社会の中に引かれた線を意識する

学生時代から福祉を学び、「境界線」をテーマに写真作品の制作にも当たってきた奥田峻史のクルーズボイス。なぜ彼は「境界線」を追うのか。

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奥田 峻史

SOCIALSQUARE|いわき店 クルー

ソーシャルスクエアという地域に開かれた現場で、障害福祉に関わるスタッフは、どのような問題意識を持ち、あるいはどのような理想を掲げて支援を行っているのか。クルーにインタビューをしてその声を紹介していくのが「Crew’s Voice」のコーナーです。
今回は、この春からソーシャルスクエアいわき店のクルーとしてキャリアをスタートさせたフレッシュマン、奥田峻史の声を紹介します。学生時代に福祉を学び、「境界線」をテーマに作品づくりもしてきたという奥田。仕事に対する思いを聞きました。

-アクティブに働ける現場

ソーシャルスクエアいわきでは、主に就労移行支援の仕事をしています。障害を持った人たちが仕事を得るためのカリキュラムを実施したり、就職のためのさまざまなサポートをしています。就職した後もサポートは続きます。入社したあと、会社や団体に馴染めないとか、意欲がわかない、あるいは、受け入れた企業の方もどう受け入れていいかわからない、ということが起きるからです。就職したから支援は終了、とはいかないのが、この仕事です。昨年の10月からインターンとしてこの環境に入って、この4月から正式採用さればかりなので偉そうなことは言えませんが・・・。
この数カ月で得られた実感として強く感じるのは、障害を持った人たちの訓練よりも、むしろ障害のある方を受け入れる企業の方への働きかけの方に力を入れことに注力したい、ということです。就労移行支援というと、あたかも、障害のある人に対して訓練するというイメージを持たれがちですが、むしろ受け入れる社会の側の障害の方が大きいと感じています。弱者に苦労を強いる社会は健全とは言えません。みんなが少しずつ配慮をシェアしていく。そういう社会になればと思っています。
また、障害のある方も、働く意欲があるかどうか以前に、生活のリズムが整っていなかったり、生活そのものがうまくいかないという状態にあり、働く意欲が湧く前の状態で足踏みしている方が多くいらっしゃいます。僕は大学で社会福祉を学んできたので、企業や社会への働きかけに加えて、障害を持つ人たちの生活支援の方も頑張っていきたいです。
やりたいことばかりですが、自由な働き方が許容される職場なので、とてもやりがいがありますし、新人にもどんどんチャンスをくれるので、いろいろなことにチャレンジしていきたいです。もともと、ケースワーカー的な働き方よりも、アクティビスト的な働き方に関心がありました。「ごちゃまぜ」のイベントにも積極的に関わりながら、社会の方がマイノリティに少しずつ歩調を合わせられるような社会になるよう、ごちゃまぜの社会づくりに取り組んでいきたいです。
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-社会の中に引かれた線を意識する

高校、大学と野球をやってきたんですが、実は、投げ方がぎこちなくてチームの仲間からバカにされたりした経験があります。辛い思いもしました。でも、僕はたまたま野球の世界で差別されただけなので、そこを飛び出せば差別はなくなります。ところが障害福祉の世界は、日常の中で差別の構造が生まれてしまうので、どこにもいけなくなってしまう。だから、障害のある方ではなく、変わるべきは社会の方だと強く思うようになりました。それで福祉の世界に興味が湧いたんです。
いざこうして働き始めてみて、社会を変えるには、個人ではなく組織、組織よりも地域が少しずつ変わる意識を持つことが大事だと感じています。つまり、個人から企業、企業から地域というように、人の繋がりで社会を変えていくということです。働くことで仲間が増え、仲間が増えることで地域につながり、社会がじわじわと変化していく。だから、そのためにはまずは働く、働くことで仲間とビジョンを共有することが重要だと思っています。
働くことの意義。これは、障害の有無は関係ありません。障害のある方も、働くことを通じて、自分を認め、他者を認め、地域と繋がれるはずです。そして、みんながそれぞれ「生きにくさ」や「働きにくさ」を認識できるようになる。一部の人に苦労を背負わせるのではなく、社会全体でシェアしていきたい。みんなでシェアすれば、一人ひとりの配慮は小さくなるはずですよね。
大学では野球以外に「境界線」をテーマに写真も撮り続けてきました(写真・上)。社会のさまざまなところに見え隠れする線を、ポジティブに、時にはネガティブに浮かび上がらせて、その線について考えてもらいたいと思ってきたんです。線を強く意識して超えるべきなのか、曖昧にすべきか、無くしてしまった方がいいのか。写真を通じて、社会に存在するボーダーを意識しながら、いろいろなメッセージを届けていきたいと思います。
profile 奥田 峻史 Michifumi OKUTA
1994年生まれ。秋田県仙北市出身。社会福祉士。東日本国際大学で社会福祉を学んだ後、ソーシャルデザインワークスへ。学生時代は硬式野球部に所属。2年生の秋に野球部を辞め、趣味だった写真を活かし「境界線」というテーマで写真展を開催。その他の活動として、いわきユニバーサルマルシェ(被災障がい者自立支援促進事業)で取材・情報発信活動に携わる。人工妊娠中絶や障害者差別の問題について関心を持っている。

PROFILE
奥田峻史
奥田峻史

奥田 峻史(おくた・みちふみ)
SOCIALSQUARE 秋田山王店
スクエアマネージャー
社会福祉士/フォトグラファー

1994年生まれ。秋田県仙北市出身。東日本国際大学で社会福祉学を学んだ後、2017年新卒入社でソーシャルデザインワークスへ。支援業務の他、広報写真の撮影も行っている。フォトアート集団、PHOTO ART HEROESのメンバーとしても活動中。“健常者と障害者”“支援者と利用者”など、様々な“境界線”について考えた作品制作を得意とする。

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