緊急ではないけれど、すごく重要な仕事

小松 知寛(こまつ・ともひろ) SOCIALSQUARE 秋田山王店 スクエアクルー・郡山駅前店 管理者/法人本部・事業部補佐 ソーシャルスクエアという地域に開かれた現場で障害福祉に関わるクルーは、どのような問題意識を持 […]

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小松 知寛(こまつ・ともひろ)

SOCIALSQUARE 秋田山王店 スクエアクルー・郡山駅前店 管理者/法人本部・事業部補佐

ソーシャルスクエアという地域に開かれた現場で障害福祉に関わるクルーは、どのような問題意識を持ち、どのような理想を掲げて支援を行っているのか。その声をインタビュー記事で紹介していく「Crew’s Voice」のコーナーです。

2015年に新卒でスクエアに入職。いわき内郷店では、就労移行支援員として企業対応を担当。その後、西宮店の立ち上げや法人のデザイン業務にも携わるが、とある思いから2019年にソーシャルスクエアを退職し、地元の建設会社へ入職。その後、2021年7月にソーシャルスクエアへ再入職をする。再入職までの当時の彼の考えや思い、そして今の仕事について徹底インタビュー。

※掲載内容は取材当時のものです

ソーシャルスクエアの土台作り

—— 編集部:小松さんは現在どのような役割を担っていますか?

普段は他のスクエア支援クルーと同じように、秋田山王店でご利用メンバーさんの就労移行自立訓練(生活訓練)の支援をしています。現在、自分はソーシャルスクエアの事業部補佐という役職をいただいていますが、事業部補佐としての業務はなにと聞かれると「これ!」という業務の単語がでないですね…色々しています。

流石に色々だけだとまずいか(笑)主にソーシャルスクエアの運営に関する部分を任せていただいていますね。具体的に業務内容を挙げるとすれば、内部監査やコンプライアンスに関する業務、会議の取りまとめやファシリテート、事業分析やデータ集計などをしています。また、ソーシャルスクエアは東北や関西、九州地方と、全国エリアで店舗の展開をしているので、各店舗の状況把握や運営のサポートも業務としてあります。

ソーシャルスクエアの自分の立ち位置としては、ちょっと引いたところでソーシャルスクエアを見て、そこからサポートに入ることで理想の形に整えているって感じです。これはソーシャルスクエア代表の北山さんからこの仕事を任せていただいたときに伝えられた言葉で、自身の業務について腑に落ちた話なんですが、 「今後全国に広げていくソーシャルスクエアにとって、絶対に必要がある業務だから、それを小松君に任せたい」って言っていただいたんです。その言葉で自分に任された業務の重要性がはっきりわかりましたね。ソーシャルスクエアの支援の質や安全性を高めるため、支援も事業部補佐の仕事もしっかりと遂行していきたいと思います。

自分の成長を求めて

—— 編集部:ソーシャルスクエア1度辞めて転職後、再度ソーシャルスクエアに就職という珍しい経歴をしていらっしゃいますが、経緯についてお聞きしてもいいですか?

まずソーシャルスクエアとの初めに関わったところから話すと、僕は新卒でソーシャルスクエアに入職したんです。大学院生の頃、就職活動をしている際に知り合いからソーシャルスクエア代表の北山さんを紹介してもらって、北山さんの話が面白くてソーシャルスクエアへの入職を決めました。

自分が入職した時のソーシャルスクエアはまだ設立されたばかりの法人だったので、まだいわき内郷店のみの運営でした。支援についても特にやり方も決まってなくて、試行錯誤でご利用メンバーさんの支援をしてましたし、ご利用メンバーさんの夢や希望を叶えるため、就労支援の企業対応や実習先の開拓など様々な機関との関係構築のために走り回ってました。いわき内郷店の他に他県でも店舗が出店されて、少しずつ大きくなっていくソーシャルスクエアの様子をみた当時の自分は「自分がここを大きくしていったんだぞー!」ってひそかに思ったりしてましたね…今思うとあの頃の自分は結構調子にのっていました…(笑)

