利用者様の声 Member's Voice|内郷店 Vol.3

Member’s Voiceは、ソーシャルデザインワークスが運営する障害福祉事業所(ソーシャルスクエア)を利用されて、就職をされた卒業生の声を紹介するコーナーです。スクエアでの活動や訓練を通して、学べたものや得られた気づ […]

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Member's Voiceは、ソーシャルデザインワークスが運営する障害福祉事業所(ソーシャルスクエア)を利用されて、就職をされた卒業生の声を紹介するコーナーです。スクエアでの活動や訓練を通して、学べたものや得られた気づきを語っていただきました!お名前|Mさん
年 齢|50代
ご病気/障害のご状況|うつ病
就職先(仕事内容) |運送業
勤務状況(週・時間)|週25時間〜週40時間(変動)

※情報は取材当時のものです

復職の一歩手前で立ち止まってしまう――そんなとき、何を整え、どこから始めればいいのか。今回お話を伺ったのは、ソーシャルスクエア内郷店のリワーク・復職プログラムを利用し、かつて勤めていた企業へ復帰したMさんです。以前にも自力で復職を試みましたが、うまくいかず再び休職状態に。今回は産業医の勧めで支援機関を活用し、「一人で抱えずに、まわりの意見を取り入れることができた」と語ります。復職に向けて役立った訓練や支援、環境の整え方を伺いました。

休むことも、働くことのうち。

—— 編集部 :今日はよろしくお願いします。お写真は少し緊張されますか?(インタビューの前にお写真を撮らせて頂きました)

撮られるのはちょっと恥ずかしいですね。撮るのは好きなんですけど、被写体になるのは…(笑)

—— 編集部 :Mさんは8月末まで4ヶ月程度スクエアで復職に向けて活動されて、9月からは実際に職場復帰(復職)されたとのことですが、色々と変化の大きな時期だったかと思います。そのあたりいかがでしたか?

起きる時間や生活サイクルは、通所中から復職を見据えて整えていました。ただ、体の使い方や疲れ方は仕事に戻ると全然違いますね。それでもスクエアにいる間に体力を戻せていたつもりでしたが、働く体力はもう少し必要だったようで、慣れるのが今後の課題でしょうか。

以前休職した際に部署異動となりまして、今回もその部署にそのまま復職して勤務しています。復職したてのときは5時間勤務。徐々に勤務時間を伸ばしていって一度はフルタイムの8時間に戻しました。ただ今は季節の変わり目もあって、いまは5時間ほどに短く調整しています。長く働くこと自体は目指しているんですけど、最近ちょっとバランスを崩してしまったので企業側と協議の上で調節した感じですね。ガチャガチャっと崩れたのを立て直している段階です。

—— 編集部 :「長く働くために、いまは休むことが必要」という捉え方に変わってきた、ということですね。

そうです。以前は「なんで休んじゃったんだ」と責めてしまっていたんですが、いまは「必要な休み」と考えられるようになってきました。その方が長く働き続けるために大事だと分かってきました。自分のこともちゃんと大事にする、周りに気を遣いすぎない――その考え方の変化が、回復のきっかけになっている気がします。

—— 編集部 :スクエアでの活動を通して学んだことの中で、復職してから役立ったものは何でしょう?

その場でできる呼吸法ですね。気持ちがざわついた瞬間に「ちょっと待て」と自分に声をかけ、深く息を吐く。それだけでも気持ちの向きが変わります。他にも、対処法をひとつにせず複数持っていること。スクエアに通っている間にストレスコントロールの手段をいくつか学んだり、考え方の転換を身につけることができたと思います。いろいろ状況に合わせて対処を選べるのが自分の安心感につながっています。呼吸・小休止に加えて、気持ちと体を切り替える短い行動を入れています。たとえば、余裕がある日は自分の車でひと息ついて戻るなど。

発症直後は“気持ちが落ち始めたらそのまま転げ落ちていってしまう”という感覚でしたが、今は落ち始めに気づき、対処をとる余裕ができました。

—— 編集部 :職場での対人コミュニケーションや職場から得られた配慮などはありましたか?

