自分らしく生きたい人のために
ソーシャルスクエア郡山駅前店のスクエアクルー山田 康平をご紹介。いわき明星大学(現:医療創生大学)卒業後、地元郡山市でサービス業や広告業で働く。様々な方との出逢いの中で「障がいやセクシュアルマイノリティで悩む人の力になれないか?」という想いが強くなり、2023年8月ソーシャルデザインワークスに入職。彼が福祉に関わったきっかけ、支援に対する想いとは。
山田 康平(やまだ・こうへい)
SOCIALSQUARE郡山駅前店スクエアクルー/ピアサポーター
ソーシャルスクエアという地域に開かれた現場で障害福祉に関わるクルーは、どのような問題意識を持ち、どのような理想を掲げて支援を行っているのか。その声をインタビュー記事で紹介していく「Crew’s Voice」のコーナーです。
ソーシャルスクエア郡山駅前店のスクエアクルー山田 康平をご紹介。いわき明星大学(現:医療創生大学)卒業後、地元郡山市でサービス業や広告業で働く。様々な方との出逢いの中で「障がいやセクシュアルマイノリティで悩む人の力になれないか?」という想いが強くなり、2023年8月ソーシャルデザインワークスに入職。彼が福祉に関わったきっかけ、支援に対する想いとは。
※掲載内容は取材当時のものです
知識と経験を活かして
—— 編集部 - 郡山駅前店で自立訓練の支援を担当してる山田さん。以前は福祉とは関わりのない仕事をしていたとか。
そうですね。初めは携帯販売のサービス業をしていました。そこからデザイン関係の仕事に携わりたいと思ってフリーマガジンの会社に転職したんです。転職後は営業とかライターとかディレクション関係の仕事をしていました。
仕事自体はすごく面白かったんですが、大変ではありました。フリーマガジンって短期間でたくさんの情報を流すんです。自分が出した情報が様々な方に見てもらえるのはやりがいがあったのですが、情報を発信したらすぐに流れていってしまって…。広告を見てお客さんが増えたり反応があっても情報が薄れていってしまうことに少しずつ虚無感を感じてしまった、というんでしょうか。その後、自主退職した後にスクエアで再就職しました。
—— 編集部 - 仕事に虚無感…そうだったんですね。スクエアに入って1年少し経ちますが、ここでの仕事のやりがいについてはどうでしょうか?
自分の支援やお話で、少しでもご利用メンバーさんのサポートができるのはやりがいだと思います。
スクエアでは、自己理解としてネガティブな気持ちやストレスとの向き合い方についてのカリキュラムを実施してます。
自分も昔、ネガティブな感情との向き合い方で苦労していた時期があって、いろんなセルフケアの本を読んだり試したりしていたんです。その経験を活かしてみようと思い、過去に自分が試して効果があったものを資料にしてスクエアのカリキュラムとして実施しています。
自己理解やストレスコントロールのカリキュラム資料
—— 編集部 - 実体験に沿ったカリキュラムってなんだか信頼性高くていいですね!
お医者さんでもないので、この人の不安を改善する方法はコレ!なんてズバリと提示することはできないのですが、「こういう手段や考え方もあるよ」って話しています。
そうしてご利用メンバーさんとやりとりをしていると
「山田さんに聞いてよかったです」
「ちょっと楽になりました」
って言ってもらえることもあるんです。
もともと自分は悩みや不安を聞いてもらう立場の人間だったので、こういった感想をいただけると少しでも自分が役に立てて良かったと思います。
ご利用メンバーさんからいただいたプレゼントやメッセージがとても励みになっているとのこと
『話を聞く立場』
—— 編集部 - 「自分は悩みや不安を聞いてもらう立場」と気になるコメントがあったのですが、山田さんがスクエアで働かれるまでの経緯をもう少し具体的に聞きたいです。
実は数年前にASD(自閉スペクトラム症)と診断されたんです。
大学卒業後、就職してからずっと人とのコミュニケーションが上手くいかなくて思い悩んでいました。広告業で働いていた時にメンタル面が不調となり通院したのですが、その時に適応障害と発達障害だったことが分かりました。その後は病院のカリキュラムを受け、体調は徐々に回復して仕事は続けられるようになったのですが、それでもこの先仕事を続けるのはちょっと辛いなと感じていました。
—— 編集部 - そうだったんですね!山田さんに障害があったとは、気づきませんでした。
そうなんですよね。自分でも自分に障害があるなんて気づかなかったし、診断が下された時は驚きました。それで、スクエアで働くまでの経緯ですよね。ええと…
ある時、通っていた病院で成人発達の当事者が集まって対人のカリキュラムに参加していたのですが、参加者から「支援サービス」について聞いたんです。
担当支援員からストレスとの向き合い方について教えてもらったとか、
こういったサポートをしてもらって今は何を頑張っているとか、
その時初めて「支援員」という仕事について知って、福祉に興味を持ちました。でもこの時はまだ悩みや不安を聞いてもらう側としての興味だったんじゃないかなと思います。
—— 編集部 - なるほど、山田さん自身が「支援員」になりたいと思ったきっかけがあったと…
はい、「支援員」という仕事を知ったすぐ後の仕事で。
引きこもり支援のNPO団体に広告業務を委託する機会があって、引きこもりだったという方とお話をすることがあったんです。
その方からは当時の悩みや不安について話をしていただきました。その悩みは過去の自分が悩んでいたことや感じていたものと少し似ていて、こういった方々の力になりたいなと強く思ったんです。
ASDと発覚してから、僕は先生や誰かに『話を聞いてもらっている立場』でした。でもこれからは、僕が『話を聞く立場』になって悩む方々のためになることをしたい。
そう思って福祉の業界に入ることにしました。
—— 編集部 - 福祉の仕事をしたいという強い思いを抱え、転職先を探していたと思うのですが、スクエアで働こうと思った決め手はなんでしたか?
