“影から支える仕事”を選んだ理由。広告代理店から福祉の世界へ
SOCIALSQUAREという地域に開かれた現場で、クルー(スタッフ)はどのような想いで支援に向き合っているのか。その声をお届けする「Crew’s Voice」。
今回は、熊本エリアで就労移行支援に携わる橋口佳奈さんにインタビュー。広告代理店から福祉の世界へ。異業種から飛び込んだ彼女が見つけた、支援の仕事のやりがいとこれからの目標について話を聞きました。
橋口 佳奈(はしぐち・かな)
SOCIALSQUARE 上熊本店 スクエアクルー
SOCIALSQUAREという地域に開かれた現場で、クルー(スタッフ)はどのような想いで支援に向き合っているのか。その声をお届けする「Crew’s Voice」。
今回は、熊本エリアで就労移行支援に携わる橋口佳奈さんにインタビュー。広告代理店から福祉の世界へ。異業種から飛び込んだ彼女が見つけた、支援の仕事のやりがいとこれからの目標について話を聞きました。
※掲載内容は取材当時のものです
落ち着いた雰囲気の中にある「まっすぐさ」
——編集部:まず、橋口さんの現在のお仕事について教えてください。
橋口:今はソーシャルスクエア上熊本で、主に就労移行支援の担当をしています。
障害やご病気があってスクエアを利用されている方が就職に向けて準備していく過程をサポートしています。
面談をしたり、履歴書の作成を一緒に考えたり、面接練習をしたりと就職活動のサポートはもちろんですが、その人が働き始めてから困らないように準備することも大事な仕事だと思っています。
——編集部:利用者の方一人ひとりに合わせた支援が必要そうですね。
橋口:そうですね。同じ状況の人は一人もいないので、その人に合った進め方を一緒に考えていくことが多いです。就職後の定着支援で企業とやり取りをすることもあります。
——編集部:橋口さんご自身は周りからどんな人だと言われることが多いですか?
橋口:うーん…「まっすぐ」とか「熱い」とか言われることはありますね。
——編集部:確かにお話を聞いていても、落ち着いた雰囲気の中に、芯の強さのようなものを感じます。
橋口:そうですかね(笑)。
でも、仕事では結構テキパキ動くタイプだと思います。現場ではやることも多いので、ついシャカシャカ動いてしまうというか。
でもプライベートは基本的に家にいるのが好きで、休日は映画やアニメを見ながらゆっくり過ごすことが多いですね。
仕事は結構動くんですけど、家ではのんびりしたいタイプです。
——編集部:ソーシャルスクエアのクルーには※7つの行動指針というのがありますが、クルー同士の価値観共有の場では、橋口さんの特徴として「Ownership(オーナーシップ)」や「Sincerity(シンセリティ)」が挙げられていましたね。
橋口:そうなんです。ありがたいことに、そう言ってもらえることもあって。
自分としては、特別なことをしている感覚はないんですけど、「自分ごととして考える」とか「誠実に向き合う」ということは大事にしたいと思っています。
VALUE 【7つの行動指針】
私たちの存在価値(バリュー)であり法人文化醸成にもつながっている7つの行動指針をご紹介します。
1. surprise 人生を彩る
みんなを喜ばせよう。楽しませよう。笑顔でいよう。自分も楽しみ人生を彩ろう。
2. One Team チームで乗り越える
チームの中の自分の役割・強みを考えよう。一人で抱え込まず、 困った時は誰かに話してみよう。仲間に感謝し、 チームで乗り越えよう。
3. Innovation 創意工夫
出来ない理由を挙げるのではなく、出来る方法を考えよう。自由な発想で、まず、やってみよう。ふりかえり学び続けよう。
4. Visionary 未来を創る
今も大事だけど、それがすべてじゃない。未来にも想いをはせよう。新しい世界観を生み出そう。
5. Ownership 自分事
日々、仲間と切磋琢磨し、熱い情熱と強い意志を持ち続けよう。傍観や非難ではなく、自ら提案し、行動しよう。
6. Sincerity 人として正しく生きる
礼儀を重んじ謙虚で寛容な姿勢を。私心にとらわれず、間違いは潔く謝り、事実を真摯に受け止めよう。
7. Proud 自分を生きる
自分だけの一度きりの人生、より深く自己を探究し、自分の可能性を発揮しよう。ありのままの自分を表現しよう。。
——編集部:そんな橋口さんですが、もともとは福祉とは全く違う業界で働いていたそうですね。スクエアに入職するまでの経緯を教えてください。
橋口: 新卒から8年ほど、広告代理店で働いていました。デザイン制作やクライアント対応など、広告制作の仕事です。
ただ、基本的にはパソコンに向かう時間が長い仕事で、「このままずっとこういう働き方を続けるのかな」と考えることもありました。
——編集部:そこから転機があったんですね。
橋口: コロナ禍のときですね。前職のクライアントから声をかけてもらって、療養施設のサポートに関わることになったんです。半年くらいでしたが、看護師さんや生活支援員さんと一緒に働きました。
療養されている方からの相談に対応したり、施設の受け入れ調整をしたりしていました。
利用者の方は部屋に隔離されているので、電話で相談が来ることが多いんです。
「これが欲しいです」とか
「ちょっと不安で…」とか。
できることは準備して、難しいことはきちんと説明する。 そういう関わりの中で、「ありがとう」と言ってもらえることが多くて。
——編集部:直接感謝される場面があったんですね。
橋口:そうなんです。海外の方が英語でお礼の手紙を書いてくださったこともあってそれまでの仕事ではあまり感じたことのない、「人の役に立っている実感」がありました。

「物を売る仕事」より「人を支える仕事」
——編集部:そこから福祉の仕事に興味を持つようになったんですか?