接客は少なめの部署なのですが、社内のやり取りはままあります。直属のリーダーや同僚には病気のことを共有していて、こまめに声がけを頂いたり、何より病気のあるなしに関係なく普通に接してもらえるのがありがたいです。スクエアと連携してくれている人事の方もいて、出勤の日は毎朝顔を合わせ、冗談を交えながら様子を気づかってくれる。やむを得ず早退をする日には「気にしなくていいからね」と。その一言があるだけで、後ろめたさが軽くなるというか、そういう何気ない言葉かけに救われています。別部署などあまり関わりのない方々には病気のことは必要最小限の共有にとどめていますね。

2度目の復職

—— 編集部 :前回の復職との違いはどういうところにあると思われますか?

自力で復職した時にはどうしても一人で抱えがちで、復職してもすぐ休みが続いてしまいました。今は隔週の面談がペースメーカーになっていて、「今日はしんどくて早退した」「新しい対処法を試したらどうだった」などを定期的に言語化して振り返る機会があります
スクエアの支援クルーと話をして第三者の客観的な視点が入ることで、「これで大丈夫かな」という不安が「この方向で調整すればいけるかも」に変わっています。必要なら休むことも大事で、一見後ろ向きに見える選択も「前進している過程」と捉え直すことができる。今までは一度ダメになると、もう全部失敗してしまっているような気がしていたのですが、支援クルーと話をする時間はそうじゃないことを確認できる大事な時間です。復職してからも2週間に1回のペースでこういった面談をしにスクエアへ来所しています。結果として、休みが連続しにくくなりました。

—— 編集部 なるほど。定期的な面談は不安解消やモチベーションの維持にもつながっているんですね。ほかにMさん自身に起きた変化はありますか?

はい。これはプライベートというか、内面的な変化ですが、以前は外に出たくない時期が長く続いて、おしゃれにも無頓着になっていたんです。でも最近ではYouTubeで見たランニングシューズに惹かれて「履いたらどんな感じかな」と思って買って、週1回・15分くらいの軽いランニングを始めました。新しいシューズで走ると意外と楽しくて、「外に出る」きっかけになりました。最初の休職の時にも、産業医から太陽の光を浴びたり外に出る習慣が大事だよと言われていたので、正直まだそんな気分ではありませんでしたが義務的に散歩に出ることはしていたんです。でも自分から何かしてみようという気はその時は起きなかったですね。

カメラにも興味があって、本当はそっちも始めたいんですが、お金がかかることなのでいまはバイクとランニングから少しずつ始めています。やりたいことや欲しいものを考えると、働くモチベーションにもなるじゃないですか。服もただあるものを着るだけだったのが、「このニットとパンツには、こういう靴が合いそうだな」と考えるようになって、外見への関心も戻ってきました。小さいけれど、自分の中にも確かな変化が出ていると思います。

—— 編集部 :やりたいことを少しずつ実行していく流れができてきた、とすごく良いサイクルができてきているんですね。ご家族との関係や、周囲の反応に変化はありましたか?

妻と犬と一緒にドッグカフェに行ったとき、隣の席の方と自然に会話をしていたことがありました。その時は自分では気が付かなかったのですが、帰りの車で妻に「普通に知らない人と話してたね」と言われました。以前は自分からよく知らない方に話かけるタイプではなかったので、自分でも驚きました。スクエアに通所を始めてからの変化ですね。

スクエアに通うことで自然と挨拶を交わす人が増えましたし、喫煙所などで話す機会もありました。スクエアに通っている人は年代も20代から、自分みたいな50代まで、もっと上の方もいらっしゃるのかな…とにかく幅広くて、自分にはない考え方に触れられるのが大きかったです。通っている理由も職歴もさまざまで、ちょっと話すだけでその価値観の多様さに最初は驚いてばかりでした。

たとえば、初対面で丁寧に挨拶してくださった方がいらっしゃいました。「好きな食べ物は?」「好きな車はなんですか?」と色々と質問をしてくれる若い方で、直球のコミュニケーションに最初は驚きました。おそらくその方もコミュニケーションの訓練をされていたんだと思いますが、自然とそれに答えて会話が続いていくような微笑ましいやり取りから、コミュニケーションって「上手さ」じゃなくて「誠実さ」で、いろんな接し方があっていいんだと感じたんですよね。

人の気持ちに踏み込みすぎるのは良くないかもしれませんが、質問されて嫌な気分にはならないと気づきました。むしろ、そのやり取りから相手のことを知れたり、逆に自分から質問してみたりして会話が広がる。以前は病気の影響からかコミュニケーションを避けがちになっていましたし、自分から質問することを避けていました。でもその方のおかげでもう少し気楽に考えてもいいな、と分かって目からウロコでしたね。日常の場では得にくい体験を、スクエアで学べた感覚があります。

一人で抱えないという選択

—— 編集部 :復職前後の不安についてはどうでしたか?

