まだ繋がれていない人たちへ
今回は2021年11月入社、現在はソーシャルスクエア 水前寺店で就労移行支援の支援員として働く大石 泰山をご紹介。フリーランスの家庭教師という異色のキャリアの持ち主で不登校の生徒の受け持ちもしていたという。対人支援を通じて感じた障害福祉に対する「想い」とは?
大石 泰山(おおいし・たいざん)
SOCIALSQUARE 水前寺店 スクエアクルー
ソーシャルスクエアという地域に開かれた現場で障害福祉に関わるクルーは、どのような問題意識を持ち、どのような理想を掲げて支援を行っているのか。その声をインタビュー記事で紹介していく「Crew’s Voice」のコーナーです。
今回は2021年11月入社、現在はソーシャルスクエア 水前寺店で就労移行支援の支援員として働く大石 泰山をご紹介。フリーランスの家庭教師という異色のキャリアの持ち主で不登校の生徒の受け持ちもしていたという。対人支援を通じて感じた障害福祉に対する「想い」とは?
※掲載内容は取材当時のものです
息抜きも重要
現在はソーシャルスクエア 水前寺店で就労移行支援の支援クルーとして働いています。就労移行支援サービスをご利用されているメンバーさんが就職するためのスキルを身につけ、マッチした職場へと出会えるようにすることが私の主なお仕事内容ですね。
就労移行支援は2年間で就職を目指すサービスなので、その2年間の間どう過ごすか支援計画を立てたり、提供するカリキュラムを実施してビジネスマナーや職場を想定したコミュニケーションを身につけていけるようにサポートしています。水前寺店の就労移行支援のカリキュラムを月10〜12回程度は担当しているので、その準備や内容を考えたりすることが多いですね。学校の先生みたいに。
社会に出る際には真面目に仕事をすることも大切だけど、息抜きも重要だと思っています。スクエアの環境で、あまりに過剰なケアをしてしまうと利用メンバーさんが実際社会に出たときに、ギャップで苦しい思いをしてしまうじゃないですか。なので自身はメリハリが大切ということを伝えるために仕事の中でエンタメ要素をいれています。
そういう理由で変わり種なカリキュラムを行うこともあって、人気があったのは「色彩心理」のカリキュラムです。色が人間に与える影響や印象について考えるカリキュラムでした。私服が結構派手なタイプで、色を使うことが好きだったので自分も興味を持って取り組むことができたと思います。こうやって支援クルーのやりたいことや興味があることもカリキュラム化できるのは、他の福祉事業所とは一味違うところかなと思います。
卒業メンバーさんとツーショットの大石(右)
フリーランスの家庭教師出身
元々実家が寺院で、長男なので漠然と継ぐのかなと思っていたんです。ただ、お経を唱えるのに向いていない声帯だったんですよね(笑)それで迷った時期があって、大学時代にアルバイトしていた家庭教師を本気でやってみようかなということで暫くフリーランスの家庭教師をやっていました。自分で営業活動をしていくうちに、生徒さんも結構集まった感じですね。小学校高学年〜中学校3年生くらいまでの生徒さんを教えていました。
その中で夜は普通に進学校の生徒さんの勉強を見て、昼間は不登校の生徒さんの勉強を見るようになったんです。最初は今みたいに障がいとか病気に対する知識もあまりなかったので、試行錯誤しながらケアをしていたように思います。勉強以外にコミュニケーションだったり、生活リズムの見直しをしたりしました。そうしていくうちに、心配だった生徒さんが卒業したタイミングで一区切りつけようと思って熊本へUターンしました。
この家庭教師時代のスキルを何か生かせないかなと思った時に、支援員という仕事に興味を持って探していました。熊本でもいくつか障害福祉の支援員の求人は出ていたので、その中に今の法人(ソーシャルデザインワークス)があったというような出会いですね。
元々、全く別の業界から転職してきたので障害福祉のイメージは、高齢者の介護と近いものを持っていました。就職活動をしながらスクエアに見学に来た時に、みなさん生き生きと通ってきて活動されていたし、働いている人も和気藹々としていてイメージが覆された気がしました。
私服はビビッドな色が多い大石
まだ繋がれていない人たちへ
実際に福祉の現場で働いてみて、家庭教師時代に培った「指導」というスキルが、スクエアでの「支援」とちょっと違うんだなと思い知らされた部分がありました。指導ではなくあくまでもサポート、そっと背中を押すような立ち位置の感覚を掴むまで苦労した部分はあります。最近はだいぶパランスが取れてきたのかなと思います。
