中、その時の悩み不満、これからの生活での不安はないかお話を聞き、その話から不安を解決・軽減できそうな機関や制度を紹介する仕事です。ですが、そういったアプローチができるのは患者さんが入院している間で、その方が退院した後はどう生活しているかはあまり把握できません。

新卒で病院に入職してから4年経過した時、もっと直接ご本人にアプローチする経験を積んでみたいと思い転職を決意しました。

—— 編集部 - なるほど。そのような経緯があったんですね。お話を聞く限り、ソーシャルワーカーの業務はスクエアの支援とかなり似ている印象を受けたのですが、ソーシャルワーカーとスクエアの支援とで何か違いは感じますか?

やはり、ご利用メンバーさんとの距離感は圧倒的に違いますね。
ソーシャルワーカーの時では、病棟に移動して病室で患者さんのお話を聞くのみなので、結局その場・その時の患者さんしか知り得ないって感じなんですが、スクエアの場合、ご利用メンバーさんが活動している環境で自分も仕事をしている状態なので、普段の様子も把握できますし…なによりも自分からご利用メンバーさんに関わりにいけるので距離感に関しては全然違います。

自分からアプローチしつつ、その方がどうなっていくかの過程がしっかりと見れるというのは、自分が思い描いていたやりたいことにすごく合致しますね。

—— 編集部 - 鎌田さんが福祉の仕事に興味をもったきっかけはなんなのでしょう。

高校の頃、人から相談される経験が多かったことがきっかけでしょうか?

—— 編集部 - 確かに…鎌田さんのこの癒し系な感じは相談しに行きやすそうですね。

あはは、本当にそんな感じで…よく周りから
「ほんわかしてて、話しやすい」「相談しやすい」
と言われていました。そんな調子で人から相談に乗る機会が何度かあったので、自分も段々と向いているんじゃないかって思ってきて、お話を聞く仕事について調べたら「カウンセラー」がヒットしたんですよね。

色々と調べてみると、カウンセラーさんって人とお話しながら相手の心身をケアしていくことが仕事だと知って、お医者さんじゃないけれど、お話を聞いてその人の健康状態に関われるっていうのはいいなって感じました。

人の話を聞くことも、今後について考えることも結構好きだったので、もうこれだ!ってなってカウンセラーになろうと福祉心理系の大学へと進路を決めました。

▶【カウンセラー】
【ソーシャルワーカー】

—— 編集部 - もともとはカウンセラーを目指していたんですね。なぜソーシャルワーカーになったのでしょう?

カウンセラーとソーシャルワーカーになれる精神保健福祉士って資格取得までの過程が違うんですよね。カウンセラーの場合は、大学から大学院に進んで試験を受けて資格を取得するのですが、精神保健福祉士は、大学在学中でも国家試験に合格したら資格は取得できます。

将来設計として大学卒業後に新卒でソーシャルワーカーとして働く方向性も結構アリだなと思っていました。ただ、もともとはカウンセラーになることを目指していたので、どっちの道に進もうかなって2択でしばらく悩んでました。

大学3年生になったとき、ちょうど精神保健福祉士について学校側から紹介されるタイミングがあったんです。その時、精神保健福祉士の先生から「その人の周りの環境に対してアプローチしていくことで、その人の生活をより良いものにしていくことがソーシャルワーカーの魅力です」って話を聞いて

ソーシャルワーカーの魅力って元々自分がやりたいことからは別に外れてはいないと思ったんです。だから、思い切ってカウンセラーからソーシャルワーカーへ舵をきることにしたんです。

—— 編集部 - おぉー、鎌田さんとしては思い切った決断だったんですね!すみません、実はカウンセラーとソーシャルワーカーの違いについてあまりよくわからないのですが…

そうですね。カウンセラーの仕事は「その人が抱える問題の解決を中心に考える」こと。
例えば、その人が嫌だったエピソードがあったとして、それに対して
「こういう風な考え方もできるよ」
「確かにそれは嫌だね」
って共感しつつお話を聞いて解決していくんです。

対して、ソーシャルワーカーの場合は「その人の周りの環境に対してアプローチ」するのが仕事。例えば、その人の生活環境が乱れていた場合、本人にできることを発見して伸ばしていったり、本人が使える選択肢とか利用できるものをたくさん提示してあげたりすることが仕事かなって思っています。ここでいう「環境」というのは、本人以外の家族や、学生だったら先生とか…本人に関わる周りの人とかにもあたっていて、それらの環境を整えていくようなイメージですかね。

選択権はその人にある

—— 編集部 - 数々の人の相談に乗ってきたことから、鎌田さんは話を聞くプロだと思うのですが、人の話を聞く際に気をつけていることってありますか?