橋口:はい。療養施設での経験がきっかけでした。
その後、不動産のアルバイトをしていた時期があるんですが、そのときチラシ配りをしていた場所からスクエアの看板が見えていたんです。
「このマーク見たことあるな」と思って調べてみたら福祉の事業所でした。 ホームページを見たらデザインもすごく丁寧で、「こんな福祉の事業所があるんだ」と興味を持ったんです。
——編集部:応募することに不安はありませんでしたか?
橋口:福祉の経験はなかったので、「ダメだったらそのときはそのときかな」くらいの気持ちでしたね。
でも不動産のアルバイトをしている中で、改めて思ったことがあったんです。
——編集部:どんなことですか?
橋口:物を売る仕事が悪いわけではないんですが、自分が納得していないものを売ることに少し違和感があって。
それよりも、人の困りごとを支えたり、影から支えるような仕事の方が自分には合っているのではないかと思いました。
高校時代の後悔が、今の仕事につながっている
——編集部:「福祉」についてはどのようなイメージを持っていましたか?
橋口:高校生の頃、ボランティア活動で障害のある子どもたちと関わる機会がありました。その時に関わった子の特性を理解できずに対応したことで、結果としてグループ内で子ども同士がケンカになって泣かせてしまったことがあったんです。
自分が上手くサポートできなかったせいで、自閉症という障害がある子と健常者の子、両方に悲しい思いをさせてしまったなという後悔が自分の中に残っていて、苦い記憶と一緒に福祉のイメージがある感じでした。
——編集部:その経験が今につながっている。
橋口:そうかもしれません。あのときできなかったことを、今少しずつできるようになっているのかな、と思うことがあります。
支援は「今」だけでなく「その先」を見る仕事
——編集部:現在は就労移行支援の現場で働かれていますが、日々どんなことを大切にしていますか?
橋口:利用されている方がスクエアを卒業して社会に出たあと、困らないように関わることですね。
——編集部:その人の将来まで考えて関わるということですね。
橋口:そうですね。今この場だけを見るのではなく、その先を見据えて関わることが大事だと思っています。
ときには厳しい声かけが必要になることもあります。優しくした方がいいのか、厳しく伝えるべきなのか悩むこともあります。
でも、その人の将来を考えたときに必要なことは、きちんと伝えていきたいと思っています。
——編集部:支援の仕事は広告の仕事とは違って一人で完結するものではありませんよね。
橋口:そうですね。クルー同士で相談したり、関係機関と連携したりしながら進めていく仕事だと思います。
利用者さんが就職してスクエアを卒業していくとき、「ここでの時間が役に立った」と感じてもらえたら嬉しいですね。
支援者として成長していきたい
——編集部:最後に、これからの目標を教えてください。
橋口:入社1年目は、とにかく福祉を知ることとスクエアに慣れることに精一杯でした。
2年目に入ってからずっと思っているのは、「支援者としての質をもっと高めたい」ということです。
スクエアには福祉の資格を持っているクルーや、経験豊富な方が多くいます。関係機関の方と話す中でも、自分の知識不足を感じることがあります。
高校や大学で福祉を学んできた方たちは、この分野をずっと極めてきているわけですよね。
そういう人たちと一緒に働く中で、「なんとなく福祉に入ってきた自分は、このままではいけないな」と思うこともあります。
——編集部:だからこそ学び続けたいと。
橋口:はい。研修を受けたり、先輩に相談したりしながら、少しずつ知識と経験を積んでいきたいと思っています。
すぐに追いつけるものではないと思いますが、誠実に向き合い続けたいですね。
まだまだ勉強中ですが、「誠実に向き合うこと」と「自分ごととして考えること」は大事にしていきたいです。 それを続けていけば、少しずつでも支援者として成長できるんじゃないかなと思っています。

橋口佳奈(はしぐち・かな)
SOCIALSQUARE 上熊本店
スクエアクルー
1995年生まれ。宮崎県出身。熊本デザイン専門学校を卒業後、広告代理店に8年勤務。
パソコンと一日中見つめ合う毎日から人と直接関わりたいと思い転職を決意。
ボランティアや療養施設の経験から、福祉の世界に興味を持ち、未経験でもOKということで応募し入社。
現在は法人の夢や支援員の福祉に対する思いを聞き、まずは上熊本の利用者さんと
一緒に働く支援員のためにできることを頑張りたいと思っています。
地味な頑張りかもしれませんが、やがてはその積み重ねが社会への貢献に繋がると信じ、日々努力します。