人を幸せにすると、自分の幸せになって還ってくる
今回は2020年入社、ソーシャルスクエア 熊本店で就労移行支援の支援員として働く岡 愛里をご紹介。動物への医療や医療事務職などを経てソーシャルデザインワークスに入社。障害福祉の支援を通じて「人を幸せにすると、自分の幸せになって還ってくる」と話す理由とは?
岡 愛里(おか・あいり)
SOCIALSQUARE 上熊本店 スクエアクルー/動物看護師/トリマー
ソーシャルスクエアという地域に開かれた現場で障害福祉に関わるクルーは、どのような問題意識を持ち、どのような理想を掲げて支援を行っているのか。その声をインタビュー記事で紹介していく「Crew’s Voice」のコーナーです。
今回は2020年入社、ソーシャルスクエア 上熊本店で就労移行支援の支援員として働く岡 愛里をご紹介。動物への医療や医療事務職などを経てソーシャルデザインワークスに入社。障害福祉の支援を通じて「人を幸せにすると、自分の幸せになって還ってくる」と話す理由とは?
スクエアの中と外をつなぐ
2020年2月に入社し、SOCIALSQUARE 熊本店で勤務しています。もうすぐ入社して1年半ぐらいですね。現在は就労支援員として1日あたり10名程度のメンバー(利用者)さんの支援を担当しています。スクエアの中では就職を目指すメンバーさんにビジネスマナーやパソコンスキルといったカリキュラムの提供をはじめ、ひとりひとりの特性や状況を踏まえて支援することを心がけています。
スクエアの外では実習や面接などいわゆる就職活動に同行したり、障害者雇用の企業担当の方と交渉や打ち合わせなども担当していますね。熊本店は2019年に開設して就労移行支援のサービス自体も2020年2月からと始まって間もないこともあり、やっと就職できるメンバーさんが出はじめてきたなという感覚です。
メンバーさんが晴れて就職!となるまでに、色々なステップがあります。ほとんどのケースで、「企業実習」と言われる短期間でのマッチング期間を設けます。勤務時間・環境・作業や業務内容など、その期間の中でご自身に合っているか見極められますし、企業側も業務が回せるか判断することができる期間です。ご本人と企業の間に入ってイチから実習の依頼を企業へ行ったり、体調や移動手段に合わせた勤務時間などの交渉を行うなどひとりひとりにあった就職への道を模索していくことが一番大変でした。
実習だけでなく、生活リズムの整え方やコミュニケーションに課題を持たれている方も同じように「どのようにしたら就職に向かって進めるのか」をまずは一緒に考え、ひとりひとりに合った方法を組み立てて支援しています。なるべく目標を噛み砕いてスモールステップからやっていきましょう!とお話しすることが多いですが、たとえそこで躓いたとしても、また別の方法やアプローチでチャレンジを続けていけるように提案を行っています。
実習先に同行してメンバーさんの働いている姿を見る機会があるんですが、ビシッとスーツを着て仕事をしている姿や、笑顔でイキイキと働く姿がとても眩しく感じました。スクエアで活動している時とはまた違った表情をしていて、やりがいというか、「ああ、この仕事をしていてよかったな」と思った瞬間でしたね。
もちろん障害の特性やご本人の状況を一般企業の方々に理解してもらうのは、伝え方が難しい部分があるのは事実です。なるべくわかりやすくシンプルに説明することで、地道ですが、理解してもらえる企業さんを開拓したり、こうしたらこの方はもっと力を発揮できますといった情報共有をしたり。今まで生きにくさを感じていたメンバーさんがイキイキと働くことが出来る「環境作り」を行っていくことが、一番大切だと思って働いています。
最大の壁は、自分が無知であることだった
いままで医療のフィールドで働いていて、前職は病院の先生の秘書をしていました。医療と福祉はとても近い分野のような気がしますけど、実際はそれぞれですよね。その時の私の「福祉」に対する意識は、医療関係者から見た福祉事業所のイメージが強かったです。
いまの障害福祉の仕事を意識しだしたのは、自分の子供の影響が大きくあります。上の息子はいま中学2年生で、娘は小学校5年生なんですが、娘には学習障害(LD・ディスレクシア)があって、小学校に上がったぐらいから学習面でつまづく娘にずっと向き合って考えてきました。勉強についていけず困っている娘に、どんなことがしてあげられるだろう、どんな将来があるんだろうって。時には娘から「産んでなんて頼んでない!」とか言われちゃうこともあって、ほんとにきつかった。「どうにかしなきゃいけないのに、どうしたらいいかわからない」っていう状況でした。
