左手の障がいと支援の力

今回は2023年1月入社、ソーシャルスクエア上熊本店で支援員として働く置田修をご紹介。生まれつき左手に障がいを持ちながら、一般企業で働いていた彼はあることをきっかけに、就労支援に携る仕事をしていきたい気持ちが強くなり転職をした。彼が思う「障がい」とは?

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置田 修(おきた・おさむ)

SOCIALSQUARE 上熊本店スクエアクルー

ソーシャルスクエアという地域に開かれた現場で障害福祉に関わるクルーは、どのような問題意識を持ち、どのような理想を掲げて支援を行っているのか。その声をインタビュー記事で紹介していく「Crew’s Voice」のコーナーです。

今回は2023年1月入社、ソーシャルスクエア上熊本店で支援員として働く置田修をご紹介。生まれつき左手に障がいを持ちながら、一般企業で働いていた彼はあることをきっかけに、就労支援に携る仕事をしていきたい気持ちが強くなり転職をした。彼が思う「障がい」とは?

※掲載内容は取材当時のものです

障がいとはなんだろうか?

僕が福祉の仕事に就こうと思ったのは元の会社で障がい者手帳について聞かれたことがきっかけでした。
僕は生まれつき左手が小さくて、指も少ないんです。でも、それが障がいだという意識はほとんどなくて、普通に学校に行って、サッカー部に入って、飲食店でバイトもしていました。そこから、一般企業に就職し、その時に会社から「障がい者手帳を持っていないか」と聞かれたんです。

僕は会社から聞かれるまで障がい者手帳の存在すら知りませんでした。自分が生きていく中で、とくに不自由を感じたことがなかったので福祉サービスと関わりをもつ機会がなかったんです。しかし、それをきっかけに「福祉」という分野について調べるようになりました。

「障がいとはなんだろうか?」

自分が障がい者だということに、どう向き合っていくべきなのか?障がい者とはどういう人たちなのだろう?
そんな疑問と興味がどんどん生まれていったんです。調べていく内にA型・B型就労事業所、就労移行事業所など、就労福祉サービスの存在も知り、障がいがある方々の悩みや不安についても目に入っていくようになりました。
よくあるパターンかもしれないんですけど、障がいのある自分であれば共感できる部分もあるかもしれないって感じ、障がいのある方を支援する福祉の仕事をしてみたいなと思いました。

福祉の仕事に就くことに決心したのは40歳の時でした。それまで福祉とは全く関係ない仕事をしていて、未知の業界だったので、転職をするのだとしたらここがラストチャンスだと思ったんです。そこで見つけたのが、ソーシャルスクエアでした。

障がいのある自分が支援員として働けるのかとやや不安に思っていたところもありましたが、インターンシップでバイトとして1ヶ月間働いてみたところ、一緒に働くクルーの皆さんもご利用メンバーさんもあたたかく迎え入れて下さり、2023年にソーシャルスクエア上熊本店の支援員として働くことが決まりました。

見える障がいの力

ソーシャルスクエアは、障がいのある方が就職や復職を目指す就労移行支援と、生活改善や社会参加を目的とした自立訓練(生活訓練)という障がい福祉サービスを行っています。店舗によってはサービスごとに担当を分けて支援をするところもありますが、上熊本店の場合は特に担当を分けることなく、就労移行支援・自立訓練(生活訓練)どちらの支援もさせていただいています。支援業務は基本的に、ご利用メンバーさんとコミュニケーションをとる対人業務がメインですね。
ご利用メンバーさんとお話をする中で、大切なことは共感することかなと思っています。
自分にもそういった思いをしたことがあるとか
自分の場合だったらこんなことしてみているなど
「共感」というのは、ご利用メンバーさんにとって、自分と同じように困り感を持つ人がいるという安心感や、できることを見つけるヒントになるんじゃないかと思うんです。

そういった共感をするためにも、僕自身がご利用メンバーさんにとって会話の入口的な存在になれたらと思っていて、見学や体験の方など、初めましての方には率先して挨拶や話しかけにいくようにしていますね。あと単純に、ご利用メンバーさんと話すことが好きで、会話してもらえるのが嬉しくて、ついたくさん話してしまっています(笑)

その他の業務では、事業所が閉所したあとにご利用メンバーさんの様子についてパソコンで記録する日報作成の業務もあります。この業務は僕の障がい特性上苦手な部類で…僕の場合人よりも指の形が違うので、キーボードを打つ速度が一般の人と比べて遅くなってしまうんです。そのため、文字の打ち込み量が多かったりする時は、他のクルーの方に頼らせていただいています。代わりに、ご利用メンバーさんとの面談や、企業や就労事業所への見学・実習、面接の同行など別業務の割合を多めにしていますね。ソーシャルスクエアで働いてみて、良い意味で障がいに対して特別視されないところはいいなと思っていて、今の自分にできることを精一杯やらせてもらっています。

