クルー対談 vol.3 北山×奥田|すべての人に「選択肢」を
SOCIALSQUARE 秋田山王店クルー対談 北山 剛(きたやま・つよし)× 奥田 峻史 (おくた・みちふみ) ソーシャルスクエアという地域に開かれた現場で障害福祉に関わるクルーは、どのような問題意識を持ち、どのような理想を掲げて支援を行っているのか。その声をインタビュー記事で紹介していく「Crew’s Voice」のコーナーです。
SOCIALSQUARE 秋田山王店クルー対談
北山 剛(きたやま・つよし)× 奥田 峻史 (おくた・みちふみ)
ソーシャルスクエアという地域に開かれた現場で障害福祉に関わるクルーは、どのような問題意識を持ち、どのような理想を掲げて支援を行っているのか。その声をインタビュー記事で紹介していく「Crew’s Voice」のコーナーです。
秋田山王店はソーシャルスクエアの7拠点目、2023年4月にOPENしました。今回はソーシャルスクエアの運営法人ソーシャルデザインワークスの代表・北山 剛(きたやま・つよし)とソーシャルスクエア秋田山王店のマネージャー・奥田 峻史(おくた・みちふみ)に対談インタビュー。ソーシャルスクエアでは初の北東北出店。なぜこの地に出店したのか。どのような想いで地域に根差した福祉事業所として日々支援を行っているのか。今とこれからのソーシャルスクエア秋田山王店の取り組みについて取材をしました。
奥田峻史(写真・左)・北山 剛(写真・右)
秋田山王店 出店のきっかけ
奥田峻史(以下・奥田):
秋田山王店の出店には自分が関係しています。当時僕はソーシャルスクエア上荒川店で働いてたのですが、2022年の夏頃、遠方に住んでいた兄が突然他界してしまいました。2016年にも父が亡くなっていたことから、地元の秋田で母が一人になることもあり、北山さんにソーシャルスクエアを辞めて秋田に帰ると話をしました。
そこで北山さんから、秋田で新たにソーシャルスクエアを出店して、そこで働くというのはどうかと提案をいただいたんです。
北山剛(以下・北山):
僕たちの理念は「すべての仲間の幸せを追求すると共に諦めのない社会を創る」なので、奥田くんにも「辞める」以外の選択肢があっていいと思って。どういった地域にソーシャルスクエアが求められているか、事業が成り立つか、普段から調べていたからこそできた提案だったね。
奥田:
秋田店舗の提案をいただいてからは、まず秋田の福祉の現状や地域のニーズを調査をしました。北山さんと現地の秋田にいって障害福祉関連の方から福祉事情をお聞きしたり…、地元の秋田といっても自分は10年以上も離れていたため、秋田県の障害福祉の現状については全然知らなくて(笑)
北山:
ただ出店するだけでは意味がないんだよね。重要なのは、地域の方々にとってしっかりとプラスになることがあるのかな?というところなので。秋田の方々が期待していることに対して「自分たちはどれだけ応えられるか」調査して、検討する必要がありました。
実際調査にいってみると、現地の障害福祉関係の方々が思った以上にウェルカム状態だったこともありがたかったし、これまでのソーシャルスクエアの取り組みについて話していくと「秋田でもできるならやってほしい」っていっていただけたんです。そのあたりで『秋田県での出店、いけそうだぞ??』って手ごたえ感じちゃった。
奥田:
そうですね。秋田ではA型、B型就労事業所(※一般就労が困難な障害や難病のある方が、一定の支援がある職場で働く福祉サービス)などはあったけれど、
ソーシャルスクエアのように、一般企業で働き、定着することを目指す就労移行支援や、生活力を身につけることを目指す生活訓練(自立訓練)をしている施設は、本当に少なくて…人口に対して社会資源が少ない印象がありました。
北山:
それを「少ない」とも感じてない福祉の世界があったね。だからこそ、ソーシャルスクエアが秋田の方々に諦めのない社会について伝えられることも、できることがたくさんありそうだ!って思えた。
「障害があると一般企業で働けない」「A型やB型でいいんじゃないの?」という考えではなくてその人にとって知らない、イメージにもなかった、そんな「選択肢」を提供できるソーシャルスクエアが秋田で求められているんじゃないかと感じたんだ。
奥田:
秋田山王店のオープニングイベントでは、たくさんの地域の皆さんにご参加いただきました。メディア露出の効果もあり、そこから続々とお問合せいただいたので、ソーシャルスクエアのような場所は潜在的に求められていたんだと思います。
北山:
OPEN前から地域とのつながりも築けていたし、初回から多数の方にご利用をしていただいて、いいスタートがきれたよね。
全ての人に「選択肢を」
北山:
僕が知っている初回の秋田山王店の利用者メンバーさんは「若い方が多い」イメージだったけど、いまはどう?
