障がいをオープンにして働くべきか

障がいを持つ方が働くとき、障がいをオープンにすべきかクローズにすべきなのか。データなどを見ながら、そのメリットとデメリットを考えます。

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ソーシャルスクエア内郷では定期的に「働き方について就活講座」を提供しています。このカリキュラムでは障がいをオープンにして働くことと、クローズにして働くことの違いや障がい者雇用の実態などを知り自身にあった働き方について考えるカリキュラムです。
障がいのある方が働きたいと思ったときに、大きく2つの軸を考えます。1つ目は「障がい者求人と一般求人のどちらの求人で働くか」という軸。2つ目は障がいをオープン(開示)にするか、クローズ(開示しない)するかです。それぞれにメリット、デメリットがあり、一概に「これがいい!」という選択肢はありません。その人の就職に対する考え方や特性などを考えた上で、一緒になって選択するプロセスが重要です。
求人と開示について組み合わせると、以下のような3つの働き方を考えることができます。
1) 障がい者求人×障がいをオープン(以下、障がいオープン)
2) 一般求人×障がいをオープン(以下、一般オープン)
3) 一般求人×障がいをクローズ(以下、一般クローズ)
ソーシャルスクエアに通われている方の大半の方は「オープン」での就労を希望されています。なぜかというと、職場への定着率が関係しています。障害者職業センターが発表している12ヶ月後の定着率を見てみると、違いが歴然です。

障がいオープン(定着支援あり) ⇒ 70%
一 般オープン(定着支援あり) ⇒ 64%
障がいオープン(定着支援なし) ⇒ 51%
一 般オープン(定着支援なし) ⇒ 28%
一 般クローズ(定着支援なし) ⇒ 23%
※(研究開発レポート)障害者職業総合センター 研究部門より引用

このように、障害をオープンにして障がい者求人に応募し、その上で定着支援を行っていくと、その方が職場に定着していく割合が高くなります。一般求人に対しても、やはり障害をオープンにし、定着支援を行うと、定着率が高くなります。これに対して、定着支援を行わないと、やはり定着率は下がります。「クローズで定着支援もなし」の場合は、ほとんどの方が辞めてしまうわけですね。いかにこの定着支援が必要かが、このデータから読み取れるかと思います。
定着支援とは、事業所での面談と雇用先の企業を含めた面談を定期的に行い、ソーシャルスクエアなどの関係機関が間に入り調整を行うことで、働いている本人と企業の不安を解消すること。クローズで就職を行うと必然的に企業との間に入り調整を行うことができないため(障がいがあることを秘密にしているから)、定着率も下がってしまうというわけです。
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—クローズのメリットはあるのか

しかし、一般求人での就労やクローズでの就労のメリットを考えることも必要です。
ここは個人的は意見ですが、QOL(生活の質)を向上させるには、選択肢の幅や深さを広げ、自己選択、自己決定をしていくことが重要だと考えています。例えば外食をする際に、近所の中華料理屋しか知らずにそこへ行くのと、近所の洋食屋やハンバーガーショップ、少し離れたところにある和食屋やイタリアンレストランがあることを知っていて、その中から近所の中華料理屋を選択し決定したのでは意味合いが大きく変わってくることと同じです。
そこで、ソーシャルスクエア内郷では、グループワークを通してオープンとクローズ、それぞれメリットを出すことで、自分の働き方、そして選択肢を広げてもらいたいと考えています。その中で出てきた意見を抜粋して、紹介したいと思います。
【オープンのメリット】
・業務、時間を配慮してもらえる
・通院、服薬しやすい
・定着支援を受けながら働ける
・自分の状態について上司に相談しやすい
・ストレスが少ない
・ゆとりを持って仕事が出来る
・気を使ってくれる
・休憩を取りやすい
・障害者年金と給料の両立がしやすい
【クローズのメリット】
・求人数が多い
・給料が良い
・変な気を使われない
・キャリアアップが見込める
・忍耐力がつく
・プライベートが誘われやすい
・強気で勝負が出来る
・対等になり、仲間意識も芽生える
・後輩に指導しやすい
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出てきた意見を見てみると、オープンでは自分の状態を考慮して働けることに大きなメリットを感じているようでした。逆にクローズでは、勤務条件の豊富さと障がいのない方と同じ土俵で実力が正当に評価されやすいという点にメリットを感じているようです。
実際の働き方はケースバイケースで、障がいオープンと一般オープン、一般オープンと一般クローズのマッシュアップなども考えられます。働き方を考えるうえで、求職者、企業、支援員が様々な知識を学び、また経験を積み、枠に捉われず、その人が働きやすく長所が活かせるような環境を模索していくことが、多様な働き方へ繋がり、障がい者雇用を前進させる一歩になるはずです。
 

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