自分を大事にできる仕事
今回は2021年9月入社、ソーシャルスクエア水前寺店で就労移行支援の支援員として働く山口麗子をご紹介。大学卒業後、民間企業に入社。在職中、JICA海外協力隊(職種:環境教育)としてインドネシアに2年間赴任。帰国後に復職し、人事・総務職に数年携わる。コロナ禍の中、社会で本当に必要とされている仕事をしたいという思いからソーシャルデザインワークスに入職をする。様々な経験を積み重ねた彼女の仕事観とは。
山口 麗子(やまぐち・れいこ)
SOCIALSQUARE 水前寺店 スクエアクルー/ファイナンシャルプランナー
ソーシャルスクエアという地域に開かれた現場で障害福祉に関わるクルーは、どのような問題意識を持ち、どのような理想を掲げて支援を行っているのか。その声をインタビュー記事で紹介していく「Crew’s Voice」のコーナーです。
今回は2021年9月入社、ソーシャルスクエア水前寺店で就労移行支援の支援員として働く山口麗子をご紹介。大学卒業後、民間企業に入社。在職中、JICA海外協力隊(職種:環境教育)としてインドネシアに2年間赴任。帰国後に復職し、人事・総務職に数年携わる。コロナ禍の中、社会で本当に必要とされている仕事をしたいという思いからソーシャルデザインワークスに入職をする。様々な経験を積み重ねた彼女の仕事観とは。
※掲載内容は取材当時のものです
その人に合った対話とアプローチ
私はソーシャルスクエア水前寺店の就労移行支援の支援員として2021年の9月から働いています。就労移行支援は一般企業への就職・復職を目指す方が多くいらっしゃいますので、就労移行の支援クルーは、ご利用メンバーさんが就労に対して何を感じ、考えているのか、ご本人の考えを引き出す力が重要となってきますね。
就労移行支援は基本的に2年間で就職を目指すサービスなので、その期間内で就職、または本人の希望通りの状態になるために、定期的な面談を実施して今後の行動について話し合いをします。やはり、別の人間同士なので自分とご利用メンバーさんとの価値観の違い、イメージのズレというものは発生しますので、そういったズレの確認のためにも面談は非常に大事な時間だと思っています。
就労移行支援のご利用メンバーさんとの話し合いの中では、就職への意欲が湧かず、まずなにをしたらいいかわからないと悩む方もいらっしゃれば、反対に就職への気が急いてしまって、ご本人のキャパシティーを超えた就職までの計画を提案される方もいらっしゃいます。ご利用メンバーさんの意見を尊重していきたい気持ちはありますが、私たち支援クルーは、ご利用メンバーさんが希望する業種や勤務方法で就職した場合、その後もしっかりと働き続けることができるか先を見据えて支援する必要があります。
ご本人にとって「できる」と思って希望していることが、支援視点から現実をみると「今はまだ困難」と判断することもあり、話し合いで希望と現実のギャップがみられた場合は、ご本人の状況を認識していただく為、その現実について伝えていきます。ご本人の今後の意欲に関わることでもあるので、伝え方は慎重になりますね…。
こういった事例に対して入社したばかりの時は、どのようにしたら本人を否定しない形で、その状況を理解してもらえるのだろうとめちゃくちゃ悩みました。というか今でも悩んでます。できる限りご利用メンバーさんが今後も働くことに対して意欲が損なわれないように、アプローチの仕方も個人に合わせて考えたりしてて…自分の説明だけでは難しそうだったら、ご本人の担当主治医に説明していただいたり、ご家族からの協力を得たり、ご本人の適性を知ってもらうために実習にいってもらったり。当時はわからないことだらけでしたので、支援について管理者やサービス管理責任者はもちろん、ベテランクルーや、理事の今泉さんにも相談してましたね。ソーシャルスクエアが拠点も上下関係も気にせず相談できる組織で良かったです。
支援で大変に思うこと、悩むこともありますが、ご利用メンバーさんが成長していく様子や、ご利用メンバーさんが就職し、継続して働いてる姿をみるとジーンときて…就労移行の支援をしてきてよかったなと思えるんです。
私はソーシャルスクエアに就くまで障がいのある方と関わる機会は少なく、あるとしても身体障がいの方ぐらいで、精神や発達障がいの方とはほとんど接して来ませんでした。いや…もしかしたらいらっしゃったのかもしれませんね。それまで私が思う「障がい」は、身体障がいとか、重度の障がいのある…本当に介護とかが必要な方のイメージしかなくて。この仕事に就いてから「あの人はもしかしたら何かの障がいがある(あった)のかもしれない」って思考になれたり、日常に様々な障がいが自分の視界に入ってくるようになったんです。ご利用メンバーさんと関わってきたことで、目に見えない障がいの支援の必要性に気づけました。
自分を大事にするために
「人のために何かをしたい」と思い始めたきっかけは、小学生の頃に抱いた正義感が根源としてあると思います。私は昔「水俣病」という大きな公害が発生した地域付近に住んでいたんです。小学生の時には実際に水俣病の患者さんの話を聞いたり、環境センターへ行く機会もよくあったのですが、「これは、なんとかしないと!」って子どもながらに環境問題に対する危機感を抱いたんです。
そこからゴミの問題や資源のリサイクルについての知識を得ては「環境問題」に対して目を向けて、ボランティア活動にも参加していきました。いくつかのボランティア活動に参加していくうちに、老若男女関係なく様々な世代の人たちと楽しみつつも、誰かのためになる「社会貢献活動」が好きになっていきました。その興味は大学までも継続されて、ゼミやサークルでも環境について学べるところに入ったり、ボランティア活動にも積極的に参加していましたね。