ここで働いてから、ご利用メンバーさんに
「置田さんは、障がいがあるのに頑張って働いていて、元気がもらえます」
って言っていただいたことがあって、僕その言葉がすごく嬉しかったんです。


同時に身体障がいという「見える障がい」だからこそできることがあるんだと気づくことができました。
発達や精神の障がいと違って、身体障がいは、パッと見て障がいがあるとわかりやすいし、目にも入りやすいんです。外で歩いていてもたまに、人の視線を感じる時はありますし、子どもだったら素直なので「あの人の手、小さい」って言っちゃったりもします。でも、「注目されやすい」この障がいの特性は自分の武器にもなるなとも考えていて、何か自分が伝えたいことや知ってほしいことがあった時、普通の人より有利ですし、
ご利用メンバーさんからいただいた言葉のように、僕が働く様子を見て障がいのある方々の活力になるのであれば、身体障がいの僕がこの仕事をした意味があったなって思えたんです。

誰かにとっての「きっかけ」

今後の目標というと、支援の質をもっと向上させたいなと思っています。福祉の知識をもっと身に着けるとか、経験を積むというのもありますが、やっていきたいと思っていることは
ご利用メンバーさんのことについて深く考えて、工夫した支援をすることですね。
また、ご利用メンバーさんにも「工夫」してみてもらいたいと思っています。

これは、僕自身が知らず知らずのうちに工夫していたことなんですけど、僕って指の形状的に両手でお盆とかを持ち運ぶことができないんです。このままだと、セルフで運ぶようなうどん屋さんとか食堂系の飲食店だとトレーが運べなくて困っちゃうんですけど…でも小さいほうの手にボールペンを挟んでから、お盆をもつと、
バランスが取れるようになって運べなかったお盆が簡単に運べるようになるんです。

こんな感じに、できないはずのことも補助を加える工夫をしてみると、できることになることもあります。
ご利用メンバーさんのなかには
「自分はこういったことをしてみたいけれど、障がい・病気があるのでできない」
「やったことないので、無理だと思う」
と面談やお話をされる方もいらっしゃいますが、助」や「誰かに頼る」という工夫で変わることはあるんです。

目が見えなければメガネをかけるし、お盆が運べなければボールペンだって使ってみたり…どんどん工夫してみて、それでも難しそうなら誰かに工夫の仕方を相談してみればいいんです。そうした工夫は迷惑ということは全くないですし、僕からしたら、ご利用メンバーさんに相談していただけることは嬉しいことですしね。

ご利用メンバーさんの悩みや不安に対してどのような工夫をするといいのか、答えをすぐに出せるほどの知識や経験は、今の僕にはないのですが、一緒に考えることはできます。
まずは僕自身ご利用メンバーさんから頼っていただけるよう、スクエアの入り口としてご利用メンバーさんとたくさん話して、少しでもご本人について知っていけるような支援を頑張っていきたいと思います。

また今後は、身体障がいという見える障がいで、支援の仕事をしている自分だからできることについてもっと考えていきたいと思っています。今回クルーズボイスのインタビューを受けたのは、先に話した「自分の働く姿で元気がでる」というご利用メンバーさんからの言葉で、自分が障がい者であることにどう向き合っていくべきなのか、少しわかった気がしたからなんです。

身体障がいである自分でも、前の会社のような機会がなければ福祉サービスの存在は全く目に入ってきませんでした。それが、一般の人であれば「福祉」というものはもっと遠い存在なんだろうなと思います。自分のように、障がいがある人は支援を受ける機会のほうが多いのですが、こうして支援クルーとして誰かの支援をしていることを知ってもらうということは、障がいのある人にとっての勇気や活力だったり、福祉に興味のない人にとっての認識の変化や意識を向ける機会だったり誰かにとっての「きっかけ」になれるのかなって考えました。
こうした自分の働きで、少しでも障がいに理解ある社会になっていくといいなと思います。

 

 

PROFILE
置田 修
置田 修

置田 修(おきた・おさむ)
SOCIALSQUARE 上熊本店
スクエアクルー

自身も生まれつきで左手に障がいを持ち「障がいとはなんだろう?」を考えてきた。一般企業に勤務していたが、就労支援に携る仕事をしていきたい気持ちが強くなり転職を決める。
2023年ソーシャルデザインワークスの理念に共感し入職。

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