福祉のイメージを変える
2001年生まれ。熊本県熊本市出身。北九州の大学で地域福祉について学び、自分の生まれ育った地域で福祉に携わりながら地域貢献をしたいと思っていたところ、偶然ソーシャルデザインワークスと出会う。新卒としてスクエアに入職した当時のエピソードから、彼が感じている社会に対しての違和感など。彼の想いと考えをインタビュー。
下錦田 亮 (しもにしきだ・りょう)
SOCIALSQUARE 上熊本店スクエアクルー /アシスタントマネージャー
ソーシャルスクエアという地域に開かれた現場で障害福祉に関わるクルーは、どのような問題意識を持ち、どのような理想を掲げて支援を行っているのか。その声をインタビュー記事で紹介していく「Crew’s Voice」のコーナーです。
2001年生まれ。熊本県熊本市出身。北九州の大学で地域福祉について学び、自分の生まれ育った地域で福祉に携わりながら地域貢献をしたいと思っていたところ、偶然ソーシャルデザインワークスと出会う。新卒としてスクエアに入職した当時のエピソードから、彼が感じている社会に対しての違和感など。彼の想いと考えをインタビュー。
※掲載内容は取材当時のものです
共有する関係
—— 編集部 - 現在の役職について教えてください。
2025年度から上熊本店のAMG(アシスタントマネージャー)の役職をいただき、上熊本店の運営部分に関わらせてもらってます。
—— 編集部 - 下錦田さんって確か、2023年に新卒でスクエア入職でしたよね?もうAMGになってるのすごいです!AMGになったことで心境の変化などはありますか?
キャリアの早い段階で、このような挑戦の機会をいただけるのは本当にありがたいです。
もともと、運営業務はAMGになる前から少しずつ関わらせていただいていたので、自分の中で大きく何かが変わったってわけではないんですが…“AMG”という肩書きを正式にいただいたことで、改めて責任の重さを実感し始めています。
—— 編集部 - AMGとなると、クルーのサポートなども含まれてきますもんね…支援の視野がかなり広がるんじゃないかという印象があります。そんな下錦田さんに、「支援」への考え方を聞いてみたいです。
僕にとっての支援は、相手に何かを“教える”というより“共有する”というのが、今のところ一番しっくりきています。
相手の考えと自分の考えを分かち合いながら、一緒に状況を見つめていくような状態がかなり理想的だと思ってます。
支援などで、僕の考えをお伝えすることがあっても、一方的にそれを全て受け入れてもらうっていうより、「ちょっと参考にしてみよ」くらいに捉えてもらうほうがいいなって考えてますね。
新卒でスエクアに入職して、いろいろと悩んだ末にできたスタンスです。
—— 編集部 - 悩み、というと具体的にどういったものでしょう?
一番に困難な壁だと感じたのは「ご利用メンバーさんとの関わり方」ですかね。
—— 編集部 - なるほど。あれでしょうか?「障害のある方と関わる機会がなかったから、どうコミュニケーションとるべきか」…みたいな??
いえ、自分は幼少時から結構障害のある方と関わる機会は多く、大学でも福祉分野を学んできていたので、その部分に悩んだことはありませんでしたね。むしろ、自信があったほうでした。
ただそれでも、初対面のご利用メンバーさんからしたら、僕ってただの「新卒で入職してきた若いクルー」でしかないんですよね。自分の経験とか学んできたこととか関係なく、自分の年の若さや「新卒」って要素は、支援を受ける側の方からしたら不安なんだろうなっていうことに気づいた時ご利用メンバーさんにどんな支援をしたらいいのかわからなくなったんです。
……でも、こればっかりは時間経過しか解決法がないので。いろいろ考えてみたんですが、もういっそのこと、自分みたいな存在もご利用メンバーさんにとっての「訓練」として活かしていただけたらいいなと考えることにしたんです。
—— 編集部 - 訓練ですか??
ご利用メンバーさんが今後就職した時に、自分のような若い世代の方が同僚や上司になる可能性もあると思うんです。だから、そういったときに備えて若い世代の自分を有効活用していただけたらと感じました。
また、支援でご利用メンバーさんの悩みを聞いていると結構自分と似てることで悩んでると思ったんです。
「成長するために、頑張りたいけれど思うようにいかない」とか「こうしたいのに、上手くいかない」とか新卒である自分にとって共感できることが多いと感じました。だったら、似ていることで悩んでいる者同士考えを共有していくほうが良いんじゃないかって思うようになり、いまのスタンスができていきました。
なぜ、障害のあるなしで差別が生じるのか
—— 編集部 - 先程「幼少期から障害のある方との関わりが多かった」と話されていたので気になったんですが、下錦田さんはどういったきっかけで福祉の道を選ばれたんですか?
僕が福祉の道に進んだ理由の一つには
「世間における福祉のイメージを変えたいと思ったから」
が大きくありますね。
僕には姉が1人いて、その姉には障害があるんです。
姉は特別支援学校に通ってて、僕もよくそこについて行ってたので…
—— 編集部 - だから障害のある方との関わりが多かったと!