しばらくソーシャルスクエアで仕事を続けて、気づくと僕はソーシャルスクエアの中で一番古株の支援クルーになっていました。長くここで勤めていたこともあって、何度かマネージャーにならないかといった話も頂いていたんですが、当時の僕は、運営や責任業務に対してあまり前向きに思えなくて、好きに支援をして働いていたいって気持ちが強かったんだと思います。でも自分が30歳手前になったとき、「環境に甘えているな」って感じ始めたんです。

ソーシャルスクエアのクルーはいい人ばかりで、曖昧な立場の自分でも受け入れていただけていましたが、このまま居心地のいい環境に残り続けてしまっては自分はいつまでも成長できない。もっと別の世界を見ていくべきだと思って、ソーシャルスクエアから退職させていただきました。

ソーシャルスクエアを退職した後は、ゼネコンの営業として働いていました。そこでは「営業を科学する」という考え方があって、僕自身この考えはソーシャルスクエアに再就職した今でも結構大事にしています。営業を科学というのは、再現性が高く、人柄に頼らない営業方法を数字やデータを並べて分析していくといったもので、お客さんに対して営業をする際に、営業する人間が誰であっても成功できる仕組みを考えるというようなものです。

支援でもそういった仕組みが必要だと感じていて、どのスクエアクルーがご利用メンバーさんの対応しても過不足のない支援ができている状態が理想だと思うんです。今の事業部補佐の業務内容でもそういった支援が実現できるように、数字やデータを集めて準備している最中ですね。

話が逸れてしまった(汗)…そういった知識や経験ができたことでゼネコンでの経験は非常に有意義ではありました。しかし、現実を知ったというか…、やはりソーシャルスクエアのように自由性の高い風土は珍しいものなんだと痛感しました。
何かをするにおいても、周りの顔色を伺ったり、人間関係を気にしていなければならなくて…こういった生きにくさは障がいの有無など関係ないなとも感じました。

ここでの経験で改めて、誰もが生きやすい社会の実現に寄与できる仕事がしたいって思ったんです。

自分の理想を実現できるのはソーシャルスクエアだと思い、自身の気持ちやゼネコンで学んだ知識や経験を活かしたいという話を理事の今泉さんや代表の北山さんに再就職の相談をして、2021年に新しく立ち上げられる予定の郡山店のマネージャーになるということでソーシャルスクエアに出戻りを経ました。その後の郡山店の立ち上げについては以前のCrew’s Voiceで話しているので、気になる方は読んでいただければ。

コツコツと、前向きな人を増やしていく

—— 編集部:再就職してからご本人の中で変化したことはありますか?

考え方が随分と変わってたなと思います。新卒で30歳まで働いていた時までは、課題解決や変化を起こすにはワンアイデアでどうにかなるとか、突破できるという思いで働いていました。しかし、現実ってそんなに甘くなくて、コツコツと何かを積み重ねていくことのほうが重要だと思うようになりました。

ご利用メンバーさんとの支援でも、1日で大きくご本人に変化を起こすなんてことはめったにできません。むしろ僕ら支援クルーがご利用メンバーさんにしていることは「昨日より今日をいかに良くするか」みたいな小さな工夫の積み重ねだと思うんです。ご利用メンバーさんとの何気ない会話でも、その会話から今後ご本人にとって何かが変わる小さなきっかけがつくれたら御の字って気持ちで支援をしています。