自分がメインで担当していた利用メンバーさんの就職が決まった時や、名前を覚えてもらったりした時は、やりがいや喜びを感じていますね。発達障害のひとつで自閉スペクトラム症の利用メンバーさんは、特性上、人と目を合わせたり人との会話を苦手とする方が多いのですが、何度かやり取りを続けていくうちに慣れてきてくれて、少しづつですが会話や目線をくれるように変化していきました。
すごくすごく些細な事なのかもしれないですけど、こうやって利用メンバーさんと人間関係が構築できる事で、居場所として認めていってもらっているのかなと思っています。
障害福祉とは全くの畑違いで、入社して今の職業についているからこそ、良い意味で障がいを意識しないようにできているのかなと思っています。障がいや特性だけがその人のすべてではない。一人ひとり個別に支援を変えて、そういう「型」に当てはめない支援ができているんじゃないかなと。
具体的にはコミュニケーションの取り方ひとつとっても、距離感を考えながらに物腰を変えたり、声のかけ方を調整したり。細かくチューニングを変えながら接するようにしていますね。
ソーシャルスクエアの利用メンバーさんの多くは20歳をこえた成人で、そういった方のなかには大人になってから障がいになってしまった、あるいは発覚した人などがいます。
子どもの頃から障害のある方は、比較的に保護者や支援員からのサポートが得られる環境とが整っているけれど、そうではなく大人になってから障がいになって、もしくは診断を受けて、専門的に支援を受けられる機関に繋がることができていない、サポートを得られる方法を知らない人は世の中にはいっぱいいるんだなと感じています。
大人になってしまうと、リカバリーできる社会資源がとても少ない。それ故に家庭だけで障がいを受け止めているようなところがあるような気がしています。社会がごくごく自然に、障がいを受け入れて身近になることで、支援にまだ繋がれていない人達のSOSを感知したり、しかるべきところへ繋がることが簡単にできるような世の中になってほしいなと思います。
小学校や学生時代に障がいについて学ぶ機会もありますが、自分たちの時代は大抵「身体障がい」について学ぶ機会が多かった印象があります。いまはもっと「精神障がい」などについて知る機会や学ぶ機会があっていいと思うんです。地域で教えられる環境や学校などの教育機関で、小さい頃から「障がい」について深く触れられる教育ができれば、偏見などもなくなっていくんじゃないかなって思います。
面談中の大石
その一助ではないですが、いまは特別支援学校に対して進路先が決まっていない生徒さんや親御さん、支援学校の先生に対して対面やオンラインなどあらゆる手段で就労移行や自立移行についての紹介や説明会の実施をしています。もっと色んな層の方に人に障がいや自分たちのような福祉サービスについて知ってもらうには、影響力のある有名人や有名人ローカルタレントさんともコラボがしてみたいですね。ギャラの問題もあるけれど(笑)
今後の展望としては、自分は「教える」ということが好きなので、将来的に支援員の育成なんかも興味あります。「教える」ことの良さって、自分自身のアドバンテージが関係ないところだと思うんです。野球とかに例えてみると、自分自身は野球の能力は全然低いんですけど、誰かに教える立場になったときその人が野球が上手くなったときすごく喜べるんです。
なにかを教えてみて、しっかりとその人が成長した様子をみられると、嬉しいしテンションが上がります。もちろん自分自身の成長も大切なんですけど、人の成長を感じることで自身の幸せにつながるタイプです。
この仕事は利用メンバーさんの成長がよく見られる環境なので向いているかもしれないですね。
大石 泰山(おおいし・たいざん)
SOCIALSQUARE 上乃裏店
スクエアクルー
1990年生まれ。旧 西合志町出身 (現 合志市)
北九州の大学卒業後、小倉でフリーランスで家庭教師を営む。当初は、夜間のみ進学を目標とする生徒に勉強の指導を行っていたが、とあるきっかけで不登校の生徒を日中にみるようになり、学校へ再登校できるように勉強以外にコミュニケーションや生活リズムの見直し等の支援を行うようになる。
7年間の活動後、地元熊本に帰郷。2年間民間企業に勤め、「すべての仲間の幸せを追求すると共に諦めのない社会を創る」という会社のヴィジョンに共感し、2021年に入職。
家庭教師時代に培った経験を活かし、諦めのない社会に貢献していく。好きな事は、ウィンドウショッピングと和菓子を肴にラム酒・日本酒を嗜むこと。