はい。障害があるとかないとか気にしたこともないくらいに、僕にとって障害や福祉は身近で当たり前にあるものでした。
だから、自分の同級生たちが障害のある人に対して差別的な発言をしていたのを聞いた時、当たり前に関わっている人達が、世間では差別的な発言をされる対象になっていたことにかなり衝撃を受けましたね。
「同じ人間であるはずなのになぜ、障害のあるなしで差別が生じるんだろう」
そんな感情から社会と障害のつながりについて考えるようになり、大学では、福祉の知識の他に、人と地域のあり方とかを学んで今の福祉の状況を知ろうといろいろ動いてみることにしたんです。
ただ、そうして世間における福祉のイメージを把握していくと、やはり今の福祉って”他人事”になってると感じました。
—— 編集部 - うーーん…確かに。自分や身内に障害があるとか、福祉関係の仕事をしていたりしないと、福祉って“自分事”に感じにくい気もします。
そうですね。僕自身、育った環境のおかげで福祉が自分事だと早くから認識していましたが、今の社会だと「福祉は誰もが関われるもの」って認識しづらいと思います。
そういう実態を知ったことで、僕は「もっと福祉は外側から刺激を与えて、人や企業との新しいつながりを生み出していく必要がある」と考えて、ベンチャー企業に就職しようとしてました。
—— 編集部 - え??ベンチャー?下錦田さん、ベンチャー企業に就職しようしてたんですか
どうしても今の福祉のイメージを変えたかったので。ベンチャーに行って、いろんな人や企業と関係を作って、最終的には福祉業界に戻ろうと思ってましたね。
—— 編集部 - 福祉に対して並々ならぬ想いがあったんですね。そんな考えがあった中、どうしてスクエアに入職されてきたのか聞きたいです。
スクエアを知ったのは母がきっかけでした。
母が通っていた美容院に、たまたまスクエアのパンフレットが置いてあったらしくて。それを持ち帰った母に「こんなところがあるみたいだよ」と教えてもらいました。
—— 編集部 - へー、美容院にスクエアのパンフレット
美容院に福祉事業所のパンフレットを置いてもらえるって、なかなか珍しいですよね。そんなスクエアだったから僕は心惹かれたんだと思います。
「福祉」の業界に留まらず、広く地域や社会につながって活動してるスクエアのような環境だったら、自分の想いは叶えられると思ったんです。

自分が社会に影響を与えられる存在に
—— 編集部 - これまでの話を聞くところ、下錦田さんはずっと福祉に情熱を注いでいる様子が伺えましたが、福祉以外の道を考えたこととかはなかったんですか?
幼少期に関わった特別支援学校の先生に憧れて、教員になろうかなって思った時期もありました。でも、なんていうんでしょうね…自分は教員になるより福祉の道を選んだほうが、社会に影響を与えられるんじゃないかなって思ったんです。
—— 編集部 - 影響、というのは?
自分の知り合いとか、周りに「福祉の仕事をしている」って伝えると、全員「意外だ」という反応をされるんです。多分それって、福祉の仕事をしてる人のイメージ像が関係してるんじゃないかなと思っていて。
ほら、福祉の仕事をしてる人ってよく「落ち着いてる人」とか「優しい人」がしてそうって言われたりするじゃないですか。
—— 編集部 -そういったイメージはなんだかあるかもですね。でもそうではないと?
そうではないっていうより「福祉=おとなしくて、優しい人」って考えを持った方々に、意外だと思われるような自分が福祉に関わっていることに違和感をもってもらえたら、チャンスだと思って。
その違和感をきっかけに「福祉って誰にでも関われるもの」って知ってもらえるようになれたら、他人事だったことが自分事になって、今の「福祉」が少し変わってくれるかもと思ったんです。
—— 編集部 -下錦田さん自身が福祉を変えるきっかけになれるかもしれないってことですね。
少しでも自分が社会に影響を与えられていたら嬉しいですね。これからも福祉のイメージを変えられる動きをしていきたいと思いますし、もっといろんな人に福祉を気軽に活用してもらえたらって思っています。
最近の上熊本店では、大学の休学支援(休学期間中に経済的・精神的に必要な支援を行う)に力を入れ始めてて、福祉事業所についてあまり知る機会のなかった学生さんや親御さんに向けてスクエアが全面的にサポートさせていただくことも増えてきました。
地域や社会とつながる動きにもっと積極的に取り組み、福祉を自分事に感じられる社会にしていきたいと思います。

下錦田 亮 (しもにしきだ・りょう)
SOCIALSQUARE上熊本店
アシスタントマネージャー
2001年生まれ。熊本県熊本市出身。北九州の大学で地域福祉について学び、自分の生まれ育った地域で福祉に携わりながら地域貢献をしたいと思っていたところ、偶然ソーシャルデザインワークスと出会う。地域の人みんなで認め合い、助け合えるような社会を目指し入社。趣味は旅行で、その地域のご当地グルメをつまみに地酒をたしなむこと。