奥田:
年齢層は様々ですが、確かに若めの利用者メンバーさんが多いですね。皆さん創作活動が好きだったり、特にコミュニケーションがお好きな方が多い印象があります。カリキュラムの休憩時間に雑談していたり、今日だって、スクエアの帰りに利用者メンバーさん達でカラオケに行くっていってました(笑)
北山:
仲いいなあ〜、学校の放課後みたい。確かに自然にコミュニティができてる感じだった。なんかそういったプログラムがあるの??
奥田:
プログラムに関しては、グループワークや雑談ありきのものなどコミュニケーションがとりやすいプログラムを意識しています。ここを学校みたいに捉えてくれてる方もいらっしゃると思います。季節ごとにイベント的なカリキュラムもしていて、今年の夏は流しそうめんをしていたんですけど、その時利用者メンバーさんの発言として印象的だったのが「青春を取り戻している」って、当時は経験できてなかったことをソーシャルスクエアのみんなでワイワイできたって話されていたんです。
北山:
そっか。利用者メンバーさんのリアルな声があるのはうれしいな。秋田山王店は利用者メンバーさんが制作したアート作品の展示とか、アーティストの人とのコラボなんかもしているし。そこにいるだけで色んな経験ができる感じがあっていいよね。
奥田:
秋田山王店は比較的スペースが広いので、コミュニケーションを楽しみたい人はここのスペース。ちょっとゆっくりしたい人は小上がりのスペースで横になるなど、ご自身で活動場所を選択できる環境です。これは、地域の中で「選択肢」を増やしていけるよう、まずはスクエアの中から自分で選択できるようになってほしいという思いから、このようなつくりになってます。
北山:
……『地域の中でも「選択肢」を増やしたい』って別の記事とかでもいってるよね??
奥田:
多分いってますね。メディアか新聞かで必ずいってます(笑)
自分が知っている10年前の地元秋田は「選択肢」があまりに少ない印象があって。
北山:
だよね。なんか聞き覚えがあると思った(笑)
まあ、それくらい「選択肢」の重要性があると僕も思う。いざというとき「選択肢」がたくさんあるのとないのとでは豊かさが変わってくるし。この考えがあるから、ソーシャルスクエアは「選択肢」が多くある都会に出店するのではなく、社会資源が比較的少ない地方でこそやる価値があるんじゃないかって思ってる。
その地域に住む、障害を持つ方やそのご家族に対して、少しでも豊かな「選択肢」がある状態にしたいというのが法人を起こした最初の思いだからね。
奥田:
自分もソーシャルスクエアのビジョンにある「生まれ育った街の違いが人生の格差にならず諦めない人が増えていく社会」っていうのをしっかり実現したいなって思ってます。
北山:
絶対格差あるからね(笑)
奥田:
福祉サービスに限らず「秋田でもこういうことも経験・体験できるんだ!」っていうことをソーシャルスクエアからどんどん増やしていきたいですね。
北山:
障害福祉の事業がメインだけど「なんかこの地方で面白そうなことやっているからやってみたい」っていう、UターンやIターンで地方に人を呼べたらいいなって思いがちょっとある。
本当に時代は変わってきてて「新しいこと始めるには、上京しなければ!」なんてことも少なくなってきたし。なんなら、地元で働きたいっていう、地元志向が高まっている印象さえ感じてる。
奥田:
自分もその印象ありますね。「地方に戻る=妥協して仕事を選んで地元に戻って職を得る」じゃなくて、「働きたいところが地元にある」「地方にやりたい仕事がある」っていう状況を障害福祉を始点に色んなことができるようになって、秋田を魅力的な所にしていきたいです。
「境界線」を揺り動かす
北山:
秋田山王店は「これは思いつかなかった」ってことをどんどん実現してくれそうな期待感があるけど、今後こんなことする予定みたいなことあったら教えてほしい!
