真のソーシャルデザインカンパニーに
今回紹介するのはソーシャルスクエアいわき店に入社してちょうど100日。自立支援と就労移行支援のほか、映像制作を生業にしていた経験を生かして、ごちゃまぜのメディア制作などで才能を発揮している新入クルー、渡辺香の声をお届けします。福祉業界に対する新鮮な思いから、あるべき「ソーシャルデザイン」のカタチまで、じっくりと語ってもらいました。
渡辺香
ソーシャルスクエア いわき店
ソーシャルコーディネーター/映像ディレクター
ソーシャルスクエアという地域に開かれた現場で、障害福祉に関わるスタッフは、どのような問題意識を持ち、どのような理想を掲げて支援を行っているのか。クルーにインタビューをしてその声を紹介していくのが「Crew’s Voice」のコーナーです。
今回紹介するのはソーシャルスクエアいわき店に入社してちょうど100日。自立支援と就労移行支援のほか、映像制作を生業にしていた経験を生かして、ごちゃまぜのメディア制作などで才能を発揮している新入クルー、渡辺香の声をお届けします。福祉業界に対する新鮮な思いから、あるべき「ソーシャルデザイン」のカタチまで、じっくりと語ってもらいました。
-100日を振り返って
入社して今日でちょうど100日目です。働いていて感じるのは、障害福祉の支援って本当に奥が深いなってことです。支援プランを考えるところから、メンバーさんにかける言葉の選び方、業務の進め方もそうです。いろいろなものがすごくきめ細やかに行われていることに驚きましたし、生活の環境が大きく変わったので、正直なところ色々迷いながら、という毎日ですね。とにかく怒涛の100日でした。
100日振り返って良かったところは、大義を掲げなくていいというところかもしれません。地域の福祉を向上させるために何々をやるのだ、みたいなものを掲げることはなくて、個人的には、障害者と呼ばれる人にあったら自分はどうしようとか、自分の家族が障害者と呼ばれるような状態になったら、ここだったら安心して支援をお願いできるかなとか、そういう個人的な目線で見ているんですが、スクエアが実際にそういう場所になっているので安心感は大きいですね。
もちろん大変なこともありますよ。今までは映像制作というビジネスの環境で働いてきました。その時とはまったく違う心持ちでメンバーさんに接しなくちゃいけないと感じています。考えの重さが違うというか。大学の助手をしている時にも思ったんですけど、この一言でこの人の方向性が変わっちゃうなとか、間違ったら方向に進んだらどうしようという怖さがあるんです。今、このタイミングで、これを言ったらどうなるだろうって、それを考え続けないといけなくて。それはやっぱり大変だなって。
でも、そこは経験してきたことでもあるので、なんとか対処できるような気はしています。美大の子たちって繊細で心のバランスを崩してしまうこともあるので、いい作品を残す、ということと同じくらい一人一人のケアが大事でした。支援にはその経験が活かせますし、「ごちゃまぜ」の発信のように対外的なプロジェクトをやる時には、今度は広告会社で働いてきた経験も生きると思います。今までやってきたことと、今やっていることの辻褄は、多分後になって合ってくるかなと。
ー目の前の一人に対するチームワーク
もともと、ここに入る前にNPOで働いている子が友達にいて、福祉のイベントとかをやっていたんですが、「どう?」って聞いたら「闇が深い」と言われてて。それでこの業界にはちょっとビビりながら入ってきたんです。
正直、構えていたよりも全然良かったです。この法人もそうでした。今まで超ブラックな広告業界にいたということもあると思うんですが、ソーシャルデザインワークスは「ピュアホワイト法人」ですよ(笑)。夕方が5時半に帰れるなんて都市伝説だと思っていましたけど実際に帰れます。クルーの皆さんも基本的にあまりお金の話をせず、ネットワークを作るために時間を惜しまずいろいろな会合に参加してて、すごいなと思っています。その点ピュアだなと思うこともあります。私はお金の話はちゃんとしたい人なので。
それと印象的だったのは、やっぱり先輩たちの心強さですね。広告の仕事をしている時は、多くの仕事を自分一人でこなします。取引先とやりとりして、お金を管理して、制作もして、という感じで。でも今は仕事をするうえで孤独感はありません。先輩に1の質問したら10返ってくるみたいな感じなんですよ。
