誰かの成長が、自分の達成感につながる 

いわき市内の就労移行支援事業所から移籍してきた根本加奈子へのインタビューを紹介します。長く就労移行支援のキャリアのある根本。なぜソーシャルデザインワークスに移ってきたのか。なぜ社会との接点を作ることが福祉に求められるのか。豊富なキャリアから語られる理想の福祉とは。

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根本加奈子

ソーシャルスクエア いわき店/スポーツ ソーシャルコーディネーター

ソーシャルスクエアという地域に開かれた現場で、障害福祉に関わるスタッフは、どのような問題意識を持ち、どのような理想を掲げて支援を行っているのか。クルーにインタビューをしてその声を紹介していくのが「Crew’s Voice」のコーナーです。
今回は、同じいわき市内の就労移行支援事業所から移籍してきた根本加奈子へのインタビューを紹介します。長く就労移行支援のキャリアのある根本。なぜソーシャルデザインワークスに移ってきたのか。なぜ社会との接点を作ることが福祉に求められるのか。豊富なキャリアから語られる理想の福祉とは。

−利用者の支援も、社会への働きかけも

ソーシャルデザインワークスに来たのは、自分が成長できる可能性を感じたからです。もともと対人関係が上手じゃなかったり、外への発信が苦手だなと思うところがあって。スクエアでは、社会と施設との糸を結ぶような活動をしていたので、そういう社会との接点作りが自分にいい影響を与えてくれると思っていたんです。

外の法人から来て強く思うのは、ソーシャルデザインワークスは業務をめちゃくちゃしっかりやるということですね。もちろん、外の法人が適当かというわけではなく、しっかりしていると思うんですが、そのしっかり、きっちりのレベルが違うというか。自由な社風だし、外への発信やイベントにも力を入れているけれど、一人の人に対する支援の厚みが本当にすごいなと思います。私も、支援計画を作るときには、その人がどんな支援を求めているのか、以前より深く考えるようになりました。

ここに来る前は、知的障害のある人への支援をメインにした法人に所属していました。知的の方に対する支援は、どうしても支援者側で組み立てることが多いんです。精神や発達の場合は、その支援プランを本人が望むかどうか考えなければいけませんし、本人の人生設計などを汲み取った上でプランを練っていく必要があります。その人に徹底して向き合う、ということが以前よりも増えた気がします。

正直、普段の業務でいっぱいいっぱいなところもあるんですけど、外に対してもしっかり活動していくことも大事だなと思っていて。例えば、今度「スクエアフェス」を予定していますが、たくさんの人が来てくれるイベントで、障害のある人もない人も、あまり深く考えずに接してしまうような体験の機会は大事ですよね。私も過去にダンスやっていて、インストラクターの経験もあるので、少しずつ、体を動かすカリキュラムなんかもやってみたいと思っています。

−誰かの成長が、自分の達成感につながる

ソーシャルデザインワークスに入ったのは2018年の2月からですが、福祉の世界に入ったのは7年前。それまでは接客ばかりでしたが、もともと福祉に惹かれるものを感じていたんです。ツタヤで働いていたことがあって、そこに障害のある方が通って来ていました。B型の支援事業所に通っている方で重めの自閉がある方でした。
結局ツタヤには10年間勤めることになりましたが、その彼の成長をずっと見ていたんです。はじめは支援者の人と来ていたのが、次第に一人で来るようになって、最終的には自分で買い物をして、自分で店を出て行くことができるようになって。ああ、こういう人の成長を感じられる仕事っていいなって思っていました。それで30歳になる前に、やっぱり自分の興味のある福祉の世界に行こうと思って、こことは別の就労移行の支援事業所に入ったんです。

就労移行の醍醐味は、支援のプランがうまくハマった時の成長が目に見えて分かることです。もちろん、ハマらない時もありますが、そういうときにはうまくいかない原因を徹底して洗い出して新しいプランを出します。それでうまく乗り越えられた時は、ご本人だけでなく私たちも大きな達成感を味わうことができます。