子どもの頃からずっと「環境問題」や「社会貢献」に関心があって、大学卒業後はNPOへの就職を考えていたんですが、まずは一般企業で社会経験とスキルを身に着けてからNPOで働こうと思い、一般企業へ就職しました。それでも、社会貢献に向けた活動をする機会は窺っていて、会社でJICA海外協力隊としてインドネシアに行く企画の話があり参加希望をだしました。
インドネシアへは2年間、環境教育という分野で現地の環境局に配属されて、小学校から高校までの子どもたちに環境についての授業をして、インドネシアで少しでも自分みたいに環境に対して意識してくれる子がいてくれるといいなと思って環境問題に対しての啓発活動をしていましたね。
協力隊の任期を終え復職してからは、人事の仕事をしたり、お金について学びファイナンシャルプランナーの資格をとったりしていましたね。それから、自分にとって丁度良い節目だったこともあり、やっと自分がやりたかったNPOの求人を探していたとき
「働いている職員のことを大事にします」
っていうキャッチコピーがふと目に入ったんです。それがソーシャルスクエアでした。
学生のときからそれまで、自分はずっと何かに手を付けていないと落ち着かないというか、ずっと走り続けていた感じだったんです。だからこそ、ただ、サービスを提供する人のためだけにとかじゃなくて、働いている職員も大事にする、「自分を大事にする」という視点は大事だよなとハッとさせられて。今まで福祉の分野に興味を抱いたことはなかったんですけど、そういう風に考えてくれる法人で働けたらと思って応募しました。
人の喜びが自分の活力
ソーシャルスクエアで働き始めて2年経過していることに結構驚いていて、あんまり実感がないですね。水前寺クルーのなかでもいつの間にか古株の立場になっているので、新しく入ったクルーにとっても働きやすい現場になるよう、フォローに入りつつ一緒に成長できればいいなと思っています。
また、ソーシャルスクエア水前寺店では、今後就労定着支援(障がいのある方が就労先の労働環境や業務内容に順応し、長く働き続けられるように支援を受けるサービス)も開始されます。就職後に生じた悩みやトラブルに対して、私たちがご利用メンバーさんと企業を仲立ちをすることで、相談や助言など更に手厚い支援が可能になるため、今よりもっとご利用メンバーさんの幸せの追求部分は深まると思っています。就労定着支援については私自身これから勉強していくべきところですね。
今までのCREW's VOICEを見た限り、皆さん今後の展望や挑戦など素敵なお話をされているんですけど、私個人が「今後こうしていきたい!」っていう高い野望はとくに持っていなくて…
ただ、法人の理念に沿った働き方と支援を続けたいと思っています。
【私たちの理念】
すべての仲間の幸せを追求すると共に諦めのない社会を創る
私たちソーシャルデザインワークスは、仲間同士が感謝しあい、お互いの幸せを求め協力しあう風土と、多様な考え、様々な働き方を尊重しあい、応援しあう文化を醸成していくチームであり続けると共に、20年後の未来・社会に向けて、人・街・文化に対する様々な社会貢献活動をしていきます。
私たちが全国の拠点で諦めずに行動していくことが多くの人たちの勇気となり、それが多くの人たちの人生の豊かさになるような諦めのない社会を創っていきます。障害の有無、国籍、年齢、性別、文化など異なる人が存在する社会を楽しむための自然な機会を「ごちゃまぜ®」と題し、自分たちがやりたいと思え、みんなで楽しめるまちづくり企画を地域の中で運営しています。その地域にとって大事なことをその地域の人たちと共創しています。
自分自身がソーシャルスクエアに応募したきっかけってこの考えがあるからこそですので、自分自身の幸せを維持しつつ、ご利用メンバーさんの幸せについて考えていけたらと思います。
前職で働いていたときはどこか焦燥感に追われてて、ソーシャルスクエアで働き始めたことで、自分を大切にできるようになって気持ちが楽になったというか…「やらない勇気」みたいなものができてきましたね。いくら人に喜んでもらえることが嬉しいからって、働いてばかりではいいことないので「仕事!仕事!」ってならないように、早く寝て、運動をしっかりして、健康的な食事をする。そういった基本的な生活を続けられるのが自分の幸せの1つですかね??運動が中々できないんですけど(笑)
私は「人のために何かをしていく」仕事が性に合っているようで、「福祉」はダイレクトに人のために動いていける仕事なので、やりがいをもって働けています。
私って、子どものころから何かと自信がなくて「私なんかには何にもできない」「私は何も持ってない」って自己肯定感が低くて。でも、その分他の人からの声だと結構響きやすくて、ボランティア活動で人から感謝されたり、仕事をしていた時にお客さんに喜ばれたりとかすることで「あ、私できることあるんだ」って気持ちになって力が湧いてくるんです。
ご利用メンバーさんや、一緒に働いているスクエアのクルーにも喜んでもらえることが自分の活力になるので、自分自身を大事にしながら今できることを精一杯していきたいですね。
山口 麗子(やまぐち・れいこ)
SOCIALSQUARE 水前寺店
スクエアクルー
ファイナンシャルプランナー
鹿児島県出身。大学卒業後、民間企業に入社。教習指導員として自動車教習所での指導や営業経験を経たのち、JICA青年海外協力隊(職種:環境教育)としてインドネシアに2年間赴任する。
帰国後に復職、人事・総務職に数年携わる。コロナ禍の中、社会で本当に必要とされている仕事をしたいという思いからソーシャルデザインワークスに入職。環境と身体に優しい生活が好き。