そもそも業務のシステムが一人では完結しないようになっていて。一人を支援するのに多くの人が関わっているし、報告もきめ細かにし合います。基本的にはすぐにシェアできるシステムになっているので、チームワークも強くなりますよね。例えば、メンバーさんの調子が悪そうだったら社内のslackにメッセージが飛んで、調子悪そうっていうことが数秒でシェアされるという感じ。
なんというか、一人の人にかけるコストのかけ方がハンパないんです。そういう質の高さがソーシャルデザインワークスらしさかもしれません。一人のメンバーさんに対して何人も集まって支援プランを考える。支援の日報なんてものすごいですよ。すごく細かなことまで記載されていますし、数年間の蓄積があるので。その人に徹底して向き合って支援のプランを考える、そのコストのかけ方は改めてすごいなと。
ー真のソーシャルデザインカンパニーに
まだまだ知識が足りないので本業の支援を頑張らないといけないんですけど、情報発信などの領域では今までやってきたことを生かしてマネジメント出来るようになってきました。もし、支援の質だけで評価されるような法人だったら、そうはいかなかったかもしれません。代表の北山さんからも発信やブランディングなどで期待されていると思っていますし。その意味でも、ごちゃまぜのメディア制作など社会に対するアプローチはもっとガンガンやっていきたいと思っています。
やっぱり「ソーシャルデザイン」と掲げているし、社名に返ってくると思うんです。やってることは福祉なんだけれど「ソーシャルデザイン」でありたいですよね。もっと人が増えて、もっと地域への働きかけができるようになったら、ごちゃまぜイベントや、ごちゃまぜタイムスなどの発行物を名物にできると思うんです。どんどんブランド化して、小さくても経済を回していって、それがサービスの提供にもつながっている、みたいな形を早く作っていきたいですね。
強みだなって思うのは他の分野との相性の良さです。組み合わせるとすごく綺麗な色になる。障害福祉直球じゃなく、食とか教育とか観光とかとコラボしながら楽しくやれると思うんです。最終的には、なんていうか「サブ役所」みたいな法人になればいいなと思っています。役所なんだけれど、面白そうで、人が集まってきて、そこに経済が生まれる。なんでも相談できて、地域にもつながっている。そういう法人が理想の形ですね。
ー大事なのは、考え続けること
とは言っても、世界中で「ごちゃまぜ」に対するハレーションが起きているのも事実だと思います。例えば移民の受け入れとかLGBTとか、国を挙げて議論されていてリアリティが急に湧き出してきました。だからそこでいろいろなハレーションが起きているように感じています。ちょっと前って「私たちは多様性をちゃんと考えていますよ」と表明すれば、それでなんとなく「もちろんグッドだよね」みたいな感じで、みんなそれに流れていく感じだったじゃないですか。でも今は、現実問題として隣の家とかに外国人が住むようになったり、労働力として移民受け入れ待った無し、みたいな現実的なフェーズに入ってきている。
だから「実際に多様性が生活に入ってくるとなんか違うぞ?」とか「少数者のために自分たちの税金が使われているのは気に食わない」みたいな、リアルな反応が起きてきている。
けれどこのハレーションは一時的なものだとも思うんです。良い社会のための通過儀礼なんじゃないかって。何事も混じり合う時は「え?」って感じるものですよね。でも、それは一瞬だと思いたいし、結局、いつの時代も生きていくことって大変じゃないですか。昔が今より良かったかって言えばそうでもないし。未来は全てハッピーかと言われたらきっとそうじゃない。いつの時代も困難さはある。だから考え続けるしかないと思うんです。
これを超えた先に「何が見えるのか」ってことはずっと考えていて、やっぱりいい世界があると思いたいし、未来はもっといい時代になってるって信じてみようと思っているんです。そりゃ大変な仕事だと思いますけど、いつも辛そうにしていたら誰も関心を持ってくれないし。課題は大きくても、笑顔で楽しく取り組んでいきたいと思います。
渡辺 香(わたなべ・かおり)
マーケティング・広報
映像ディレクター
福島県いわき市出身。美術大学の助手や広告制作会社の映像プロデューサー/ディレクターを経て2018年にUターン。
ソーシャルデザインワークスでは拠点マネジメントを経て、マーケティング・広報・発信、クリエイティブ分野を担当。