大事にしていることは、相手が話していることに対してあまり否定しないことです。

相談しにきてくれてるってことは、本人には恐らく話したいことがあるはずなので、話したいことを全部話してもらえるように最後まで聴くことに専念します。その後、どうしたらいいか考えをいってみる感じですね。
また、話しやすい雰囲気とかも大事にしてます。この人なら相談してもいいかなって思ってくれるよう行動や言動には気を付けています。

—— 編集部 - なるほど参考になります。相談に乗ってもアドバイスって結構難しいというか…どこまで言うべきなのか悩みどころです。鎌田さんはご利用メンバーさんに「周りの環境に対してのアプローチ」する時、どのようなことを意識していますか?

あくまでも、手段の提示というのが重要かと思います。本人の視野が広がるような感じで…ゲームで例えたら「これから社会と向き合い、どう自分は戦っていくのか」ってクエストがあるとして、そこには「たたかう」ってコマンドもあれば、呪文を使って「かいふく」っていうコマンドをどんどん見せていくイメージですね。

最終的にコマンドを選択するのはご利用メンバーさんなので、僕たち支援者はコマンドを提示する係としてご本人が選択しやすいように、そのコマンドのメリット・デメリットなどより詳しい情報を伝えることに専念していくといいのかなって思います。

—— 編集部 - 鎌田さんもしかしてゲームお好きですか?お話の例え方がゲームしてる人の感じ

好きです(笑)
こっちのほうがわかりやすいかなってRPG風に例えてみました。

福祉の開拓クラフト

—— 編集部 - スクエアに転職されてから大変だったことはありますか?

大変だったこと…というか現在進行形で大変に思うことは『秋田に就労移行支援サービスが全然認知されていない』ことですかね。

秋田県って就労移行支援を提供している事業所はほとんどないんです。だから、
自分たちが何をしているところなのか
ここを利用するとどういうことができるのか
ご利用メンバーさんやご家族にしっかり説明することが大切です。

また一番大変なのは、就労移行支援を使って就職活動をする際に、企業の方々に就労移行支援事業所についてまずご理解をしていただくことですね。
現在は、スクエアの他に秋田で就労移行支援を提供している事業所と協力体制を組みながら地域の方や企業のみなさんに色々と福祉サービスについて知ってもらうために働きかけをしているところです。

—— 編集部 - 秋田に限らず、福祉サービスや制度って一般的にあまり知られていないですよね。この部分って結構問題というか課題なのかも。

そうですね。でもそれが今の福祉の特性なのかなって思っています。
自分自身も、福祉を学んでソーシャルワーカーになりましたが、その時に「福祉の仕事をする」ってイメージはなかったです。

こうして仕事をしてきて思ったのは
福祉って誰にでも使えて近い存在だけど、意外と見えない。
足元にあって、見えるはずなのに気づきにくい。手に取れるところにあるのに、気づけないのが「福祉」なのかもしれません。

だからこそ、ちょっと見えにくい「福祉」に対して、みんなが生きやすい社会に整えていくことが、割と自分の役割だと思ってます。
いや…整えるというより、もう気持ちとしては開拓ですね。ない道をつくる…!

悩みを抱える方々が安心して福祉サービスを利用してもらえるように、地域の皆さんにスクエアについてもっと知ってもらえる活動を積極的にして、たくさんのつながりを生み出していきたいですね。

PROFILE
鎌田 淳平
鎌田 淳平

鎌田 淳平(かまだ・じゅんぺい)
SOCIALSQUARE 秋田山王店
スクエアクルー/精神保健福祉士

1996年生まれ。秋田県秋田市出身。大学時代は臨床心理学を専攻。カウンセリングなどの直接的な援助だけでなく、環境へのアプローチや制度利用などでも援助が可能と知り、精神保健福祉士の資格を取得。2019年から精神科病院のソーシャルワーカーとして働く。2023年、ソーシャルデザインワークスへ入職。

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