前職で主に担当していたのが、知的障害のある方の就労支援でした。知的障害のある方たちは体は十分に動かせることが多いので、ハマった時は仕事は続けられるし、その持ち前の真面目さが一気に強みになるんです。すでに障害者雇用の進んでいる会社は、知的障害のある方を採用してもトラブルは起きないし、しっかり働いてくれることを理解してくれているので採用がますます進んでいきます。この子ならあそこ、この子なら別のあの会社というように、いろいろな企業を提案して就職に結びつけることができました。

ソーシャルスクエアの場合は精神、発達の障害のある方が多くいらっしゃるのでこれまではとは少し勝手が違います。週に1回か2回くらいしか来られないという、体調が安定していない方にも対応しなければいけません。与えられた2年間で自立からどう就労まで結ぶのか。就労移行支援ににつなげた後も、どう就職し、定着してもらうのか。考えることはとても多いです。

もちろん、ご本人だけの努力だけではなく受け入れる側も理解も求められます。例えば新型うつ。普通の生活は不自由なくできるのに、心と体がうまく繋がらず、仕事にだけ行けないという方も多いですよね。そういう方は、会社の人から「なんで普通に生活できるのに仕事だけできないんだ、怠けてるだけじゃないか」というような目で見られてしまいがち。

だから、ご本人に対する支援も、企業側への働きかけも両方大事。でも、大変だからこそ、就職が決まったり、定着した時の達成感は大きいですよね。相手の成長も嬉しいし、自分の達成感も嬉しい。そういうときには、ああ、こういう喜びは福祉の仕事ならではだなって思います。

特に、困難な障害のある方の就職が決まった時の喜びはひとしおです。以前担当した方の中に、強迫障害のある方がいらっしゃって。他の人が触れたものに触れることができない、というところからのスタートでした。そもそもバスの椅子に座れない。扉も開けられないわけです。施設に来るだけで一苦労ですよね。その方の場合は、震災がすごくプラスに働いて。お風呂に入ろうにも物理的に入れない。そんな経験をするうちに慣れてきて、少しずつ触れられるものが増えて、時間はかかりましたがなんとか就職も決まりました。

その方の就職が決まったときには泣きましたね。やっぱり、その人と過ごす時間が長いからだと思います。自立、就労移行、就職と定着で、都合9年間関わることになります。その方の人生に寄り添いながら、相手の成長と自分の成長を重ね合わせることができる。これは就労移行の醍醐味ですよね。

ー依存先を増やす

これまで福祉の仕事に関わって来て改めて強く思うのは、就労移行支援っていう仕事って、架け橋を作る仕事なんだってことです。スクエアと企業をつないだり、その人と支援組織をつないだり。そうやって架け橋を作って、依存先を増やすってことなんだと思うんです。100ある負担を、5ずついろんなところでシェアしていくような感覚。一箇所に大きな負担を押し付けるんじゃなく、いろいろなところで少しずつシェアしていくからこそ、支えられるんだと思います。

その意味でも、障害福祉はその人に対する支援だけではなく、社会との接点を増やしながら依存先をつないでいくことが求められると思います。もちろん、架け橋をつなぐには、強い橋にするためにご本人の特性や、これからどういう人生を歩んでいきたいか、その人に徹底して向き合う必要があります。だからまずはその人に、利用者さんに向き合うことが求められるんですが、その次には、やっぱり社会との接点を作ることが大事。

個人に対する支援と、社会へのアプローチは、両方やらないといけないし、その両方をやるのが、つまり「ソーシャルデザイン」なんじゃないかと思っています。

PROFILE
根本加奈子
根本加奈子

根本 加奈子(ねもと・かなこ)
SOCIALSQUARE 上荒川店 サービス管理責任者
スクエアクルー/ダンスインストラクター

1982年いわき市生まれ。接客業に従事する中で福祉に興味を持ち、29歳の時に社会福祉法人に入社。就労移行支援の支援員として勤務。またプライベートでは趣味のダンスを活かし、インストラクターを経験。
活動の幅を広げたいとの想いから、2018年2月よりソーシャルデザインワークスに入社。

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