正直「やっていけるだろうか」という不安は常にありました。休職したのは1度ではないし、また体調が崩れたら、収入はどうなるのか……といった現実的な不安も。そうした不安はスクエアの支援クルーのみなさんにもよく相談していました。結局、やってみないとわからない部分もありますが、今回は前より気持ちが整っていたと思います。

前回は休みが続いてしまいましたが、今回は会社まで行けたら、必要であれば「早退」という形で区切って休む、という発想に切り替えられた。休みが連続しにくくなったのは大きな変化です。ただ崩れてしまったと捉えるのではなく、受け入れた上でここからどう戻すかを考えることができている。それは大きな変化だと思います。

—— 編集部 これから復職や就職の支援を検討する方へメッセージをお願いします。

一人で考えるより、スクエアのような支援機関でサポートを受けることで多角的に気づきを得られたのが大きかったです。そこでの学びをもとに復職後もいろいろな考え方を持てるようになり、「本当によかった」と実感しています。
一人だと考えがひとつ、ふたつくらいのパターンに固まりがちですが、ここでは「こういう見方もある」と客観的な視点をたくさんもらえました。ストレスコントロールも、これまで一本化していた方法だけでなく、「何通りもある中から自分に合うものを選べばいい」と教わったのが救いになりました。気づきを与えてくれる場所でしたね。

—— 編集部 :とはいえ、長年のやり方や考え方を変えるのは難しい面もありますよね。それでもスッと受け取れた背景は?

復職と休職を繰り返す中で、「自分も変わらなきゃ」と思い始めたタイミングでスクエアへの通所が始まったことが大きいです。自分の心境の変化と、スクエアでの学びがちょうど噛み合って、支援クルーや周りの皆さんからのいろいろな提案が素直に入ってきました。
かたくなに孤独と向き合っているだけでは変われない。だから他者の意見を幅広く聞き、その中から「これは自分に合いそう」「これは違う」を選べばいい。今までと一つでも違う要素を取り入れられれば、違う方向に進むきっかけになると思います。

—— 編集部 :そう考えると、一度目の復職で上手くいかなかったことも、意見を取り入れるための必要なステップだった、と捉えることもできますね。

そうですね。最初は自分と家族だけで抱えていたので、こうしたサービス(復職やリワークプログラム)の存在自体を知りませんでしたし、限界があったのだと思います。転機は会社の産業医からの提案でした。「こういうところがあるよ」と紹介されて、支援機関からご縁で復職・リワーク支援をされているソーシャルスクエアという場所を紹介していただいた。タイミングももちろんですが環境や支援が自分に合っていて、うまくここまで来れた感覚があります。

—— 編集部 :外に出られない状態から、通所・復職につながって定期的に面談もしながら働かれている――十分すごい、果てしない階段を一歩一歩登られていると感じます。そして少しづつご自身がやりたいことも楽しめている。今日着ていらっしゃるセーターも、とても素敵ですね。

ありがとうございます。実は色違いでそろえたくらい気に入っていて、店に問い合わせたりもしました。使いやすくて、今日みたいな気候にもぴったりの色で。こういう小さな楽しみが、これからもどんどん増えるといいなと思います。

Mさん(左)と支援クルーの吉田(右)

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ソーシャルスクエアが大切にしているのは、その人の特性にあった支援を行うこと。そしてそれをより実践に近い環境で行うことです。障害と一口にいっても、1人ひとり直面している問題は異なりますし、得意不得意があります。それを無理矢理に強制するのではなく、本人の特性にあった支援を探る。そのことで少しずつ自信がつき、自分でできることが増えていく。それが自立に繫がるのだと思います。
このコーナーでは、今後も、就労を決めた方や支援にあたるクルーの生の声を紹介していきます。スクエアでのプログラムをイメージして頂いたり、ここで働くことをイメージして頂いたり、気軽にお読み下さい。スクエアに興味を持って頂いた方は、ぜひご連絡下さい。見学などの案内をさせて頂きます。

ソーシャルスクエア内郷

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