ネットで『支援員』ついて調べていたら、この法人のHPにたどり着いたんです。
HPで法人の考えを見て
※当時の文言
創っていきたい社会
「生まれ育った街の違いが人生の格差にならず諦めない人が増えていく社会」
この言葉を見て、ふと自分の幼少期の頃の経験や葛藤が蘇ったんですよね。
実は僕、同性愛者なんです。だから、ASDの特性以外にも小さい頃から周りとの違いでずっと悩んでいました。高校の時にカミングアウトした親しい友人からは「山田は山田だよ」と言ってくれて、すごく救われたんですが…でもやっぱり、みんながみんなそういった反応を返してくれるわけではありませんでした。
「ただ普通に生きていたいだけなのに、なんでこんなに辛いんだろう」と子どもの時から心に何か引っかかる感覚を持ったまま過ごしていて…特に地方だと東京や都会と比べてLGBTQ+やマイノリティへの考え方がどうしても理解を得られないことも多く、葛藤がすごくありました。
だから、この法人の「生まれ育った街の違いが人生の格差にならず諦めない人が増えていく社会」って言葉はすごく自分に刺さったんです。この言葉が決め手だったと思います。
その人の声を最後まで聞き続ける
—— 編集部 - 山田さんがスクエアに入職してから1年半経ちますが、「福祉」の現場で働いてみてでしょうか。
入職当初は、かなり自分自身にプレッシャーをかけていたと思います。
いざ自分が誰かの支援をする立場になった時
「自分が人に支援なんてことをしてもいいのかな?」
って思い始めて…自分がやりたかった福祉の仕事だし、とにかく頑張りたいし、その人の力にならないとって気持ちが強かったんですよね。
でも、一緒に働くクルーやご利用メンバーさんと言葉を交わしていくことで
「支援」というものに固執しなくてもいいのかもって思えるようになりました。
—— 編集部 - 「支援」に固執しないとは?
「支援」って、僕の感覚だと自分が先生みたいに誰かを導いたりするイメージがでてきてしまって…ちょっと差し出がましいなって思っちゃったんです。
そうじゃなくて、一緒に悩んで方法を模索する感じが自分の感覚的にはしっくりきたんですよね。ご利用メンバーさんと会話を重ねて、お互い理解して信頼して、二人三脚みたいに一緒に道を探す感じがいいなと思っています。
1年少し働いてみて、やっと良い具合に力が抜けてきたんじゃないかと。
地域の団体やご利用メンバーさんと一緒にパンフレット制作
—— 編集部 - ご利用メンバーさんと関わる中で大切にしていることってありますか?
何事にも決めつけず、その人の声を最後まで聞き続けたい。
ご利用メンバーさんの本心を第一に考えられたらと思いますね。
私自身、思ったことや考えを言葉にするのが苦手だったり話の意図を汲むことが苦手なので、相手の言葉を変に解釈していないか都度確認するように気を付けています。ご利用メンバーさんのお話を疑うとかではなく、自分の支援に対してなるべく疑いを持っているって感じですかね。
支援員をしているといろいろ悩むことはありますが、そういう時は自分だけで考えるんじゃなくて、他のクルーに相談しています。いろんな視点の考えって大事ですし、なるべく聞いたことや見たことをクルーに伝えてみんなでサポートできたらと。
—— 編集部 - クルー同士の信頼関係が見えたような気がします。山田さんのことについてクルーの皆さんはどれくらい知っているんでしょうか?
面接時点で開示していましたね。また、スクエアのカリキュラムで『クルー談話』というものがあって、自分の人生観について話す時間があるのですが、その時に自分のことを話したこともあります。
クルーに限らずご利用メンバーさんも自分がASDであることや同性愛者ということを知っている方も多いです。その人の個性や考えをちゃんと見てくれるクルーばかりだ!と入職してからずっと感じていて、開示することに対して特に抵抗感はありませんでした。
こういった場所をもっと広げていけたらいいなと考えています。
「これが自分です」って言ったときに、否定されずに普通に関われるコミュニティ。都会も田舎も関係なく誰もが自分らしく生活できる環境をつくれたらいいなと思うんです。「そんな部分があっても良いよね。人間なんだもん。」と他の人との違いを気にせずみんなと生きていけるのが理想です。
また、最近ピアサポーターの研修を受けているんです。
ピアサポーターというのは障害のある人が、自分の体験を活かして他の障害のある人の相談相手となったり、同じ仲間として地域で交流する方たちのことを言います。今より専門的な知識を得ることでもっとご利用メンバーさんに寄り添えたらと思って勉強を始めてみました。
同じピアサポーターの方とも意見を交わしたり、プライベートな悩みを話し合ったりすることが増えたのですが、いろんな方の声を聴けるのって違う視点から見られたり新しい発想につながって、本当に心強いなと感じています。人それぞれ考えも悩みも辛さも違うので、様々な方と関わりながらいろんな意見を参考にして、これからのスクエアでの活動に活かしていきたいです。

山田 康平(やまだ・こうへい)
SOCIALSQUARE郡山駅前店/スクエアクルー
1990年生まれ。福島県出身。いわき明星大学卒業後、地元郡山市でサービス業や広告業で働く。様々な方との出逢いの中で「障がいやセクシュアルマイノリティで悩む人の力になれないか?」という想いが強くなり、2023年8月ソーシャルデザインワークスに入職。