奥田:
今後のチャレンジとしては、月に何回か決められた時間でだれでも利用できる「オープンスペース」をしたいなって思ってます。今回、秋田山王店はOPEN当初から多くの方々にお問い合わせをいただいたんですが、そのお問い合わせのなかには、障害があるかもしれないけれど、病院で診断を受けられてない方。または、診断書をもらえなかったという、いわゆる「グレーゾーン」の方々もいらっしゃいました。福祉事業の都合上ソーシャルスクエアのご利用には、障害者手帳もしくは、医師からの診断書が必要なので、グレーゾーンの方々は利用をしたくてもできないというパターンが何件かありまして...
北山:
せっかく利用したいと思っても、利用できないっていうのは歯がゆいよなあ。
奥田:
ありがたいことに現状の利用者メンバーの皆さんからは「ここにこれてよかった!」「どのスタッフも安心して相談できる」という嬉しいご意見を多数いただいていることもあって「利用したいけれど、できない」というグレーゾーンの方々にも、どうにかアプローチできないかと思って…。以前、個人で取材をしていただいたときにも話したんですが、自分は個人活動で主に「境界線」をテーマに作品を制作しているんですけど、仕事ではいかに「境界線」を揺り動かせるかを重視してます。今回の揺り動かし方が、この「オープンスペース」という感じでしょうか。
グレーゾーンの方々のなかには、病院で診断を受けにいくこと自体に思うことがある方もいらっしゃるので、「オープンスペース」をきっかけにソーシャルスクエアの雰囲気を知ることが「障害/健常」の境界線の揺らぎになるのではないかと思うんです。診断を受けた利用者メンバーさんにお話を聞いてみてもいいと思いますし、単純にコミュニケーションを楽しんだり、また、この「オープンスペース」はグレーゾーンの方だけでなく、ここのソーシャルスクエアの利用を終えた卒業生の方や地域の皆さんにもご利用いただいて、誰かにとっても気軽にこれる居場所になればいいなと思案してます。
北山:
いいね「オープンスペース」どんどんやってこう!卒業生かあ、秋田山王店がOPENして半年だし、就労移行支援の利用者メンバーさんだと就職活動とかも徐々に始まっているタイミングだろうから、秋田山王店の頑張りどころだ。
「オープンスペース」もそうだけど、なにかをきっかけに地域の皆さんに障害福祉についてもっと知ってもらえたら、「障害者の仕事はこういうもの」みたいな決めつけではなく、広い選択肢でご本人の納得のいく道にいきやすくなるね。
奥田:
秋田山王店の就労移行支援利用者メンバーさんの中には、もともと一般雇用で就職したけれど障害の関係で体調を崩してお仕事を辞めてから「ソーシャルスクエアを利用して初めて障害者雇用枠での就職を目指している」という方が何名かいらっしゃいます。障害者雇用枠っていうと「業種があまりないんじゃ?」っていうイメージがあるかもしれないんですけど、そのイメージはなくしてもらっていこうと思ってて。なんなら「就職」っていう形のみにはまらなくてもいいと思うんです。利用者メンバーさんがやりたいことや夢を探すこと、実現するためになにができるか一緒に考えることが僕らのお仕事なので。
その為に、まずは将来への「選択肢」がいくつもあげられるよう、企業見学や実習(※採用前に企業で働いてみて、本人と企業お互いのマッチングを図る制度)などをして、ご本人にとってのベストを探す機会を提供すること。
同時に地域でも自分たちの考えや活動を知ってもらい「境界線」を揺り動かしていく働きかけが必要だと思います。
利用者メンバーさんが立てた目標や希望、ソーシャルスクエアに向けてくれた期待にしっかりと応えられるように、僕らがしっかりサポートしていきたいですね。
ソーシャルスクエア秋田山王店
第一歩からその先へ
秋田山王店はSOCIALSQUAREの7拠点目、北東北初出店の2023年4月にOPEN。自立訓練と就労移行支援の多機能型事業所として、「夢や目標を見つけたい」「働きたい」という思いに寄り添いご利用される方々の、のばしたいことや好きなことに取り組める「セレクトワーク」の時間を中心に、それぞれのニーズに合わせた支援をご提供いたします。また実習やボランティア活動など就職に近い環境で実践しながら、就職を目指していくことができます。定期的な面談を通してお一人おひとりの目標に沿ったプランを提案していきます。