私が「福祉」に惹かれた理由

2001年生まれ。いわき市出身。福島大学で小学校と特別支援学校を主とした教育分野について学び、教員免許を取得。障害に関する知識を深めたい、誰もが生きやすい社会をつくりたいという思いから、2024年4月よりソーシャルデザインワークスに入社。彼女が福祉の魅力に気づいたきっかけとは。

Share on

金成 李胡(かなり・りこ)

SOCIALSQUARE上荒川店スクエアクルー

ソーシャルスクエアという地域に開かれた現場で障害福祉に関わるクルーは、どのような問題意識を持ち、どのような理想を掲げて支援を行っているのか。その声をインタビュー記事で紹介していく「Crew’s Voice」のコーナーです。

2001年生まれ。いわき市出身。福島大学で小学校と特別支援学校を主とした教育分野について学び、教員免許を取得。障害に関する知識を深めたい、誰もが生きやすい社会をつくりたいという思いから、2024年4月よりソーシャルデザインワークスに入社。彼女が福祉の魅力に気づいたきっかけとは。

※2025年8月現在、金成李胡さんは就労移行担当をされています。掲載内容は就労移行担当になる以前に取材したものとなってます。

「先生にはならない」

—— 編集部 - 金成さんは現在上荒川店で自立訓練(生活訓練)のご利用メンバーさんを支援されていますが、入職当時から自立訓練(生活訓練)の担当だったのでしょうか?

そうですね。スクエアで正社員として働くことが決まってからは自立訓練のご利用メンバーさんを担当させていただいているんですが…実は、大学の頃にスクエアでインターンをさせていただいてた時があって、その時は就労移行のご利用メンバーさんの支援を担当させていただきました。

—— 編集部 -おおー、インターン!!なぜスクエアにインターンしに行こうと思ったんですか?

もともと私は大学4年生の春まで小学校の教員になろうとしてたんです。
でも、なんか急に他の仕事をやりたいなって…先生になるより、障害に関する仕事に携われたらいいなと思うようになったんです。

地元がいわきなので「いわき市 障害福祉」ってネットで調べてみたら1発目にスクエアのHPがヒットして、そこから見学したり、いろいろとお話きかせていただいたりした流れで、インターンをさせていただくことになりました。

—— 編集部 -大学4年春に⁉急展開…!

小学生の時に5、6年生の頃担任だった先生に憧れて、そこからずっと先生になることを目指してたので、確かに急展開かもしれませんね。

—— 編集部 -子どもの頃からの夢が覆ってしまうほど一体なにが…

やっぱりきっかけは、特別支援学校の実習だと思います。
大学でいくつかの学校に教育実習に行く機会があったんですが、その中に障害のある子どもたちの先生として何日か実習するものがありまして。

一般的な小学校の実習と比べて、一人ひとりの障害特性を把握する必要があり大変でしたが、実習終わりには「楽しかった…!!」と充実感みたいなものがありました。

特別支援学校での実習は、自分が今まで経験してきた実習の中で一番やってよかったって思った実習でしたね。

だからなのか…その経験がなんか頭に残っちゃって。もうちょっと「障害」というものに関わってみたいなって気持ちがどんどん湧いて、大学4年になって思い切って進路変更を決意しました。

—— 編集部 -なるほど、教育実習が転換点だったんですね。ちょっと気になったんですけど…小学校からの夢を大学のギリギリで変更したわけじゃないですか。親御さんとか周りのみなさんの反応ってどんな感じだったんですか?

進路を変えることについて、母と父はそこまで驚いてなかったですね。基本「やりたいことやりな〜」って言ってくれる人達なので。多分そういう反応が返ってくるだろうとわかってはいたものの「先生にはならない」って打ち明けるのに少し緊張したのは覚えています。

そういえば、一番驚いていた…というより心配していただいたのは大学の先生でしたね。
教員免許試験の申し込みについてとか色々気にかけていただいたんですが、もうその時点ではキッパリ自分の中で「先生になる」って選択肢はなくなってて、

他者の言葉そっちのけで、自分がやりたいことをやろうって突き進みました。

「障害」を身近なものに

—— 編集部 - スクエアのHPで金成さんの紹介文に「障害に関する知識を深めたい」という文言があったと思うんですが、こう思った理由について詳しく聞きたいです。

理由…自分がやりたいことをやろうって福祉の世界に飛び込んだものの、やっぱり自分は全然この世界から遠い位置にいるんだなって感じたんですよね。

これまで私は障害のある方と関わる機会がほとんどありませんでした。
また、大学でも簡単にその障害の名前や特性についての勉強はしていましたが、実際現場でいろんな方々の障害を聞いても「それってどういう…?」みたいに、戸惑うことも多くて。

—— 編集部 -うーーん、障害っていろんな種類がある上にだいぶ複雑ですもんね。このあたりはもう福祉専門家のクルーかご本人に聞いちゃえって個人的には思ったりするのですが。

それはそうなんですよね。結局支援では、障害からその特性を読み取るよりも「その人自身をよく見る」ことが重要だというのはわかっているんです。でも、大まかでもいいから障害名を聞いた時点で「どういう特性があるのか」ってスルッと引き出せるくらいにはなりたいなって思ったんです。

自分の中で「障害」をもっと身近なものにしたいって気持ちがこの一文になったのかも。

—— 編集部 -そういう…目から鱗。なんと素晴らしい心意気。こちらの想いのほかに、金成さんがスクエアで働かれてから大切にしたいことなど聞けたらと思うのですがいかがでしょう?