障害のある子供向けのサービスとしては放課後デイサービスとかがありますが、どうしたらサービスが利用できるのか、 福祉の制度やサービスの知識はほとんどなかったし、娘のために動きたいのに動きかたさえ戸惑ってしまって。 また放デイはあくまで生活面の訓練をするところで、娘に必要な学習面を伸ばすためには、どこをどのように利用したらいいのかまったくわからなかった。
そこで気づいたのが、自分が無知であるという「壁」でした。
私たち以外にもこの壁にぶちあたって身動きが取れずにいる方がたくさんいると思います。
もっと自分でも福祉について学んで、伝えていく必要があると感じたのが障害福祉の仕事を意識したきっかけですね。どうしたら娘のような生きにくさを抱える方々が生きやすい社会になるのか、考えていたところで出会ったのがSDWs(NPO法人ソーシャルデザインワークス)でした。
「ごちゃカフェ」という地域交流のイベントを熊本店で開催していて、そこに参加したのが法人との出会いでした。ごちゃカフェに参加するようになって、ちょうど反抗期だった息子にちょっとした変化があったんです。メンバーさんやクルーのみなさんの柔軟な考え方に触れて、私自身も息子への向き合い方を変えていくきっかけになりました。そしたら、息子の態度も少しづつほぐされた感じがあって。
スクエアで協力していたグリーンバード(地域のゴミ拾い活動)にも子供たちと一緒に参加ししました。障害のある人もない人も、様々な人がフラットに交流をする中で、子供たちも楽しそうに遊んでコミュニケーションする姿を見ていてここでなら子供たちの将来を考えて今の自分に出来ること探してたくさんのチャレンジできるんじゃないかって、入社を決めました。
クルー岡(左)・田中(右)
人を幸せにする努力をする
最近、SNSとかにも書いているんですけど「人を幸せにする努力をする」という言葉を大切に日々生きてます。昔は娘のことで不安でいっぱいだったけれど、今は必要な知識や柔軟な考え方を身につけて娘にとって良い環境を整えることができたので「まあ、なるようになるかな」なんて思えるようになってきました。
今は、娘と同じように生きづらさを抱えるメンバーさんの限られた時間を無駄にしないように働きたいなと思っています。就労移行支援は原則2年間しか使えません。この限られた期間にどう支援して、無理なく就職できるようにできるか、時間との勝負です。その間、体調が良くなくてスクエアに通えなかったり、自分からうまくヘルプが出せないメンバーさんもいらっしゃいます。おそらく傍目には「この人、就職は難しいんじゃないか」と判断されてしまうような方も、諦めません。
法人の行動指針にもありますが「出来ない理由を考えるのではなく、出来る方法を考え、まずやってみる。」という言葉を念頭に置いて個人を変えていくのではなく、周りの環境に働きかけていく事で、メンバーさんの生きにくさが解消できる場面はたくさんあるような気がしています。
そのために、日々スクエアの中で行っている支援はもちろんですが、企業さんには何度も足を運んで丁寧に説明したり、障害者雇用のありかたそのものを考えてみたり、少しでも生きにくさ・生きづらさを感じている方が、のびのびと働けるための努力をしたいと思っています。
私は結構尽くすタイプなので(笑)人を幸せに努力をすることで、自分のやるべきことが明確になるし、自分自身の成長にもつながっていく。結局は、自分の幸せになって還ってくるんじゃないかなと思っています。そういう自分が今できる「地続きな努力」をして行った先に、きっと自分の子供や、もしかしたら孫の代まで社会を変えていけるのかなと思っています。
岡 愛里(おか・あいり)
SOCIALSQUARE 上熊本店
スクエアマネージャー/動物看護師/トリマー/ハンドラー
1985年生まれ。熊本県阿蘇市出身。小さい頃から動物を助けることだけを目標に進学。動物看護師・トリマー・ハンドラー取得後、動物病院に入職。結婚と出産のため動物職から離れ、その後はパソコンとFP・医療事務の資格を取得し、人間の病院でDr.の秘書として勤務。現在の世の中での子供達の将来を考え、今の自分に出来ること探していく中で、ソーシャルデザインワークスに出逢い転職。今後は誰もがゆっくりと楽しく生きやすい未来になるように、日々努力したい。