最近知ったもので、今の自分の座右の銘になっている「ニーバーの祈り」っていうのがあるんですけど

【ニーバの祈り】

神よ

変えることのできるものについてそれを変えるだけの勇気を与えたまえ。

変えることのできないものについては、それを受けいれるだけの冷静さを与えたまえ。

そして、変えることのできるものと、できないものとを、識別する知恵を与えたまえ

結構自分の人生や仕事で刺さる部分が多くて、
「変えることのできるものについてそれを変えるだけの勇気」に関しては、自分だとソーシャルスクエアを辞める時や、再就職を決心したときですかね。特に戻って来るときに、自分が新店舗のマネージャーになるというのはすごく勇気が必要なものでした。
「変えることのできないもの」は、例えば人の考え方を変えるとか。ゼネコン時代働いていたときでも、支援の仕事でも、人の考えって簡単には変えられないと感じています。ですので、ご利用メンバーさんとの面談でもご本人の考えに触れた時、互いの価値観に違いが見られたとしても相手に変化を求めるのではなく、冷静に受け入れるという姿勢を大切にしています。
でも、変化することでご利用メンバーさんにとっていいことになるのではないかと見極めることも時には必要で、そうした見極めには最後の「識別する知恵を与えたまえ」ってやつですね。ここは先に言っていた通り、自分やご利用メンバーさんの日々の積み重ねでわかってくるものだったり、いろいろな人からの話や本からの学びだったりだと思います。

ご利用メンバーさんやソーシャルスクエアが今積み重ねていること、ちいさな変化をしっかりと知覚し、それに対する新しいアプローチや対策方法を見つけていくことが今の僕の仕事だと思っています。
新しい仕事を見つけては手を付けているので、終わりが見えずたまに大変だと感じることもありますが、それはそれで案外楽しいと思う自分がいます。僕自身安定して決まった仕事をするよりも仕事に変化や刺激を求めるタイプだったんだなと気づくことができましたね。こういった気づきも多分あの時、自分がソーシャルスクエアを辞めずにずっと居座り続けていたら知れなかった一面だと思います。

何かを変えるには勇気も冷静さも、変化を見極める力も必要ですが、一人の力でできることかというと恐らく違うんです。自身の周りの人やスクエアの支援クルーの協力があるから勇気もでるし冷静な判断もできる。見極めることに関してもたくさんのデータや周りの意見、多数の人達の協力が必要だと思っています。

—— 編集部:今後の目標ややりたいことについてお聞かせください。

僕は2024年の4月からOPENする郡山駅前店に異動することになり、つい最近秋田山王店のクルーやご利用メンバーさんに送迎会をしてもらったんです。その時ご利用メンバーさんから自分にメッセージを送ってくれたんです。
「ソーシャルスクエアのおかげで自分は前向きになり救われました。ですので、別の地域の人もどんどん救っていってほしいです。」
とても嬉しい言葉でした。またこれが自分の仕事としてのやりがいなんだとも気づいて、これからも、少しでも多くの方が前向きになっていただけるよう励んでいこうと思いましたね。
世の中には様々な事情で前を向けない方がたくさんいます。そのような方が前を向く方法としてソーシャルスクエアのような「福祉事業所」があるのですが、人や地域によっては福祉資源そのものが知られていないこともあります。

自分たちのような存在を知っていただく、それが誰もが生きやすい社会の実現への一歩だと思って

信頼できる支援や、障がいも生まれも関係のないごちゃまぜに楽しめる活動の中で、
ソーシャルスクエアが誰もが安心して相談できる場であることを証明していけるよう
ソーシャルスクエアらしい活動がどこででもできるよう

自分はコツコツと土台を作っていこうと思います。

PROFILE
小松 知寛
小松 知寛

小松 知寛(こまつ・ともひろ)

SOCIALSQUARE 郡山駅前店・管理者
法人本部・事業部理事補佐


1990年生まれ。福島県いわき市出身。前橋工科大学工学部建築学科卒業、同大学院工学研究科修了。2015年に新卒でソーシャルデザインワークスに入社。いわき(現・内郷店)では、就労移行支援員として企業対応を担当。その後、西宮店の立ち上げや自立訓練も担当。その他に法人のデザイン業務にも携わる。2019年にソーシャルデザインワークスを退職し、地元の建設会社へ入社。
障害の有無に関わらず生きづらさを抱える社会の日常を目の当たりにし、もう一度誰もが生きやすい社会の実現に寄与できる仕事がしたいと思い、2021年7月にソーシャルデザインワークスへ再入職。

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