自分をさらけ出せる場所

ソーシャルスクエアいわき店のクルーとして自立支援にあたる菊池文恵の声を紹介します。介護福祉の業界から障害福祉に飛び込んだ思いとは。

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菊池 文恵

SOCIALSQUARE|いわき店 クルー

ソーシャルスクエアという地域に開かれた現場で、障害福祉に関わるスタッフは、どのような問題意識を持ち、あるいはどのような理想を掲げて支援を行っているのか。クルーにインタビューをしてその声を紹介していくのが「Crew’s Voice」のコーナーです。
今回は、2017年8月から、ソーシャルスクエアいわき店のクルーとして自立支援にあたる菊池文恵の声を紹介します。入社して1年。「ここ、スクエアなら素を出せる」と語った菊池。彼女の前職でもある、介護福祉の業界から障害福祉に飛び込んだ思いを聞きました。
―チャレンジできる環境

ソーシャルデザインワークスに入社して間もなく1年になりますが、率直な感想として、「ここなら素を出せる」というのがあります。先日も、自分が企画した「アニマルセラピー」のカリキュラムを実際に提供することができました。障害福祉の会社なんだけれど、自分の興味のあることを実現できて、入社したばかりの自分のアイデアを聞いてくれる。そういう環境があるのでとても働きやすいです。
ここに来るまで10年ほど介護福祉の業界で働いて来ました。個人的な感想になってしまいますが、高齢者介護の現場では常に危険が伴うため、あまり冒険は出来ません。企画やサービスの提案も通らないことが多く、「危険」「何か起きたらどうする」って話ばかりでなかなか前には進みません。勿論、利用者様の安全を第一に考えることは当然なのですが、利用者様の本音を伺うと「飽きてる」「つまらない」って声が多いのに、新しい取り組みができない。そんな板挟み状態なので当時はジレンマが多かったです。
もともと介護に興味があるわけではありませんでした。私の祖母は、私が物心つく頃にはアルツハイマーとの診断を受けていました。症状が酷くて施設に入っていましたが、お盆と正月は戻って来ます。その時、症状が進行していた祖母が弄便をしてしまったりするのを見ていて、まだ小さかった私には、正直汚いというイメージしか持てませんでした。私は末っ子なので、上の2人は祖母が優しかったのを知ってるけど、私が知ってるのは認知症の祖母だけで。祖母を1人で介護していた私の母は、本当に大変だったと思います。祖母が施設に戻ったあと、1人きりで泣いている母が今でも記憶に残っています。
だから、むしろ私には介護は無理というか。その前は接客業でしたし。でも、接客業をしているうちに、もっと誰かの役に立てる仕事をしたくなってきて。そういう思い出があったからこそ、母が向き合ってきたものも知りたいって思いも生まれて、それで介護の仕事をやってみようと思ったんです。いざやってみると意外と楽しくて、抵抗なくできました。そして、今なら祖母の介護をしてあげられたのにと、介護を1人で背負っていた母の負担を思うと心から後悔しました。結局、その介護の仕事も辞めてしまったけど、たくさん学ばせてもらったし、今でも介護職について良かったと思っています。

―みんなそれぞれ違うからこそ、理念が必要だ
私、自分が他の人より優れていることなんて何もないなあって昔は悩んでいたこともあったんですが、ある時それをさらけ出したら、それでもいいんだって楽に生きられるようになって。人間何かひとつくらい取り柄があるはず!そう思えるようになりました。そういう自分もここでは許されている気がします。喫煙所でメンバーさんたちのここだけの話を聞いたりしてると、こんな自分だからこそ悩みに共感することはできるはずだって思うんです。こんな私でも取り組める仕事がある、自分の取り柄を生かせばいい。欠点ばかりに目を向けないで、もっと楽に生きた方が楽しいよって、私を見てメッセージになればいいなって思います!(笑)。
あなたはダメだ、これができないんだからこうしろって言われたら辛いですよね。だからまずは、ここまでできるのは素晴らしいことだって認めるところからスタートします。今まで家に引きこもっていた方がスクエアに来れた。それだけでもすごい進歩なんです。そういう向き合い方の会社なので、私もここでは自分らしくいられるんだと思います。個性として許されるっていうか。そういう感覚は働いていて初めての経験でした。
ソーシャルデザインワークスにはビジョンミーティングというのがあって、それぞれの個人の思いに向き合いながら、理念やビジョンを共有する時間にしています。性格も考え方も、得意なこともそれぞれ違ってるけど、それは自然なことだし、それぞれが違う人たちだからこそ、チームワークが生まれると思うんです。そのチームワークを発揮するために、理念とか目標を共有することが大事で。それは会社の運営もそうだしサービスもそうです。できないことはがんばる。できることを伸ばす。そしてみんなそれぞれ好きなことをやればいいって。

会社には色々なタイプの方がいますよね。だからスクエアのクルーも、これから就職を目指していくメンバーさんに対して、それぞれの接し方があったほうが人間関係を学ぶ上でいいと思うんです。私は、変な緊張感を持たれないよう敢えてメンバーさんに友達のように接します。でも、ちゃんと引くべき線は引いた上で接するように心がけています。私はずっと接客業をやっていたので、メンバーさんはお客様だという感覚が強いですかね。気持ちよく来てもらって気持ちよく帰ってもらう。だから、メンバーさんが帰る時には、なるべく外まで出て「さようなら」って言うようにしています。
これからも自分らしく、ずっと大好きな動物と一緒に楽しめるカリキュラムや企画を、どんどん提供していきたいと思います。今後の目標は、同じ福祉という枠組みから、酷い扱いをされている動物たちの悲惨な現状を伝え、知ってもらうことです。知らなかった人が、まず知る事から、世の中が変わっていくんだと思います。障害福祉の事業所なのに、動物と関わることができるのは不思議な気がしますが、みんなそれぞれが好きなこと得意なこと伝えたいことを持ち寄りながら、地域や福祉と関われたらいいですね。いわきがそんなところになれば、生きにくさを抱えてる人も動物も、ちょっとずつ楽になれるんじゃないかと思います。

profile 菊池 文恵 Fumie Kikuchi
介護職を10年ほど経験した後、障害福祉の世界も勉強したいと思いソーシャルデザインワークスへ入社。
無類の動物(生き物)好きで、動物福祉への関心も深い。

PROFILE
菊池文恵
菊池文恵

菊池 文恵(きくち・ふみえ)
SOCIALSQUARE 内郷店 サービス管理責任者
介護福祉士/Animal advocate

福島県いわき市出身。介護職を10年ほど経験した後、障害福祉サービスを知るためソーシャルデザインワークスへ。
無類の動物(生き物)好きで、動物福祉への関心も深い。

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