そうですね。私がスクエアで働くようになってから大切にしたいと思っていることは2つあります。

1つ目は『自分の価値観を押し付けないこと』。
支援をしている中で、自分が当たり前だと思っていることがその人にとってはあたり前ではない、嬉しいって思うことも、心地良いと思う感覚も千差万別にあります。
なので、ご利用メンバーさんがこれまで触れてきたものや育った環境を聞いた上で、自分はどういう風にご利用メンバーさんを支援するかを考えたいと思っています。

また、『押し付けない』というのは、なにもかも全てその人に合わせるってわけではなくて。ご本人の特性に合わせつつ、成長を見守るような支援ができたらと思っています。やっぱり、ご利用メンバーさんにとって心地良い部分ばかり合わせすぎちゃうと、その人の成長にはつながらないので「ここまではやってみてほしい」って期待は伝えるようにしていますね。

ご利用メンバーさんが無理し過ぎないように、でも緩め過ぎず。このあたりの支援の調整はかなり難しい部分です。なので「今日の○○さんはこんな調子」って一緒に働くクルーと逐一情報共有して、支援の調整をすることを心がけてます。

2つ目に大切にしていることは
『その日スクエアに通ってくれた利用者さんとは最低1回は話す』
です。こちらに関しては決め事に近い感じなんですけど…

—— 編集部 -自分ルールみたいなやつですね!なにかそうしたいと思ったきっかけがあるんですか?

上荒川店って自立訓練(生活訓練)と就労移行支援でスペースが分かれるんです。自分は自立訓練(生活訓練)のご利用メンバーさんの支援をしているので、自然と就労移行支援のご利用メンバーさんと関わる機会って少なくなってしまうもので。

でもある時、休憩時間中に就労移行支援のご利用メンバーさん達が自分の元へ来て話かけてくれることがあったんです。「この前こんなことがあった」「最近こんなことをした」と、みなさんの話をしていただいたのが嬉しくて…何よりもご利用メンバーさんと関わる機会が増えたことが嬉しかったんです。

そこから、もっとご利用メンバーさんとの関わりを増やすにはどうするかって考えた結果、
ご利用メンバーさんから話しかけられるのを待つばかりじゃなくて、自分からも動いてみようと思って今の決め事があります。

可能性に満ちている

—— 編集部 - 金成さんがスクエアで働かれてから1年半が経過しますが、今後スクエアでこういうことをしたいという考えはありますか?

具体的な部分は特に決めてないんですが、いつか子どもと関わるイベントができたらと思っています。やっぱり小学校の先生を目指していただけあって、子どもと関わりたい欲はまだ結構ありまして。

—— 編集部 - 金成さんが子どもと関わりたい理由はズバリなんなのでしょう?

子どもといるのって結構大変ですけど、その分本当に自分も楽しい気持ちにさせてもらえるんです。ほら、子どもってめっちゃ素直じゃないですか。嫌なことは嫌って言うし、でも楽しかったら、本当に周りから見ても楽しそうってわかるし。そういう子ども特有の行動を見守るのが好きです。

子どもたちが何かする様子を見て、その子どもたちのこれからについて勝手に思いを馳せて、勝手に嬉しくなって…可能性に満ちているっていうんでしょうか?おそらく私は子どものそういったところに惹かれてるんだと思います。

障害のある方と関わる時も、子どもと関わっている時と少し似たようなときめきを感じるんですよね。多分それって、障害のある方々に可能性が秘められてて、その成長を見守れる「楽しさ」みたいなのがあるからなんじゃないかなって…

—— 編集部 - なるほど、そういった関連性があるんですね。

だから私は支援の仕事に興味をもって、この仕事が好きになったんだと思います。
ご利用メンバーさんが成長している様子とか、自分に少し心を開いてくれたり、想いを打ち明けてくれたりした時はたまらないほど嬉しかったです!!

—— 編集部 - それが金成さんにとってのやりがいなんですね。

そうですね!自身からご利用メンバーさんと関わる機会を増やしていったことで、ご利用メンバーさんから「こういうことをしてみたい」とご自身の想いや将来の方針をお話してくれることが増えてきたんです。ご本人に寄り添った支援というものはこういうことだったんだと実感できた瞬間でした。

ほとんど知らない福祉の世界に急に飛び込んでから1年半。やっと今の段階で支援のスタートラインに立てたという気がしています。知識と経験を積み重ね、今度もみなさんとともに成長していけたらと思います。

 

PROFILE
金成 李胡
金成 李胡

金成 李胡 (かなり・りこ)
SOCIALSQUARE上荒川店
スクエアクルー
小学校教諭一種/特別支援学校教諭一種

2001年生まれ。いわき市出身。福島大学で小学校と特別支援学校を主とした教育分野について学び、教員免許を取得。
障がいに関する知識を深めたい、誰もが生きやすい社会をつくりたいという思いから、2024年4月よりソーシャルデザインワークスに入社。子どもから大人まで年齢や性別など関係なく関わることができる社会をつくっていきたい。

クルーページを見る
Share on